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【書籍紹介】看護師のためのドラッカー入門ーー最高の成果を生み出すマネジメント

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看護師のための経営学の本

 数年前に流行った『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』通称「もしドラ」は、高校野球のマネージャーがドラッカーのマネジメントとは何かを学び、甲子園を目指して奮闘するというものでした。「もしドラ」は、あえて経営とは関係ない分野にマネジメントを反映させることにより、ドラッカーの理論をよりわかりやすく説明していますが、『看護師のためのドラッカー入門』(以下「看ドラ」とします)もその点では同様です。

 「看ドラ」の著者である牛越博文氏は、著書に『医療経済学入門』『これだけは知っておきたいドラッカー』『介護保険のしくみ』などがあり、自身が「社会人生活のほとんどは医療系のシンクタンクや病院の現場で働いていた」と述べているように、経営学はもちろん、医療分野にも精通しています。「看ドラ」はそうした著者の経験を活かし、医療分野に特化してドラッカーの理論が書かれており、看護師にとってわかりやすく、読みやすいものとなっています。

 経営学は基本的にリーダーに向けて書かれることが多いのですが、ドラッカーの考えは、個人か組織かということにかかわらずどんな人にとっても役立ち、すぐにでも活用することができます。そのため、「看ドラ」では新人やベテラン、管理職のどの立場であっても、すぐに生かせることが具体的に書かれています。巷に溢れているよくある自己啓発本とは違い、「仕事に対する考え方」「上司はどうあるべきか」「管理職とはなにか」「社会の中の病院の立ち位置」など、ミクロな視点からマクロな視点まで、いろんな目線で看護師という仕事をみることができます。

ナレッジワーカーがやる気を保つために必要なこと

 「看ドラ」では、看護師という職業は「ナレッジワーカー」の1つであると定義されています。ナレッジワーカーはドラッカーの造語で、知識(役に立つ情報、即戦力として使えるような情報)を活用する職種を意味します。ドラッカーは今現在が「資本主義社会」から「知識社会」への転換期と考えており、リソース(ここでは経営の資源のこと)の中心が「資本・労働・土地」から「資本・知識・土地」へと変わっていくとしています。また、顧客にとっての価値観も「自分のための」モノやサービスから「社会的な」モノやサービスへと変化するとしています。このような変化のなかで、看護師という職業はただの労働者ではなく、一人ひとりが専門知識を生かして自己実現を目指し働くエグゼクティブとして活躍できるようになるべきだと述べられています。

 病院は経営のために利益を出さなくてはなりません。しかし、利益を追求するために数多くの労働者を用意すればよいという考えは、現在では通用しません。病院の価値を決めるのは患者さんや地域の人々ですが、その価値となるものを提供するのはそこで働く看護師です。ナレッジワーカーは自己実現ができなければやる気を失ってしまいます。価値を創り出すために知識をどの程度提供するかは本人次第であり、そこをマネジメントするのが上司や看護部ということになるのです。

どの立場でもマネジメント力は求められる

 人には得意分野があり、上司は適材適所を意識し、生産性を高めるようなマネジメントをすることが求められます。そして、看護師個人も強みを生かせるように、自分自身をマネジメントする自己管理が必要なのです。

 この本は、ドラッカーの経営学とは何かを説明しているだけでもありませんし、ただの自己啓発本でもありません。ドラッカーが遺した名言、マネジメントに対する考え方をベースに、看護師一人ひとりがどのように成果をあげていくべきかを論じた本なので、看護部長・師長など管理者の立場であればより深い学びになるでしょう。また、自分で自分をマネジメントするという応用も可能で、向上心のある方はもちろん、看護師としてのキャリアに悩む方にとっても、うってつけな本となっています。

 著者は病院が好きで、病院のために何か役に立ちたいと考え、この本を執筆しました。これを読めば、看護師という職業の素晴らしさを普段とは違った目線で、再確認することができるはずです。この先、看護師というナレッジワーカーがより重要になる社会に向けて、一読の価値ある本です。


看護師のためのドラッカー入門 最高の成果を生み出すマネジメント
著:牛越博文
定価:1,500円(税別)
サイズ:四六判
ページ数:160ページ

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