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【連載】いまさら聞けない 脳神経外科ドレナージのしくみと管理の基本

ドレナージの種類と適応|脳神経外科でドレナージが必要な理由②

執筆 福永 篤志

公立福生病院脳神経外科 脳神経外科 医長/気象予報士

 治療中や術後などに留置される脳神経外科領域のドレーンには、守らなければならない管理上の注意点がいくつかあります。それを理解するために、まずはドレナージのしくみと種類、そして3つのキーワードをもとにドレーン管理の基本について解説します。


目次


ドレナージの種類と適応-脳神経外科ドレナージの特徴を知ろう!-

[開放式と閉鎖式の違い]

 ドレナージには、開放式と閉鎖式の2種類があります()。「開放か、閉鎖か」というのは、排出液が大気圧に対して開放されているのか(大気に触れている)、閉鎖されているのか(大気に触れていない)という違いによります。また、圧をかけて引くのか(陰圧)、外耳孔の高さで自然にまかせるのか(自然圧)、あるいは設定した圧で調節するのかなど、圧のかけ具合にも違いがあります。
 
ドレナージの種類

 開放式ドレナージの場合、大気圧と交通しているので末梢側のチューブ先端の高さを上下に調節することによって、頭蓋内圧を思い通りの設定圧にコントロールすることができます。言い換えれば、体内に留置したチューブ先端の位置と体外の先端の位置との高低差がそのまま設定圧となります。この方法は、一定の圧範囲で維持されなければならない頭蓋内環境にとっては、非常に理にかなっています。ただ、大気に触れているので、常に感染のリスクがあります。開放式ドレナージの具体例としては、脳室ドレナージ、脳槽ドレナージ、スパイナルドレナージがあります。
 
 一方、閉鎖式ドレナージの場合、大気とほとんど触れていないので、感染のリスクは低いのですが、厳格な圧管理ができないという特徴があります。ドレナージする圧は、ドレナージバッグの高さで決まります。閉鎖式ドレナージの具体例としては、硬膜外ドレナージ、硬膜下ドレナージ、皮下ドレナージがあります。

[頭蓋内の解剖・生理とドレナージの種類]

❶頭蓋内の解剖・生理
 脳を守るために、脳は3つの膜で包まれています。3つの膜とは、外側から「硬膜」「くも膜」「軟膜」の順となっていますが、軟膜は脳組織と密着しているので、実質的には、硬膜とくも膜の二重構造となっています(図1)。

頭蓋内の解剖・生理
 
 膜同士の間のスペースには、それぞれ名前がついています。頭蓋骨と硬膜の間は「硬膜外腔」、硬膜とくも膜の間は「硬膜下腔」、くも膜と軟膜の間は「くも膜下腔」といい、くも膜下腔のうち比較的広いスペースを「脳槽」(cistern;シスターン)と呼びます。
 
 正常な場合、頭蓋内の硬膜外腔にはほとんど隙間はなく、頭蓋骨と硬膜はくっついた状態となっています。しかし、開頭術などで頭蓋骨を外すと、硬膜は頭蓋骨から比較的容易に剥がれ、頭蓋骨を再び元に戻した後に硬膜外腔に血腫が溜まってしまいます。硬膜とくも膜も通常はくっついた状態で、硬膜下腔にもほとんど隙間はないのですが、やはり開頭術で硬膜を切開すると、くも膜が硬膜から剥がれて隙間ができるようになります。あるいは、硬膜と一緒にくも膜も切れてしまい、くも膜下腔の髄液が硬膜下腔にしばしば漏出します。
 
 くも膜下腔の髄液は、脳槽、脳室内を循環していると考えられています。髄液の総量は約150mLといわれていますが、1日約500mLずつ新しい髄液が脈絡叢等で産生されているので、結局、髄液は1日当たり3回程度、新しく置き換わっていることになります。小児でも同様で、新生児・乳児の髄液産生量は少ないものの、1歳以降は成人と同等とされています1)

❷ドレナージの種類
 脳神経外科での術中・術後には、図2のような部位にドレーンを挿入します。スパイナルドレナージについては、第3~4または第4~5腰椎間から10cmほど挿入します。
 
ドレナージの挿入部位
 
●脳室ドレナージ
 急性水頭症など、意識障害があり、生命の危険に瀕した状態の患者さんに対し、緊急で施行することがほとんどです。単独で行う場合は局所麻酔でも施行可能であり、手術時間は15~30分程度です。脳腫瘍による急性水頭症に対し、脳腫瘍の摘出術に先駆けて行う場合もあります。 通常、右前頭部から穿刺して挿入する「前角穿刺」で行い、チューブの先端は側脳室前角と第3脳室をつなぐモンロー孔付近に置きます。側脳室の後角に挿入する「後角穿刺」という方法もあり、この場合は通常、右側頭部の後方から穿刺します。いずれの穿刺法でもチューブが脳実質を貫通するので、まれに脳出血を合併することがあります。
 
●脳槽ドレナージ
 くも膜下出血に対する開頭術の際にチューブ先端を脳槽に留置し、皮膚を貫通して体外へと排出させるドレナージです。通常、脳室ドレナージよりも細いチューブを用い、視交叉槽や脳底槽などに留置します。くも膜下腔の出血を排出させる目的で挿入するので、血性の髄液が排出されます。
 
●スパイナルドレナージ
 脳槽ドレナージと同様にくも膜下出血の手術の場合や、下垂体腫瘍の手術中に挿入し、そこから人工髄液(あるいは生理食塩水)を注入して腫瘍を摘出しやすくしたり、術後も髄液漏の治療として利用したりすることがあります。そのほか、開頭術後の髄液漏に対し、1~2週間程度留置することもあります。
 
●硬膜外ドレナージ
 開頭術後の硬膜外血腫を予防するために留置することがあります。ただ、テンティング(tenting)という、硬膜を糸で吊り上げて頭蓋骨に結びつける操作を適切に行うことで硬膜外血腫は予防できますし、硬膜外ドレナージは、くも膜下の髄液を引き込み髄液漏の原因となったりするので、外減圧術のときを除き、近年はあまり行われなくなっています。
 
 一方、脊椎手術の場合には、通常、テンティングはできませんので、術後に硬膜外ドレナージを留置します。この場合、陰圧を強くかけると血腫とともにくも膜下の髄液も一緒に排出されることがあります。排出量が多いと、低髄圧となり脳出血や硬膜下血腫を引き起こす危険があるので要注意です。
 
●硬膜下ドレナージ
 通常、硬膜下血腫をドレナージする場合に行います。くも膜の損傷がなければ、硬膜下腔は閉鎖空間なので、溜まった血腫がおおよそ排出された後、通常、それ以上ドレナージされなくなります。もし髄液混じりのドレナージが続く場合は、くも膜の損傷を意味し、そのまま髄液がドレナージされ続けることになるので、早めに担当医に連絡する必要があります2)
 
●皮下ドレナージ
 開頭術などの皮膚切開部の皮下に溜まった血腫をドレナージするために行います。ただ、皮下ドレナージをしなくても術後の皮下血腫は数日で吸収されますし、チューブからの逆行性感染のリスクや、抜去の手間・負担があるので、近年はあまり行われなくなったようです。

[代表的な疾患と治療内容によるドレナージ法の適応]

❶慢性硬膜下血腫 
 高齢社会のわが国では脳神経外科領域で最も手術件数の多い疾患の一つです。通常、硬膜下ドレナージ(図3)を行いますが、硬膜下の血腫を洗浄してからドレーンを挿入する方法3)と、血腫を洗浄せずにドレーンを挿入する方法があります。筆者は後者の方法で行っています。溜まっていた血腫が一晩かけてゆっくりと排出され、圧迫されていた脳が膨らんでくると患者さんの神経症状が明らかに改善してきます。ただ、くも膜下腔と交通し、髄液も一緒に流出し続けると、低髄圧となるので注意が必要です。また、まれにドレーンが脳内に迷入したりして新鮮な血液がチューブ内に突然流出することもあります。術後早期は頻繁な観察が必要です。

硬膜下血腫でのドレナージ

❷急性水頭症
 頭蓋内の髄液の循環がせき止められて起こることがほとんどで、脳室ドレナージにより速やかに過剰な髄液を排出させる必要があります。原因は、脳出血や脳腫瘍、髄膜炎などです。通常、緊急手術の適応となります。

❸くも膜下出血
 くも膜下腔に出血が拡がると、出血して4日後から約10日間にわたり脳血管攣縮が起こります。脳血管攣縮の程度は出血量にほぼ比例するので、出血はできるだけ排除する必要があります。また、出血により髄液循環が障害されるので、水頭症の原因にもなります。そのため、脳槽ドレナージやスパイナルドレナージを挿入します。

❹脳室内出血
 視床出血や小脳出血などは、しばしば脳室内出血を伴い、その結果、水頭症となることがあります。脳室ドレナージを挿入しますが、時に脳室内の血腫が固まってしまい排出されにくくなります。このような場合には、線維素溶解酵素剤(ウロキナーゼなど)をドレナージチューブ経由で脳室内に注入し、血腫を溶かして排出させるようにします。
 


◆先生、脳神経外科のドレナージではなぜ陰圧をかけないのですか?◇
 脳神経外科以外の外科系診療科の術後には、強めの陰圧をかけてドレナージすることがしばしばありますが、脳神経外科ではほとんどありません。それは、脳神経外科の場合、陰圧をかけてドレナージしてしまうと、脳組織や血管なども吸引されてしまい脳出血を引き起こすからです。皮下や硬膜外のドレナージであっても、陰圧を強くかけると、硬膜縫合部の針孔を介して髄液がドレナージされてしまうことがあるので、術後の髄液漏や髄膜炎の原因となってしまう可能性があります。そのため、脳神経外科の術後には、うっかりドレナージバッグがベッドの下に落ちてしまうなどでドレナージが陰圧とならないように注意する必要があります。

イラスト/こさかいずみ


引用文献
1)石崎竜司,他:水頭症 ドレナージ・リザーバー・シャント設置術.ブレインナーシング 2009;25(8):70-6.
2)山家いづみ,他:硬膜下ドレナージの管理と看護のポイント.ブレインナーシング2013;29(7):47-50.
3)谷正一:慢性硬膜下血腫.ブレインナーシング 2012;28(4):23-4.


この記事はナース専科2017年4月号より転載しています。

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