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【連載】使い分けの根拠がわかる! 循環器の薬

抗不整脈薬の使い分け

執筆 古川 哲史

東京医科歯科大学 難治疾患研究所 生態情報薬理学分野

不整脈には、頻脈性不整脈と徐脈性不整脈があり、薬物治療の対象となるのは主に前者です。抗不整脈薬は心筋のイオンの流れを標的とすることから、心臓の電気現象に治療薬がどのように働きかけているかを解説します。


目次


1.不整脈に使う薬とは

 不整脈とは、脈が正常より速くなる(100回/分以上)、あるいは正常より遅くなる(50回/分以下)もので、前者を頻脈性不整脈、後者を徐脈性不整脈といいます。薬物治療の対象となるのは、頻脈性不整脈です。ちなみに、徐脈性不整脈は主にペースメーカー植え込みにより治療します。
 
 抗不整脈薬は、心臓の電気活動を作り出すイオンチャネルをブロックする薬で、不整脈を停止させたり、軽症にしたり、起こりにくくしたりします。抗不整脈薬の分類としては、1975年に発表されたヴォーン・ウイリアムズ分類がよく知られています。これは1つの薬物のメインターゲットは1つのチャネルあるいは受容体と考え、Ⅰ~Ⅳの4群に分けるという考え方で、40年経った今でも使われています。
 
 Ⅰ群薬はナトリウムチャネル遮断薬、Ⅱ群薬は交感神経β受容体遮断薬、Ⅲ群薬はカリウムチャネル遮断薬、Ⅳ群薬はカルシウムチャネル遮断薬です。

 Ⅰ群薬はさらに活動電位の持続時間(心電図では「QT間隔」に相当します)に対する作用でa~cの3群に細分されます。Ⅰa群薬が活動電位持続時間(QT間隔)延長、Ⅰb群薬が短縮、Ⅰc群薬が不変です。同分類に基づく主な抗不整脈薬をに示します。
 
ヴォーン・ウイリアムズ分類に基づく主な抗不整脈薬

作用機序
❶ 抗不整脈薬の標的
 抗不整脈薬は、後述するようにそれぞれのイオン電流、あるいはこれを流すイオンチャネルを標的とすることから、活動電位、イオン電流の基礎的な知識は押さえておきたいところです。

❷ イオンチャネル
 イオンチャネルとは、細胞膜にあってイオンを通過させるタンパク質で、心臓の電気現象を作り出す働きをしています。イオンチャネルをイオンが通ることにより発生する電流をイオン電流といいます。細胞の内側に向かって流れる電流を内向き電流、外側に向かって流れる電流を外向き電流といいます。

❸ 活動電位とイオン電流
 心筋細胞の興奮を表す電気活動を活動電位と呼びます。心臓で主に活動電位の形成にかかわるイオン電流には、内向き電流のNa+電流・Ca2+電流と外向き電流のK+電流があります。

 心筋細胞膜は通常、細胞内がマイナス、細胞外がプラスに荷電されています。この陽極と陰極が分かれている状態を分極といいます。活動電位は内向きの電流で発生(脱分極)し、外向きの電流で元の状態、すなわち陽極と陰極が細胞膜を介して分かれた分極状態に戻ります。これを「再分極」といいます。

❹ 作業心筋と刺激伝導系心筋
 心筋細胞は、ポンプの作用をする心室筋などの作業心筋と、心拍を発生しこれを心臓全体に伝える刺激伝導系心筋に分かれます。刺激伝導系心筋は、上位の刺激伝導系(洞結節、房室結節)と下位(心室)の刺激伝導系(ヒス束、脚、プルキンエ線維)に分かれます。

 洞結節、房室結節の性質は特殊で、Na+電流はほとんど存在せず、脱分極はCa2+電流で起こり、再分極はK+電流で起こります(図1右)。

 それ以外の心筋細胞(心房筋、心室筋、下位の刺激伝導系)では、脱分極はNa+電流により起こり、再分極はK+電流で起こります。これらの細胞では、Ca2+電流は活動電位の中間部分(プラトー相)で働き、心筋細胞の収縮に関与します(図1左)。
 
心筋細胞(作業心筋)と洞結節細胞(刺激伝導系心筋)の活動電位とイオン電流

 このように心筋細胞は、細胞内外での微小な電気的変化を通して、脱分極と再分極を繰り返すことで、収縮と拡張を維持しています。

1.Ⅰ群薬(ナトリウムチャネル遮断薬)

 Ⅰ群薬は洞結節、房室結節以外の心筋細胞で細胞膜のナトリウムチャネルに結合し、細胞内へのNa+の流入を抑制することで、活動電位の立ち上がりを抑え、これらの心筋細胞の興奮性を抑制し、刺激の伝導を遅延させます。
 
 心筋細胞には興奮した後、次の刺激が来ても反応できない時間があり、これを不応期といいます。

(1)Ⅰa群薬
 ナトリウムチャネルブロック作用に加えて、カリウムチャネルブロック作用ももつので不応期も延長させます。

●特に注意が必要な副作用
 最も注意が必要なのは抗不整脈薬にもかかわらず、かえって不整脈を起こしやすくしてしまうことです。これを催不整脈作用といいます。Ⅰa群薬では、QT間隔の延長に伴う不整脈を起こしやすいので、心電図でQT間隔に対する作用に注意しましょう。
 
 また、心機能低下による心不全の悪化、心臓以外では抗コリン作用による尿閉・口渇です。個々の薬物ではシベンゾリンによる低血糖作用が有名で、糖尿病治療中の患者さんでは特に注意が必要です。

(2)Ⅰb群薬
 心房筋に対する作用はほとんどなく、心室性不整脈のみに使われます。
 
●特に注意が必要な副作用
 Ⅰb群薬は、催不整脈作用はあまり問題になりません。リドカインでは中枢神経作用(錯乱、浮動性めまい、けいれん)、アプリンジンでは肝障害、汎血球減少が起こることがあります。

(3)Ⅰc群薬
 ナトリウムチャネルに対する親和性が最も強く、刺激の伝導遅延作用も最も強いとされています。
 
●特に注意が必要な副作用
 Ⅰc群薬では、全般的にQRS間隔の延長に伴う催不整脈作用が問題となります。心電図によるQRS間隔のチェックを忘れてはなりません。また、心機能抑制による心不全の悪化が起こることがあるので、心不全の患者さんへの投与は禁忌とまではいきませんが、慎重に行う必要があります。

2.Ⅱ群薬(交感神経β受容体遮断薬)

 交感神経の支配が強い洞結節、房室結節の興奮の頻度と伝導を抑制します。そのため、交感神経が活性化される運動時に起こりやすい不整脈に対しても有効です。
 
●特に注意が必要な副作用
 徐脈や房室ブロックを起こすことがあります。中枢神経抑制作用があるため、うつ病の患者さんではうつ症状を悪化させることがあります。

 糖尿病の患者さんでは低血糖症状を自覚することが困難となります。
 
 また、カルベジロールのようにβ1受容体非選択的な薬物は、気管支喘息や間歇性跛行を誘発することがあります。喘息・高度徐脈では禁忌、耐糖能異常・閉塞性肺疾患・末梢動脈疾患は慎重投与です。

3.Ⅲ群薬(カリウムチャネル遮断薬)

 すべての心筋細胞が興奮を終えて元の分極状態に戻るのを抑え、不応期を延長することにより、抗不整脈作用を示します。主に心室性の致死的な不整脈に用いられます。
 
●特に注意が必要な副作用
 Ⅲ群薬全般でQT間隔の延長に伴う催不整脈作用が問題となることがしばしばあります。また、アミオダロンでは、間質性肺炎、肺線維症、肝機能障害、甲状腺機能亢進症・低下症などがよく知られた副作用です。間質性肺炎、肺線維症は致死的となることがあるので、呼吸困難などの自覚症状、および胸部X線写真のチェックを怠らないようにしましょう。

4.Ⅳ群薬(カルシウムチャネル遮断薬)

 カルシウムチャネルは、心室筋細胞と洞結節、房室結節細胞では役割が違うので、その作用も両者で異なってきます。 

 洞結節、房室結節細胞では、活動電位がCa2+電流によって発生するので、これを抑えると興奮の頻度と伝導の速度が抑えられます。
 
 心室筋細胞ではプラトー相で細胞内に取り込まれるCa2+を抑えることになり、これにより細胞内のCa2+濃度が低下し、収縮力も減弱します。
 
●特に注意が必要な副作用
 Ⅳ群薬では、洞結節機能抑制による徐脈、房室伝導抑制による房室ブロックなどの徐脈性不整脈を副作用とします。カルシウムチャネル遮断薬は、消化管平滑筋のカルシウムチャネルも遮断してしまうので、逆流性食道炎の悪化や便秘などの消化器系の副作用が問題となることもあります。

2.不整脈における主要な薬の使い分け

1.心房期外収縮におけるⅠa群薬とⅠc群薬の使い分け

 期外収縮は本来のタイミングよりも早く単発で異常な収縮が起こるものをいいます。期外収縮で、QRS間隔が狭い場合(0.12秒以内)は心房期外収縮あるいは上室期外収縮であり、QRS間隔が広い場合(0.12秒以上)は心室期外収縮です。
 
 心房期外収縮は、生命予後に影響はなく基本的には治療の必要がない不整脈です。このことをいかに患者さんに納得してもらうかは看護師の腕の見せどころでもあります。最初は医師が話をするとは思うのですが、よくあるパターンとして、患者さんが看護師に「不整脈があるのに先生は薬が必要ないって言うのよ」と相談してくることもあります。
 
 ただし、症状が強くて日常生活に支障が出る場合、および頻発する場合(30発/時間以上、20連発以上)は心房細動への移行が多いといわれているため、治療を行うことがあります。
 
 その場合は、心房筋の活動電位はNa+電流で起こるため、Ⅰ群薬のナトリウムチャネル遮断薬を選択します。心房筋に対する作用がほとんどないⅠb群薬は心房性不整脈には使わないので、Ⅰa群薬かⅠc群薬の選択になります。この選択の基本は消極的と言われるかもしれませんが、「副作用が少ないほう」です。
 
 それでは、Ⅰa群薬とⅠc群薬の副作用を整理してみましょう。

<心臓への副作用>
■Ⅰa群薬はカリウムチャネルブロック作用を有するのでQT間隔の延長に伴う不整脈(トルサード・ドゥ・ポアン)、Ⅰc群薬はナトリウムチャネルブロック作用が一番強いのでQRS間隔の延長に伴う不整脈が起こるリスクがあります。事前の心電図でQT間隔の延長がある場合はⅠa群薬を避け、QRS間隔の延長がある場合はⅠc群薬を避けましょう。

■Ⅰ群薬は心収縮力抑制作用をもちます。特にジソピラミド(Ⅰa群)、フレカイニド(Ⅰc群)は心抑制が強いので、心不全のある患者さんでは要注意です。

<心臓以外への副作用>
■プロカインアミド以外のⅠa群薬では抗コリン作用があるので、緑内障・排尿障害の患者さんには要注意です。

■シベンゾリン(Ⅰa群)には低血糖作用があるので、糖尿病治療中の患者さんでは避けましょう。

2.心室期外収縮におけるⅠ群薬とⅡ群薬とⅢ群薬の使い分け

 心室期外収縮は心疾患がベースにあるかないかで治療法が分かれます。

<心疾患がある場合>
 心室期外収縮が多い人では心筋梗塞後の突然死のリスクが高いことが知られています。
 
 1990年前後にⅠc群薬(フレカイニド、エンカイニド。エンカイニドは日本では未発売です)を使って期外収縮を抑制したら突然死が減少するかを調べる大規模な臨床試験(CAST study)が行われました。

 その結果、心室期外収縮は劇的に減少しましたが、突然死は逆に増加するという意外な結果となりました(図21)。「心室期外収縮は突然死のマーカーだが、心室期外収縮を抑えても突然死は減らない」という困った事態になったのです。これはⅠc群薬を使ったので、QRS間隔が延長したリエントリー性不整脈が起きたためと考えられており、これをCAST型不整脈といいます。

CAST studyによるⅠc群薬を用いた突然死の減少に関する臨床試験
 
 それでは、心疾患がある場合の心室期外収縮の治療はどうしたらよいのでしょうか? この場合には次の順番で考えています。
 
❶ まずは基礎心疾患の治療
❷ 基礎心疾患の治療も兼ねてβ遮断薬を使用
❸ 最後の手段はⅢ群薬を選択

<心疾患がない場合>
 心疾患がない場合は、やはり生命予後に影響しないので、基本的には治療しません。とはいっても、症状のため日常生活に障害を来す場合、および心室期外収縮の数が多い場合は頻脈性の心不全になることがあるので治療することがあります。
 
 そのときの選択は、次の手順で行います。
 
❶ まずはβ遮断薬
 特に、運動により心室期外収縮の頻度が増えるもの、日中の頻度が高いものはβ遮断薬を選択します。
 
β遮断薬が無効の場合
 副作用が少なく、心室性不整脈に有効性の高いⅠb群薬のメキシレチンを選択します。
 
β遮断薬およびメキシレチンが無効の場合
 Ⅰa群薬かⅠc群薬の選択となります。そのときどちらを選択するかの基準は、心房期外収縮で説明した「副作用が少ないほう」です。最終手段のⅢ群薬を使うか否かは、医師によって意見が分かれるところです。

3.心室細動におけるリドカイン、ニフェカラント、アミオダロンの使い分け

 急性心筋梗塞の発症から数時間以内の死亡率は30~40%で、そのほとんどが心室細動による死亡といわれています。病院に着いてからは、電気的除細動が可能なので、心室細動による死亡は劇的に減りますが、繰り返し起こる心室細動や除細動無効例などもあり、心筋梗塞急性期の心室細動予防は病院到着後も軽視できません。

 従来は静注可能なⅠ群薬リドカインの独壇場でしたが、最近では静注可能なⅢ群薬ニフェカラント、アミオダロンが開発され、これらの使い分けが議論されています。
 
 まだ大規模な比較試験は行われていませんが、急性心筋梗塞時に限らず、心室頻拍/心室細動に対する効果を検討したJapanese SOS-KANTO 2012という研究2)によれば、リドカイン:73例、ニフェカラント:173例、アミオダロン150mg以下:173例、アミオダロン300mg:207例を比較しています。リドカインと比較して、アミオダロン150mg以下とニフェカラントはいずれも蘇生して入院する割合、24時間生存割合とも有意に高くなっています。
 
 また、有意差はありませんが、ニフェカラントのほうがアミオダロン150mg以下に比べて、24時間生存割合は高い傾向にあります。このことから、日本循環器学会のガイドラインでも心房細動の治療ではニフェカラントの静注が第一選択となっています。

4.心室レートコントロールにおけるβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリスの使い分け

 超高齢社会を迎えて、心房細動・心房粗動がみられる患者さんが増えています。心房細動では不整脈を止める治療「リズムコントロール」と、不整脈は止めずに心室応答レート(心室が応答する割合)をコントロールする治療「レートコントロール」があります。両者を比較した試験では意外にも差がない、あるいはレートコントロールをしたほうが予後が良いという結果が出ています3)
 
 また、心房粗動ではⅠ群薬を使うと心房粗動レートは下がるのですが、房室伝導は抑制しないため(活動電位の発生は、心房筋ではナトリウムチャネル、房室結節ではカルシウムチャネル)、心室レートがかえって増えてしまい、症状の悪化をみることがあります。そのため、心房粗動では原則として心室レートのコントロールを行います。心室レートコントロールすなわち房室伝導抑制に使われる薬は、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリスの3つです。

 房室結節は交感神経の入力が多く、活動電位がCa2+電流で発生することから、β遮断薬とカルシウム拮抗薬が房室伝導を抑制するのはわかりますが、ジギタリスはどうしてでしょうか? 

 ジギタリスは細胞内のCa2+濃度を増やして、心臓の収縮力を増強する強心薬ですが、濃度によって作用する場所が違ってきます。ジギタリスの濃度の低いほうから、副交感神経<心筋細胞<交感神経となっています。ジギタリス低濃度ではまず副交感神経が活性化されるので、房室伝導が抑制されます。最近、ジギタリスは低濃度が推奨されているのも、このような理由があるからなのです。
 
 それでは、これらはどのように使い分けるのでしょう?
 
■ジギタリスは、心房細動で全死亡率を上げるという臨床研究が複数報告されています4)。ジギタリスで良好なコントロールが得られている患者さんを他剤に変更するのはためらわれますが、これから投与する患者さんではおそらくジギタリスは選択されないでしょう。

β遮断薬は心不全を悪化させる可能性があり、カルシウム拮抗薬でもジルチアゼムは血圧低下をもたらす可能性があるので、まずはベラパミルが選択されることになります。

■ベラパミルで症状が安定したら、β遮断薬を少量から始めて、徐々にベラパミルからβ遮断薬に移行を図ります。

 ちなみに、心房細動では心室レートコントロールの目標はいくつなのでしょう? 緩やかなレートコントロール(安静時の心拍数≦110回/分)と厳しいレートコントロール(安静時の心拍数≦80回/分)を比べた研究がありますが、生命予後には差がありませんでした5)。よって、きちんと抗凝固療法を行っていれば、安静時の心拍数≦110回/分で様子をみるということになります。


引用文献
1)Preliminary report:effect of encainide and flecainide on mortality in a randomized trial of arrhythmiasuppression after myocardial infarction. The Cardiac ArrhythmiaSuppressionTrial(CAST)Investigators.NEnglJMed1989;321(6):406-12.

2)Amino M, et al:Nifekalant Hydrochloride and Amiodarone Hydrochloride Result in Similar Improvements for 24-Hour
Survival in Cardiopulmonary Arrest Patients:The SOS-KANTO 2012 Study. J Cardiovasc Pharmacol 2015;66(6):600-9.

3) Wyse DG, et al:A comparison of rate control and rhythm control in patients with atrial fibrillation.N Engl J Med 2002;347(23):1825-33.

4)Washam JB, et al:Digoxin use in patients with atrial fibrillation and adverse cardiovascular outcomes: a retrospective analysis of the Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation (ROCKET AF).Lancet 2015;385(9985):2363-70.

5)Van Gelder IC, et al:Lenient versus strict rate control in patients with atrial fibrillation.N Engl J Med 2010;362(15):1363-73.


この記事はナース専科2017年2月号より転載しています。

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