圧設定やクランプ手技など、脳神経外科領域の開放式ドレナージには、特徴的な知識が求められます。ここでは、脳室ドレナージ、脳槽ドレナージ、スパイナルドレナージの管理の実際を解説します。
目次
脳槽ドレナージ
どのような治療で使うの?
●くも膜下出血に対し、くも膜下腔の血腫を排出させることによって、脳血管攣縮を軽減し、水頭症をできるかぎり予防する。
■ドレナージシステムの原理
通常、脳室ドレナージと同じドレナージシステムを利用します。一般的には、脳底槽や視交叉槽等にドレーンを留置します。脳槽は脳室と交通しているので、脳槽から髄液を排出させることによって頭蓋内圧をコントロールすることができます。
ただし、脳室と異なり、脳槽は比較的狭く、脳血管が多数存在するので、脳室ドレナージよりも細いチューブを使用します。したがって、流出が滞る傾向があり、チューブが詰まりやすいという特徴があります。そのため、脳室ドレナージと併用する場合には流出の停滞を防ぐために、脳室ドレナージよりもやや低い圧に設定します1)。
■排液の観察
脳室ドレナージと同様に、性状と量、チューブ内の液面の拍動の有無に注意します。
性状は、急性期は血液と髄液が混じり合った血性髄液が原則です。数時間以上経過すると赤血球が溶血して間接ビリルビンが出現し、色調がキサントクロミーに変化していくので、赤色が薄まり橙黄色へと徐々に変わっていきます。橙黄色のピークは1週間くらいでその後は無色透明に戻っていきますが、蛋白成分が増えるので、わずかに白濁した色調となります。途中で、明らかな新鮮血が混じったり、強い白濁が見られたりする場合には、何らかの血管損傷や感染が疑われますので、担当医をコールする必要があります。
量は、10mL/hrくらいが目安となり、通常は20mL/hr(髄液の産生量)を超えないように注意します。チャンバー内での滴下、または、チューブ内での液面の拍動の有無をチェックします。
■トラブルの発見と予防
●チューブの閉塞
脳室ドレナージよりもチューブが細く、かつ、血腫をドレナージするので、ドレーンの閉塞に最も注意が必要です。また、脳内のチューブ先端が脳槽周囲のくも膜や組織片などの構造物を巻き込んでしまい、チューブが詰まってしまうこともあります。いずれにせよ、排液量が適切であるか、時間ごとにしっかり観察しなければなりません。
●感染
脳室ドレナージと同様に、常に感染のリスクがあります。ドレーン刺入部からの逆行性感染を予防するため、ドレーン刺入部が汚染されないように、定期的な消毒とガーゼ保護を確実に行います。
38℃以上の発熱や頭痛、意識障害が続く場合には、検査を行い髄膜炎の診断を確定します。
■ドレーン管理上の注意点
基本的には脳室ドレナージと同じです。クランプ忘れによるオーバードレナージやフィルター汚染、チャンバー内に残った排液によるフィルター汚染、三方活栓からの薬物誤投与、そして、ドレーンチューブの自己抜去に注意が必要です。
特に脳槽ドレナージの場合には、排液に血液が混じっているので、フィルター汚染が細菌の培地となり感染の危険がより高くなります。慎重な管理を心がけましょう。なお、前述のように脳槽は比較的狭いので、ドレーン先端から血管や組織を引き込まないように、ミルキングは避けましょう。
■抜去に向けた観察と注意点
通常、脳血管攣縮期を過ぎた2週間以降にドレーンを抜去します。脳室ドレナージと同様に、留置が長期間に及ぶと感染のリスクが高まります。排液の性状や量、および患者さんの症状を併せて観察し、チューブの閉塞にも注意します。
<まとめ-脳槽ドレナージ>
ドレナージシステム | 廃液 | 抜去の時期 | 特に注意する点 |
---|---|---|---|
開放式ドレナージ | 色→血清~橙黄色~無色透明(わずかに白濁)に変化 量の目安→10mL/hr |
2週間以降 | ●くも膜下出血の血腫をドレナージするため、閉塞や感染のリスクが高い |
脳槽(脳底槽や視交叉槽)などに留置 | 色→無色透明(脳室内出血のない場合) 量の目安→10mL/hr |
2週間以降 | ●くも膜下出血の血腫をドレナージするため、閉塞や感染のリスクが高い |
チューブがやや細い | 色→血清~橙黄色~無色透明(わずかに白濁)に変化 量の目安→10mL/hr |
2週間以降 | ●くも膜下出血の血腫をドレナージするため、閉塞や感染のリスクが高い |
脳室ドレナージと併用するときは、やや低い圧に設定 | 色→血清~橙黄色~無色透明(わずかに白濁)に変化 量の目安→10mL/hr |
2週間以降 | ●くも膜下出血の血腫をドレナージするため、閉塞や感染のリスクが高い |
引用文献
1)山家いづみ,他:開放式ドレーン 脳槽ドレナージの管理と看護のポイント.ブレインナーシング 2013;29(7):30-4.
この記事はナース専科2017年4月号より転載しています。