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【連載】麻酔科看護師が解説! 術後疼痛管理

術後痛の種類や機序とは

執筆 鈴木 怜夢

聖路加国際病院 麻酔科 周麻酔期看護師

Jutugototu

「術後痛」を知る

 例えばどこかにぶつけたり、切ってしまったりと今までの痛い経験から、手術をしたことがない人でも傷の大きさなどから何となく術後の痛みを想像できるでしょう。ただ、「ズキズキ」「おもい」など患者さんの痛みの表現はさまざまで、日々のケアで戸惑うこともあるかもしれません。研究が進むにつれて痛みの種類、機序が少しずつ解明され、それをもとに鎮痛方法や工夫が行われています。今回は、術後痛の種類や機序について、麻酔科の先生たちの教科書「Basic of Anesthesia」など1)2)3)を参考に、わかりやすく解説していきたいと思います。

痛みの種類はさまざま

 教科書には、痛みの原因や身体の部位、時期など、さまざまな分類方法で説明しているため4)、痛みの種類について理解しにくいかもしれません。ここでは術後痛でよく聞く痛みの種類について分類別で説明します。

術後痛の原因は:侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛

 手術はメスで皮膚を切開し、臓器を部分的に切除したり、人工物を入れたりします。そういった手術操作によって身体の 組織自体に傷がつき炎症が起きること(侵害受容性疼痛)と、手術操作で神経繊維が切れたり、伸ばされたり、圧迫されたりして神経自体を傷つけること(神経障害性疼痛)の2種類の理由で術後痛が生じます。術後痛の多くは侵害受容性疼痛によるものです。痛み止めは、この痛みの原因に基づいて選ぶことがよいとされています。

痛みの部位は:体性痛と内臓痛

 術後痛では、皮膚や骨・筋肉などへの痛み「体性痛」と、内臓・腹膜が伸びること、圧迫されることによる痛み「内臓痛」があります。体性痛では、患者さんの痛みの場所は明確(例:「手術創が痛い」など)で鋭い痛みなのに対し、内臓痛は痛みの場所がはっきりせず(例:「何となくお腹全体が痛い」など)鈍く、疼くような痛みです。

術後痛の機序:刺激や炎症が脳に伝わり、痛みを感じる

痛みを感じる過程

 痛みを感じる過程は以下のようになります。
①刺激(体の組織に熱や機械的な操作、化学刺激など)と炎症が起きて
②侵害受容器がセンサーとなり刺激を検知して、Aδ繊維(エーデルタせんい)とC繊維(シーせんい)という神経繊維によって脊髄の後角に伝わり
③脊髄を上に(脳に向かって)つたって
④脳の視床へ
⑤そして大脳皮質の体性感覚野で痛みを感じる

図 痛みを感じる過程
痛みを感じる過程
Management of acute Perioperative pain, Up To Date(2018年12月4日閲覧)を参考に作成

痛みを感じる過程が術後数日続く理由

 痛みを感じる過程①の刺激から炎症が起き、その傷が治るまで発痛物質(プロスタグランジンEなど)が出ることによって、センサーが刺激され続け痛みが続きます。「傷を冷やす」のは、この発痛物質の活動を抑える作用があります。 ボルタレン®、ロキソニン®といった抗炎症鎮痛薬は、この発痛物質の産生を抑える作用で痛みを取ります。キシロカイン®、アナペイン®などの局所麻酔薬は、②の痛みの伝わる道にブロックをするように作用します。このように痛みを感じる過程のどこに介入するかが鎮痛方法(抗炎症鎮痛薬、硬膜外麻酔、末梢神経ブロックなど)の違いになり、疼痛管理を理解するにあたって役立つポイントとなります。

今回のポイント

 術後痛は主に侵害受容性疼痛で、痛みの部位によって患者さんの痛みの表現が違います。そして痛みを感じる過程のどこに介入するかを理解すると鎮痛方法の理解が深まり疼痛管理に有用です。


【引用・参考文献】
1) Manuel Pardo, Ronald D. Miller: Chapter40 PERIOPERATIVE PAIN MANAGEMENT.Basic of Anesthesia SEVENTH EDITION, ELSEVIER, 2017.
2)Management of acute Perioperative pain, Up To Date, (Accessed on 2018/07/20)
3)丸山一男:5痛みのスープの味は?,6痛みのセンサー.痛みの考え方.南江堂,2014;p615.
4)日本ペインクリニック学会、痛みの機序と分類 https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_bunrui.html

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