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【連載】いまさら聞けない 脳神経外科ドレナージのしくみと管理の基本

脳神経外科におけるドレナージの目的|脳神経外科でドレナージが必要な理由①

執筆 福永 篤志

公立福生病院脳神経外科 脳神経外科 医長/気象予報士

 治療中や術後などに留置される脳神経外科領域のドレーンには、守らなければならない管理上の注意点がいくつかあります。それを理解するために、まずはドレナージのしくみと種類、そして3つのキーワードをもとにドレーン管理の基本について解説します。


目次


脳神経外科におけるドレナージの目的-そもそもドレーン留置はなぜ必要?-

[ドレナージの意義と目的]

 ドレナージとは、体内に溜まった不要、あるいは余分な液体を体外へ排出させることをいいます。排出液は、脳脊髄液(以下、「髄液」)や血液、あるいは両者の混合物がほとんどですが、時には感染して膿汁が混入することもあります。
 
 頭蓋内は、頭蓋骨で囲まれた閉鎖空間で、通常、6~15cmH2O程度の圧で保たれています。しかし、頭蓋内に髄液が過剰となったり、出血したり、血腫が溜まったりなどすると、脳は押しつぶされて逃げ場がなくなり、頭蓋内圧が上昇します。麻痺、失語症などの症状や、頭痛、嘔吐、うっ血乳頭といった頭蓋内圧亢進症状を経て、最終的には意識障害が出現し、脳ヘルニアとなり生命の危険に直結します。そのような状況を回避するために、頭蓋内の余計な液体を速やかに抜いて、脳への圧迫を解除させなければなりません。それゆえ、ドレナージは重要なのです。

[ドレナージの目的別分類]

 ドレナージの目的による分類には、主に「治療的ドレナージ」と「予防的ドレナージ」の2つがあります()。
 
目的別ドレナージの分類

●治療的ドレナージ
 疾患の治療を目的としたドレナージをいいます。つまり、頭蓋内に過剰あるいは不要となって溜まった液体を、頭蓋外へ排出させることによって治療するというものです。具体的には、慢性硬膜下血腫や水頭症、脳出血などがあります。

●予防的ドレナージ
 今後起こり得る疾患の予防を目的としたドレナージをいいます。例えば、くも膜下出血の際に行うスパイナルドレナージ(腰椎ドレナージ)や脳槽ドレナージなどがあります。これらのドレナージは、血液を頭蓋外へ排出させ、将来発生し得る脳血管攣縮(れんしゅく)や正常圧水頭症をできる限り予防する目的で行われます。また、皮下や硬膜外に血腫が溜まらないように行う、開頭術後の皮下ドレナージや硬膜外ドレナージも、予防的ドレナージにあたります。

[目的に沿ったドレーン管理のポイント]

 治療的ドレナージの管理のポイントは、「最初が肝心」ということです。というのも、頭蓋内圧が上昇し緊急性が高い患者さんが多いので、頭蓋内の過剰な液体を直ちに排出させる必要があるからです。そのため、術後早期にはドレナージが適切に効いているのか、排出量を頻回にチェックしなければなりません。もし量が少なく症状が改善していなければ、ドレナージが効いていない可能性があるので、担当医に相談しましょう。治療の目的が達成されれば、ドレーンは速やかに抜去されます。

 予防的ドレナージの管理のポイントは、「適切な量が排出されているか」ということに尽きます。くも膜下出血に対するスパイナルドレナージと脳槽ドレナージは、排出量が少なすぎれば、血液を排出させるという本来の目的が達成されないばかりか、感染のリスクが高まります。逆に排出量が多すぎても、オーバードレナージとなってしまい、頭蓋内圧を不当に下降させ、硬膜下血腫などを引き起こす可能性や、髄液とともに体内の蛋白が減少してしまいます。したがって、適切な排出量をキープすることが重要なのです。抜去するタイミングは、通常、脳血管攣縮期を過ぎた2週間程度です。2週間を超えると、感染のリスクが高まるので注意が必要です。
 
 皮下や硬膜外ドレナージも、適切な量が排出されているかが重要です。少なすぎると、皮下や硬膜外に血腫を形成してしまい、再手術の原因となることがあります。多すぎると、皮下や硬膜外に何らかの動脈性出血が疑われ、止血処置が必要となる場合もあります。これらのドレーンは、術翌日に抜去するのが通常です。


◆先生、脳血管攣縮って何ですか?◇
 脳血管攣縮とは、くも膜下出血が発生してから4~14日後にかけてみられる脳動脈の狭窄をいいます。要するに、動脈が細くなる現象です。原因として、くも膜下腔に拡がった血液中のヘモグロビンが分解して数日後に血管収縮物質が蓄積するという考え方があります。動脈が細くなるので、時に重篤な脳梗塞を発症します。


この記事はナース専科2017年4月号より転載しています。

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