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【連載】看護の力で全人的痛みを緩和する! ~がん患者の緩和ケア~

地域(在宅)で看護師が 緩和ケアを実践するには

執筆 霜中貴美

株式会社いずみ薬局 ホスピス事業本部室長 緩和ケア認定看護師 (元)マザー湘南 訪問看護そよかぜ

 病院で行われる緩和ケアに対して、地域(在宅)で行われる緩和ケアとはどのようなものでしょうか。ここでは、その違いについてお話します。

* * *

1.限られた時間内に患者の変化を予測する

 病院でも地域(在宅)でも行われる「緩和ケア」の定義に違いはありません。ただ、やはり地域(在宅)に比べると、病院では患者の「症状コントロール」のために使用できる薬剤の選択肢が多く、迅速な対応が行えるといえるでしょう。

 また、病院内では、医師にすぐ対応してもらえるため、比較的短いスパンで予測指示があれば、患者の症状の変化に随時、対応が可能になります。対して地域(在宅)では、毎日医師の目が近くにあるわけではないため、例えば次の訪問時や往診の日までにどれだけ患者の症状に変化が起こり得るのかを予測し、医師へ相談しなければなりません。

 患者が検査を受ける機会が少ない地域(在宅)では、患者の病状などについて得られる情報が、病院と比較して圧倒的に少なくなります。そこで、実際に訪問している短い時間内に、全身状態や精神状態、その他の情報、家族の状況などを把握してアセスメントし、これから起こり得る問題を抽出していかなければなりません。そのため地域(在宅)で患者にかかわる看護師には、高いアセスメント能力が求められます。

2.身近な人へ対応方法を指導しておく

 家族や介護者には、患者の痛みが出現・増強した場合や、その他の症状が出現したときのために、対応の仕方を的確にわかりやすく指導しておく必要があります。時には、家族が吸引などの医療処置を行ったり、医療用麻薬の皮下注射の管理まで行うこともあり、これらの医療処置に対する不安はどの家族にもあります。

 そこで指導内容や緊急時の対応方法については口頭説明だけでなく、明確にパンフレットなどで手元に残したり、わからないことがあったときや不安なことが起きたときには、いつでも対応できることを伝え、緊急連絡先の番号を見やすい場所に掲示するなどの工夫を行い、しっかりしたサポート体制で保証していく必要があります。

3.往診医・調剤薬局などの協力体制を確認する

 在宅で医療用麻薬の皮下注射を行えるか否かは、患者の症状コントロールに大きく影響します。わかりやすくいえば、医療用麻薬の皮下注射を使用できないことは、「剣を持たず、素手や剣以外の武器で敵と戦う」ことと似ています。しかし往診医がクリニックからインフューザーポンプ(図1)に薬液を詰めて持参してくれる場合や、シリンジポンプ(図2)を貸し出してくれるようなケースは、まだまだ稀です。
 
インフューザーポンプ
 
CADD

 また、仮に医療用麻薬が処方された場合にも、クリーンルームの備えの有無など、薬局にも処方箋の取り扱い要件があるため、患者の住む地域に要件を満たした調剤薬局があるか否かも重要といえます。
 
 もちろん医療用麻薬の皮下注射を必要としない患者もいますが、鎮静に使用するドルミカムや下部消化管閉塞の際に使用するサンドスタチンもインフューザーポンプで使用することが可能であるため、やはり往診医の理解や地域の調剤薬局の協力は、緩和ケアにとって大きな力となります。
 
 緩和医療に力を入れている往診医の存在も地域によって差があるため、取り扱い要件を満たした調剤薬局の有無同様、患者の住む地区の資源を把握することが非常に重要といえます。

* * *
 
 日本が抱える2025年問題を前にして、施設療養や在宅療養という選択肢はどんどん広がっています。同時に、施設を含めた地域(在宅)での看取りも増えています。

 だからこそ、病院と地域(在宅)の協力体制を整えること、その上で患者が、地域(在宅)においても病院と切れ目ない療養生活上の支援を受けられることが大切です。

 そして何より、昔は当たり前のようにそばにあった「ご近所づきあい」が、非常に重要な社会資源の1つになることを忘れてはなりません。

 がんであろうとなかろうと、日々見かける近所の人々と顔見知りになっておくだけでも「今日は、○○さんは、いつもと様子が違う」「今日は○○さんが元気そうだった」など、気づいてもらえることがあるかもしれません。

 その地域住民の気づきこそがすでに「社会資源」であり、これからの日本に必要不可欠になります。インフォーマルな社会資源の活用も、地域(在宅)で看護にあたろうとする看護師にとって重要な役目の1つといえるでしょう。
 


この記事はナース専科2018年11月号より転載しています。

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