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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第9回 嘔気・嘔吐の病態に合った制吐剤と食事の工夫|終末期の症状緩和②

執筆 重山千恵

広島大学病院緩和ケアセンター 緩和ケア認定看護師

Cancer kanwacare

<嘔気・嘔吐とは>
さまざまな要因が複合し、終末期の半数で起こる症状

 嘔気・嘔吐は、終末期のがん患者さんの半数ほどにみられ、痛みと同様に非常に苦痛な症状です。原因には以下のようなものがあり、これらが複合していることが多くあります(表1)。

表1 進行がん患者さんの嘔気・嘔吐の原因
進行がん患者さんの嘔気・嘔吐の原因
志眞泰夫,分担訳:3 消化器の症状.武田文和,監訳:トワイクロス先生のがんの症状マネジメント.医学書院,p119,2007.

<アセスメント>
6つのチェック項目から原因を検討する

 嘔気・嘔吐のある患者さんに対して、以下のアセスメントを行います。まずは、原因が何であるかを検討し、原因をふまえて症状への対応を行います。

使用薬剤の確認
いつから嘔気・嘔吐が始まったか
どのようなものを嘔吐しているか(唾液、胃内容物、便など)
日内変動の有無、誘発因子
他の随伴症状の有無
経口摂取量

<嘔気・嘔吐の治療>
原因となる薬剤を中止・変更し、病態に合った制吐剤を使用する

嘔気・嘔吐の原因の除去

 薬剤が原因の場合は、可能であれば中止するか、他の薬剤に変更します。オピオイドが原因と考えられる場合は、減量やオピオイドスイッチを行います。オピオイドによる便秘が原因である嘔気・嘔吐の場合は、緩下剤を使用します。最近は、オピオイド由来の便秘に対応する下剤(スインプロイク®錠)が使用されます。

薬剤の使用

 病態に合った制吐剤を使用します(表2)。

表2 制吐薬の作用機序、有効な病態、臨床症状
制吐薬の作用機序、有効な病態、臨床症状
*CTZ:化学受容器引き金帯。代謝物、ホルモン、薬物などの催吐性刺激を受け取り、嘔吐中枢を刺激する

森田達也,他編:3ステップ実践緩和ケア第2版.p58,青海社,2018.より引用改変

<すぐ実践できる看護>
嘔気を誘発するにおいに配慮し、口腔ケア、便秘対策、気分転換を

環境調整

 嘔気・嘔吐を誘発するにおいへの配慮を行います。香水や柔軟剤などのにおいも嘔気を誘発する場合があるので注意する必要があります。食べ物が見えたり、におったりすることが、嘔気の原因となることがあります。においの強いもの(お粥や魚)や、食事内容について、患者さんに確認し配膳するなどの配慮が必要です。

 嘔吐した場合はすぐに換気を行い、吐物の臭気を部屋にとどめないことが大切です。また、下着やズボンなどを緩め、締め付けによる嘔気の誘発を避けます。

食事の工夫

 症状が悪化しない内容のものを、患者さん・家族と一緒に考え工夫します。嘔気・嘔吐が強いときは食事を控え、症状が軽減したら、少量ずつ摂取できるように準備しておきます。

口腔ケア

 嘔吐物により口腔内が不潔になりやすいため、清潔を促します。患者さんが自分でできる場合は歯みがきを促し、できない場合は看護師が介助し、歯ブラシとスポンジブラシを使用して口腔内を清潔にします。

 口腔内が乾燥すると細菌が繁殖しやすいので、保湿スプレーや保湿ジェルを使用し、常に口腔内を保湿した状態に保ちます。

便秘対策

 嘔気、嘔吐が便秘による場合は、排便コントロールを行います。患者さんの排便習慣を確認し、便秘であれば腸蠕動を促すために、腹部の温罨法やマッサージを行います。必要であれば薬剤を使用します。

気分転換

 嘔気・嘔吐は苦痛な症状であり、常にその症状に意識が集中してしまうことが多いため、他に集中できることを一緒に考え、家族の協力を得て、気分転換を促すことが重要です。

嘔気・嘔吐の緩和ケアのポイント

嘔気・嘔吐はがんの進行により、さまざまな原因が重なり合って起こります。適切にアセスメントし、原因治療を行うことが大切です。

嘔気・嘔吐は患者さん・家族にとって苦痛が強いことを理解し、医療者は過小評価せず、症状緩和を行うことが重要です。


【引用・参考文献】
●武田文和,監訳:トワイクロス先生のがんの症状マネジメント.医学書院,2007.
●恒藤暁,他編:系統看護学講座別巻10 緩和ケア.医学書院,2007.
●淀川キリスト教病院ホスピス,編:緩和ケアマニュアル 第5版.最新医学社,2007.
●久山幸恵:食欲不振.がん患者の消化器症状マネジメント.がん看護2008;1月増刊号:223-229.
●森田達也,他編:3ステップ実践緩和ケア第2版.p58,青海社,2018.
●田村恵子,編:緩和ケア教育テキスト がんと診断された時からの緩和ケアの推進.メディカ出版.2017.

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