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【連載】困った!を解決してステロイドの基本がわかる!

高齢者、小児、妊婦のステロイド使用時の注意点がわからない!

解説 川合眞一

東邦大学名誉教授 医学部炎症・疼痛制御学講座教授

目次


解決の糸口はココ

●高齢者、小児、妊婦それぞれの特性を理解しよう
●副作用への対処法を覚えておこう


高齢者は「骨粗鬆症」「感染症」に注意しましょう

 75歳以上の後期高齢者になると、加齢によってさまざまな生理機能が低下してきます。肝機能や腎機能の低下に伴って薬物代謝が低下するため、一般成人よりも薬剤の作用が増強し、副作用も出やすくなります。また、複数の疾患を合併していることが多く、長期間に及ぶ薬剤服用による影響や、多剤服用による相互作用への注意などを考慮する必要が生じてきます。したがって、ステロイドの投与においては、可能な限り「低用量」「短期間」を基本とします。
 
 高齢者に対するステロイド療法で最も気をつけたいのは副作用です。特に骨粗鬆症と感染症には注意が必要です。
 
 一般に高齢になると骨粗鬆症を発症するリスクは高まります。そのため、高齢患者さんで長期的にステロイドの服用(投与)が必要な場合は、早期からビスホスホネート製剤や活性型ビタミンD3製剤などを予防的に投与します。

 ステロイド療法では、免疫抑制作用によって易感染状態になります。高齢者の場合、さらに生理機能や栄養状態が低下しているケースもあり、より感染症にかかりやすい状態になっています。ステロイドによって炎症性物質や発熱性物質の産生が抑制されることから、感染徴候(発熱、CRPの上昇)がみられない場合もあるので、自覚症状を確認するなどしながら、注意深く観察することが必要です。
 
 中等量以上のステロイドを使用している高齢患者さんについては、一般的な感染症だけでなく、結核やニューモシスチス肺炎、ウイルス感染症、真菌感染症なども念頭に置くようにしましょう。

小児は「成長障害」や外見にかかわる副作用に注意が必要です

 小児は、体重当たりの薬剤量は、一般に成人よりも多く投与します。気管支喘息やアトピー性皮膚炎、血液疾患、腎疾患、消化器・肝疾患などにより、ステロイド療法を受けている小児は少なくありませんが、その場合、最大の効果が得られ、かつ副作用は極力抑えるような治療が行われています。
 
 小児における副作用で特に問題になるのは成長障害(低身長)です。ただし、全身性エリテマトーデス(SLE)などは、小児では重症例が多く、成長障害の対策よりも疾患の治療を優先することは少なくありません。米国などでは、低身長に対して成長ホルモンを投与する治療も行われていますが、日本ではそこまでの対策は取られていません。
 
 満月様顔貌や中心性肥満など外見にかかわる副作用もあり、思春期の患児にとっては重大な問題となります。治療の中断にもつながるため、心理的なケアも大切です。

妊婦は基礎疾患をコントロールしながら副作用に注意しましょう

 妊娠中は、糖質や脂質、蛋白、電解質、骨などの代謝が大きく変わるので、ステロイドを服用中の患者さんが妊娠した場合、糖尿病や肥満、脂質異常症、高血圧、骨粗鬆症などの副作用が出やすくなります。感染症にも注意が必要で、胎児にも影響することがあります。
 
 とはいっても、基礎疾患がうまくコントロールされている状態であれば、妊娠したからといってステロイドを中断したり、減量する必要はなく、それまでの投与量を維持していきます。妊婦さんの場合、禁忌となっている免疫抑制薬が多く、ステロイドに頼るしかない疾患や病態もあります。プレドニゾロンは、胎盤で代謝されて不活化するために、胎児への影響は少ないとされ、妊娠を希望するSLE患者さんの第一選択薬になっています。
 
 ステロイドによる胎児への影響としては、動物実験では、ステロイド大量投与により口唇裂を含む口蓋裂が発症されることが証明されており、ヒトにおいても発症が懸念されます。しかし、実際の臨床で妊婦さんにステロイド療法を行っても、口唇裂や口蓋裂の発症率の上昇はあってもわずかであり、少なくとも心臓などの重要臓器の催奇形性のリスクは上昇しないという報告があります。
 
 むしろ、妊娠したことでステロイドを中断することは、基礎疾患の再燃や症状の重症化を招くおそれがあります。そのことを、患者さんによく説明し、納得してもらったうえで治療を続けることが大切です。
 
 なお、ステロイドは乳汁中にも移行しますが、その量はごくわずかで乳児には影響しないので、授乳婦でもステロイド療法は継続できます。

参考文献
● 藤岡高弘,他編:服薬指導・看護に役立つ よくわかる治療薬ブック.照林社,2012,p.319-23.


この記事はナース専科2017年12月号より転載しています。

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