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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第10回 倦怠感を軽減する「聞き方」「かかわり方」のヒント|終末期の症状緩和③

執筆 重山千恵

広島大学病院緩和ケアセンター 緩和ケア認定看護師

Cancer kanwacare

<倦怠感とは>
終末期の多くのがん患者さんにみられる持続した消耗感

 米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)によると、がんに伴う倦怠感は、「最近の行動に合致しない、日常生活機能の妨げとなるほどの、がんまたはがん治療に関連した、つらく持続する主観的感覚で、身体的、感情的、かつ/または認知的倦怠感または消耗感」1)と定義されています。

 倦怠感はがんの終末期患者さんの60~90%にみられる頻度の高い症状です2)
がん患者さんにみられる倦怠感は休息をとれば改善するものではなく、一般的な倦怠感とは異なります。がんの終末期患者さんは悪液質により倦怠感を訴えることが多く、終末期後期になるとほぼ全例にみられるといわれています。

 悪液質とは、がんによる進行性の消耗状態であり、体重減少や食欲不振、筋肉・脂肪組織の消耗、倦怠感などが特徴的な症状です。

倦怠感の原因 

 倦怠感の原因には以下のようなものがあり、これらが複合していることが多くあります(表1)。

表1 がん患者さんの倦怠感の原因
がん患者さんの倦怠感の原因
松尾理代:身体症状とケア6 倦怠感・眠気.岩崎紀久子,他編:一般病棟でもできる!終末期がん患者の緩和ケア 第3版.p.99,日本看護協会出版会.2014.

<アセスメント>
過小評価されやすい症状として行動面からも把握する

 がん患者さんの倦怠感は、痛みと同じで主観的なもので、客観的にはわかりづらく、過小評価されやすいものです。「だるい」「身体が重い」「身の置き場がない」など、患者さんによってさまざまな表現がとられます。患者さんがうまく表現できず、医療者に伝えられない場合もあります。他者から聞かれることで負担を感じる場合もあるので、患者さんの気持ちに配慮する必要があります。

 患者さんの行動について、新聞や本を読む時間が減っている、疲れた表情をしているなど、医療者が観察し気づくことも大切です。倦怠感の原因を検討し、原因をふまえて症状への対応を行います。

 倦怠感のある患者さんに対して、以下のアセスメントを行います。

倦怠感の有無と程度
いつ頃からどのような症状があるか
病状・病態の把握
活動量
日内変動
日常生活にどのような支障があるか

<倦怠感の治療>
多岐にわたる原因を除去していき、ステロイドを投与

倦怠感の原因の除去

 治療可能な原因(薬剤、痛み、不眠、発熱、貧血、高カルシウム血症、感染症、睡眠障害など)があるか否かを確認し、治療を試みます。眠気を生じる薬剤で減量・中止できるものがあるか確認し、問題なければ中止をします。

 痛み、貧血、感染症、高カルシウム血症などの治療を行います。不眠、抑うつがあれば治療を検討します。

薬物の使用

 終末期の倦怠感に対し、予後予測3カ月未満の場合は、ステロイドを投与します。

 少量より開始し、食欲の変化や倦怠感が軽減しているかを確認して効果をみながら増量します。不眠を避けるため、午前中に投与を行い、24時間持続投与は避けます。長期投与になる場合は、予後を考慮して慎重に投与します。
 例:ベタメタゾン(リンデロン®錠、リンデロン®注)

<すぐ実践できる看護>
清潔ケアや睡眠の確保を行い、患者さんが優先したいことがらを確認する 

目標の共有

 倦怠感の原因について説明し、患者さんが大切にしたいこと、優先したいことを一緒に考えます。また、対処法・目標を患者さんと医療者間で共有します。他に集中できること、リラックスできることについて話し合います。

清潔ケア

 入浴や足浴によって爽快感を得ることができます。患者さんの消耗が少なくなるように、複数の看護師でできるだけ手早く行います。

睡眠の確保

 熟睡感を得ることで日中の倦怠感の改善を図ることができます。必要な活動はなるべく日中の倦怠感の少ない時間に行うようにし、昼夜逆転を防ぎます。眠れないときは眠剤を使用し睡眠を確保します。

 就寝前に足浴を行うと、睡眠を促すことができます。

環境調整

 エネルギー消費を意図的に調整し、疲れたらこまめに休むなどエネルギーを温存します。日常、使うもの(リモコンなど)はベッドの周りに置きます。

 1日の体調のパターンに合わせて行動計画を立て、予定のなかで優先順位をつけ、無理なく行動するように指導します。1日のなかで倦怠感の軽い時間帯を知り、患者さんと一緒に共有しケアを行います。

 家族に、身の回りの手伝い、移動の手伝い、マッサージなど、患者さんのためにできることを伝えます。

倦怠感の緩和ケアのポイント

がん患者さんの倦怠感は薬物での緩和が難しいことが多いといわれています。薬物以外では、体力温存や環境調整も症状緩和に有効です。足浴やマッサージなど、患者さんが心地良いと感じて過ごせるようなケアを行うことが大切です。

倦怠感は客観的に把握されにくいため、過小評価されやすいですが、改善困難な終末期の症状と安易に決めず、患者さんの訴えを聴き、つらさを理解することが大切です。

患者さんの意向を確認しながら、患者さんに合う方法で日常生活の援助と行うこと、気晴らしや気分転換について一緒に考えることが主なケアとなります。


【引用・参考文献】
1)National Comprehensive Cancer Network:日本乳がん情報ネットワーク,訳:癌に伴う倦怠感.NCCN腫瘍学臨床実践ガイドライン第1版.2008.(2018年10月17日閲覧)http://www.jccnb.net/guideline/images/gl16_fati.pdf
2)恒藤暁,他編:系統看護学講座別巻⑩ 緩和ケア.医学書院,p148,2007.
●武田文和,監訳:トワイクロス先生のがんの症状マネジメント.医学書院,2007.
●恒藤暁,他編:系統看護学講座別巻⑩ 緩和ケア.医学書院,2007.
●淀川キリスト教病院ホスピス,編:緩和ケアマニュアル(第5版).p80,最新医学社,2007.
●松尾理代:身体症状とケア6 倦怠感・眠気.岩崎紀久子,他編:一般病棟でもできる!終末期がん患者の緩和ケア第3版.p.99,日本看護協会出会.2014.
●田村恵子:緩和ケア教育テキスト がんと診断された時からの緩和ケアの推進.メディカ出版,2017.

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