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【連載】基礎から解説!いますぐ実践できる「がんの緩和ケア」

第13回 家族ケア・遺族ケア|がん患者さんの家族も緩和ケアの対象です

執筆 槙埜良江

広島大学病院緩和ケアセンター がん看護専門看護師

<家族ケア・遺族ケアとは>
患者さんを抱える家族の負担・ストレスへの支援

患者さんを抱える家族への精神的ケア

 がんの診断から始まり、初回治療、治療継続、再発、治療継続困難、終末期に至るまで、家族は患者さんとともにがんのプロセスを歩みます。がんの進行から終末期に進む段階では、患者さんへの接し方に悩み、病状や治療方針について医師からの説明の機会も増え、患者さんの体調不良時は病院への送迎や介護など徐々に家族の負担が増してきます。

 また、患者さんとともに(患者さんの状態によっては家族のみで)療養の場所の検討や選択を行い、さらに、急変などの状態悪化時は家族が代理意思決定者となり、鎮静や延命処置などの重要な決定を担うことになります。がんのプロセスでは、家族内の意思統一の問題や人間関係の変化もあり、家族はさまざまな困難の中で患者さんとこれから起こりうることに向き合っていかなければなりません。

 医療の現場では、家族に対して、患者さんの一番の理解者であり患者さんがつらいときは寄り添う存在として期待をもつことがありますが、がん患者さんを抱える家族の負担に配慮した支援が必要です。

 がん患者さんの家族には、2つの側面があります。1つは「患者さんにケアを提供する側面」であり、もう1つは「『第2の患者さん』として精神的ケアを必要とする側面」です(表1)。

表1 がん患者さんの家族の2つの側面
がん患者さんの家族の2つの側面
国立がん研究センターがん情報サービス:家族向けの心のケアの情報.(2018年11月26日閲覧)https://ganjoho.jp/public/support/mental_care/mc06.htmlを参考に作成

 がん患者さんの家族については、「患者が“がん”の疑いがかけられたときから患者と同様に精神的な負荷を負う」1)、「がん患者家族の10~30%に何らかの精神医学的な疾患が認められる」2)と言われています。医療者は、目前の患者さんの治療やケアだけではなく、家族にもケアを広げていく必要があります。

死別後の悲嘆に対する遺族ケア

 家族は、患者さんが亡くなった瞬間に、遺族になります。家族にとって、愛する人や大切な人を失うことは、深い悲しみと寂しさ、孤独感、落ち込み、後悔、罪責感、怒り、苛立ちなどの感情や、疲労、不眠、食欲不振などの身体的症状を伴います。

 悲嘆(グリーフ)についての定義はさまざまですが、単に悲しいという感情的なものではなく、心理的・身体的症状を含む情動的反応であることが特徴です。死別に対する悲嘆には、「感情的反応、認知的反応、行動的反応、生理的・身体的反応」が含まれます3)

 死別を体験した配偶者の言葉を示します(表2)。

表2 死別を体験した配偶者の言葉
死別を体験した配偶者の言葉

 日常生活におけるストレスは、「配偶者との死別」が第1位という報告があります3)。そのため、配偶者の死による後追い自殺を防ぐことが求められています4)。これからの緩和ケアの考え方(当連載第1回:緩和ケア概論)に示すように、患者さんのみならず家族の喪失・悲嘆を理解し、遺族ケア(患者さんとの死別後の家族の悲嘆のケア)に注目する必要があります。

<アセスメント>
何に困っているか、気持ちを表出する場はあるか、家族の状況を把握しておく

家族ケアのアセスメント

 家族は、自らが「第2の患者」として、患者さんと同様にケアの対象であることを知らないことが多く、そのため、家族から家族ケアを要求されることはあまりありません。看護師は、がん患者さんを抱える家族が、いまどのような状況に置かれているのか、どのようなことに困っているのか、どのような支援を求めているのかを把握する必要があります。

遺族ケアのアセスメント

 死別後の家族の悲嘆が強くならないか、家族の状況を把握しておきます。例えば、身近に相談できる人がいなくて孤独感が強まると推測される場合や、子育てや別の介護があり、「子どもたちの前で泣いていられない」「義父の認知症の介護があるので悲しいなんて言う時間もない」など、悲しみを表出しにくい状況の場合は遺族ケアを行うことが望ましいと考えられます。

<すぐ実践できる看護>
家族の状況・苦悩をともに考え、必要時は他職種と連携

家族ケアのスタンス

 第2の患者として家族を理解し、家族の面会時には家族の心身の負担に配慮した対応が求められます。同じ家族であっても家族一人ひとりの思いや考え、価値観は異なるため、可能であれば個別に面談し、それぞれの状況を把握し苦悩に耳を傾けます。

 患者さんとの接し方や家族内の協力体制について話し合うとともに、経済的問題や介護の問題についてはソーシャルワーカーとの相談を設定するなど、家族の困っていることや気になっていることを一緒に考えていく姿勢でかかわります。

遺族ケアは事前に連携

 遺族ケアについては、緩和ケア病棟や訪問看護では通常行われていますが、病院などの一般施設ではあまり行われないようです。しかし、死別後の反応(不安、抑うつ、不眠など)によって臨床心理士や精神科医など専門家の介入が必要になる場合もあるため、気になる家族については事前に所属施設内の資源(緩和ケアチーム、がん看護外来、相談支援センターなど)に相談します。

 死別後も必要時にアクセスできるように、死別後のサポート体制を家族に伝えておきます。

まとめ                                   

家族に対しては、患者さんと同様にケアの対象であることを伝えて、家族がいつでも医療者に相談できるようにします。

遺族ケアが必要と思われる家族については、事前に所属施設内の資源の活用について検討し、死別後のサポート体制を家族に伝えておきます。


【引用・参考文献】
1)大西秀樹:がん患者家族へのアプローチ.第104回日本精神神経学会総会シンポジウムがん医療における精神医療の役割.日本精神神経学会誌 2009;111(1): 80.
2)Pitceathly C, Maguire P : The psychological impact of cancer on patients’ partners and other key relatives : a review. Eur J Can 2003 ; 39(11): 1517-24.
3)Holmes TH, Rahe RH : The Social Readjustment Rating Scale. J Psychosoma Res 1967 ; 11 : 213-8.
4)大西秀樹:家族・遺族ケアの大切さ なぜ家族ケアが必要なのか.ホスピスケア56 2017;28(2):27.
●坂口幸弘,他:悲嘆学入門―死別の悲しみを学ぶ. p4, 26-31, 121-123,昭和堂,2010.
●国立がん研究センターがん情報サービス:家族向けの心のケアの情報.(2018年11月26日閲覧)https://ganjoho.jp/public/support /mental_care/mc06.html

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