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【連載】睡眠時無呼吸症候群の病態とケア

4.睡眠時無呼吸症候群の治療法の種類と特徴

執筆 南雲 秀子

東京医療学院大学保健医療学部看護学科助教 看護師/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

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【事例】

追突事故を起こしたAさんは、S病院の内科で検査を受けて睡眠時無呼吸症候群と診断されました。勤務先の産業医からは以前より高血圧と高血糖を指摘されていました。仕事が忙しくてこれ以上の通院や検査に消極的だったAさんですが、医師から睡眠時無呼吸症候群を放置することによって高血圧や糖尿病が悪化するだけでなく、脳血管疾患の危険性が高まると説明され、心配になってきたたようです。

医師のイラスト
 治療法にはいくつかありますが、軽症の患者さんに処方される治療法から説明します。

1.口腔内装具OA(oral appliance)

①OAとは

 睡眠中、歯にはめて眠るマウスピースです。睡眠中に下顎の位置を少し前に固定して気道の閉塞を防ぎます。本人の歯型に合わせて歯科や口腔外科で作成します。

②適応

 軽症の睡眠時無呼吸症候群では側臥位で眠る方法を指導し、それが難しい場合にはOAが処方されることが一般的です。
中等症や重症者ではCPAPが治療の第一選択ですが、CPAP治療を拒否される場合や、何らかの理由で使用できない場合にOAを使います。

③保険適用

 OAはAHIが5回/時以上の睡眠時無呼吸症候群患者さんであれば健康保険が適用されます。3割負担で諸費用を含めて15000円~25000円程度の費用が掛かります。

④フォローアップ

 使用開始後毎月通院する必要はなく、おおむね6カ月ごとに処方された歯科や口腔外科でOAの状態を確認します。OAを使用することによって睡眠の状態がどのように変わったかを評価するには問診で自覚症状を確認します。客観的な指標を得るには自宅での簡易検査か入院してのPSG検査などが必要です。

口腔内装具見本
口腔科学 第6章.8 .外木守雄分担:睡眠時無呼吸症候群患者の歯科的対応 朝倉書店.東京.2013.

2.手術

①適応

A)口蓋扁桃肥大が閉塞性無呼吸症の主要因である場合
B)睡眠時無呼吸症が中等症以下である場合
C)標準体重または軽度の肥満である場合
D)重症な全身疾患の合併がない場合

②手術の種類

1.UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)法
 軟口蓋レベルでの気道閉塞がある患者さんで、呼吸障害が中等度以下の場合に実施します。

 無呼吸の治療成績は50~80%と言われていますが、重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群では後述のCPAP治療の効果が十分に上がらない場合にこの手術を受けることがあります。肥満を伴う場合には、この手術だけでなく減量を合わせて行う必要があります。

口腔内の図

2.扁桃摘出術
 小児のOSASの原因のほとんどはアデノイド増殖や口蓋扁桃肥大によるものなので、手術療法でよく改善します。成人でも同様の手術を行いますが、扁桃だけが原因でない場合もあり、成人ではこの手術の適応になる患者さんは多くありません。

3.鼻内手術
 鼻中隔矯正術や下鼻甲介切除術、内視鏡的鼻副鼻腔手術などで鼻腔の通気性を確保します。

 鼻閉により鼻呼吸ができないとCPAPのマスクも鼻だけのマスクではなく鼻と口を覆う大きいマスクを使わざるを得ません。そのため、寝返りなどでマスクがずれやすくなったり、鼻筋が高い人は発赤や痛みを感じるなどCPAPを快適に使用できない原因となるのです。

 つまり、鼻内手術は無呼吸症の治療というよりはCPAPを適正な圧で快適に使用するために行われます。

4.頻度の低い手術
 
* 気管切開術(緊急時や高度肥満患者さんの手術後の管理のために行われる)
* 下顎骨の拡大手術(小顎症)
* 上顎を前方に移動する手術(上顎後退症) などがある

3.減量

減量すると睡眠時無呼吸症候群が治癒するか

 高度な肥満により咽頭部が狭窄している患者さんは、減量により睡眠時無呼吸症候群が改善する可能性があります。しかし、アジア人は白人と比較して標準体重であっても閉塞性睡眠時無呼吸症候群である患者さんが多いことが知られており、減量したからといって治療が必要ない程に改善することが確実とは言えません。

睡眠障害を治療すると減量しやすくなるか

 不眠はホルモンバランスの乱れを引き起こし、脂肪の代謝を不活発にすることで痩せにくくさせることが知られています。つまり、睡眠状態を改善することによって痩せやすい身体になるということであり、生活習慣の指導に際しては「とにかく痩せる」ことを優先するよりも「とりあえず無呼吸を治して良質の睡眠を確保してから本格的に痩せる」ことが効果的です。

4.CPAP

NPPVの使用例

①適応

 CPAPは比較的副作用が少なく効果の高い治療法としてAHI>30の患者さんでは自覚症状の有無にかかわらず治療の第一選択です。

 また、AHIがそれ以下の場合でも心血管系の併存症がある患者さんには必要な治療法です。

②保険適用

 現在(2018年4月)の保険適用はPSG検査でAHI>20、または、簡易検査でAHI>40で自覚症状により日常生活に支障をきたしている場合、となっています。

③効果と問題点

 CPAPは陽圧の空気を吸い込ませるだけの治療法であり、薬物を使ったり手術のような侵襲を受けることなく睡眠中の無呼吸を正常レベルまで減らすことができる理想的な治療法です。

 しかし、治療といっても対症療法であるため基本的には一生涯治療を続けることになります。

 慣れるまでに時間がかかる、医療器具を自宅で使用することに対する抵抗感が強い、鼻腔にかかる圧力に慣れることが難しいなど、いろいろな原因で効果的な治療(平均して1日に4時間以上、週5日以上)ができないことがありますが、適切に治療ができれば重症患者さんでもAHIが正常値まで低下することも多く、自覚症状が改善してよい眠りに繋がります。

【事例つづき】
Aさん
「そうですか。子供もまだ小学生だし、車に乗る機会も多いから、やっぱり先生の勧めてくださるようにCPAP治療を受けてみることにします」

Aさんは1泊入院でPSG検査を受け、結果はAHI=25回/時の中等症と診断され、CPAPが処方されました。次回はCPAP処方時の患者指導内容とマスクフィッティングについて説明します。


【参考文献】
氷見徹夫、高野賢一、亀倉隆太、山下恵司、小笠原徳子、坪松ちえ子:扁桃・アドの基礎知識と手術療法に関連する問題点.日本耳鼻咽喉科学会会誌 2006;119(5):701-12.

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