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【連載】困った!を解決してステロイドの基本がわかる!

ステロイド療法中の患者さんが手術適応になった!|ステロイドカバーとは

解説 川合眞一

東邦大学名誉教授 医学部炎症・疼痛制御学講座教授

目次


解決の糸口はココ

●手術が身体に与える侵襲(ストレス)の度合いを踏まえておこう
●ステロイドカバーを行う理由と方法を理解しておこう


手術のストレスに対応するため「ステロイドカバー」を行います

 手術は、身体に大きな侵襲を与えます。それによるストレスによって、副腎から分泌されるステロイドの量は大きく増加し、通常の10mg/日から200~300mg/日にもなるという研究報告もあります(コルチゾール換算)。ところが、日ごろから治療のためにステロイドを服用(投与)している患者さんは、体外からステロイドが補充されているために、自らの副腎皮質機能が低下しています。さらに副腎萎縮にまで抑制されれば、ストレスに応じて必要となる量のステロイドを分泌することができなくなります。
 
 ステロイド療法中の患者さんが手術適応になったときは、副腎不全をきたさないよう、不足するステロイドを補充する「ステロイドカバー(ステロイド補充療法)」を行います。実際のところ、その効果に対する明らかなエビデンスはありません。しかし、一時的にステロイドが大量になったとしても、短期間の使用であれば副作用のおそれはほとんどなく、副腎不全を起こさないよう「念のため」「安全性を鑑みて」実施されています。

 患者さんから説明を求められた場合には、「体外からステロイドを取り入れているので、副腎の働きが抑制されています。そのため手術時のストレスにご自身の副腎が対応できないので、その分のステロイドを注射で補います」などと伝えましょう。

ステロイドカバーの方法を知っておきましょう

 手術の侵襲の程度によって、ステロイドの補充量、あるいはステロイドカバーを行うかどうかを検討します。
 
 よく行われている方法は、毎日ステロイドを服用しているために副腎抑制が懸念される患者さんで、中等度のストレスがかかる手術を受ける場合は、当日のみ麻酔前にコルチゾール100mgを静注します。開腹術のような大手術の場合は、コルチゾール100mgを、手術を挟んで3日間投与します。かつては、コルチゾールを200~300mg/日と記載した教科書などもありましたが、現在は「コルチゾール100mg/日、3日間」というのが、スタンダードなステロイドカバーとされています。

参考文献
● 藤岡高弘,他編:服薬指導・看護に役立つ よくわかる治療薬ブック.照林社,2012,p.319-23.


この記事はナース専科2017年12月号より転載しています。

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