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【連載】基礎から解説! 無痛分娩のケア

第2回 無痛分娩の流れ(妊娠中から分娩まで)と助産師・看護師のケア・観察ポイント

執筆 池添日菜

聖路加国際病院 助産師

執筆 鈴木 怜夢

聖路加国際病院 麻酔科 周麻酔期看護師

Mutu bunben

無痛分娩における助産師・看護師がかかわるものの基本的な流れは、下記のようになります。この回では無痛分娩に関する妊娠中から分娩までの、助産師・看護師のケアや観察ポイントを説明していきます(分娩後の助産師・看護師のケアや観察ポイントは第4回で解説します)。

図1 無痛分娩の基本的な流れ
無痛分娩の基本的な流れ


妊娠中:十分な説明と意思決定支援

 産科主治医・麻酔科医と連携しながら、看護師・助産師として無痛分娩を希望された妊婦さんに無痛分娩の情報を提供していきます。病院・施設によって無痛分娩のスタイルが異なり、計画分娩(自然の陣痛発来ではなく、あらかじめ分娩予定日を決めて薬などで陣痛を起こして分娩)で無痛分娩を行うところや自然の陣痛発来に合わせて無痛分娩を行うところがあります。

 病院・施設それぞれのスタイルに沿って方法や流れを妊婦さんに十分説明し、納得した上で妊婦さんが意思決定できるようにしていきます。日本では「お腹を痛めて産んだ」等の文化もあり、妊婦さんが無痛分娩を選択したことに対して消極的にならないよう、意思を尊重する関わりが大切です。

 当院では無痛分娩希望の妊婦さんに対して、希望された時点でパンフレットを配布します。その後、妊娠20週以降に無痛分娩クラスを受講してもらい、一般的な無痛分娩の説明を行います。その上で無痛分娩を選択した妊婦さんが産科麻酔外来を受診し、既往歴等の確認、診察を行い、麻酔科医師とのインフォームドコンセントを実施しています。

分娩:①入院してから

 無痛分娩を開始するタイミングが陣痛発来の前か後に関しては施設・病院ごとや、妊婦さんの合併症などによって方針が異なります。当院では基本的に自然に陣痛が来て入院したのち、妊婦さんの希望したタイミングを尊重して無痛分娩を開始します。

 ただし無痛分娩後に微弱陣痛(陣痛が弱くなる)になる可能性や、無痛分娩中は安全管理上絶食(清澄水の飲水は可能)になることを考慮し、分娩進行状況、児と母体双方の状態を確認し可能であると判断された場合、医師・助産師・看護師と妊婦さんと十分相談した上で無痛分娩開始を決めています。陣痛の痛みの評価は、NRS(Numerical Rating Scale: 数値評価スケール)など客観的な指標を用いて行います。

NRS
NRS

分娩:②無痛分娩開始時

<無痛分娩準備>

 入院後、無痛分娩開始が決まったら、麻酔でのバイタルサイン変動にすぐ対処できるよう末梢静脈点滴ラインを確保します。児の状態を確認するために、胎児心拍モニターは持続で装着し、母体のバイタル確認のために生体情報モニターを装着します。部屋に必要物品を準備し、緊急時に備えて使用する薬剤・物品も確認します。

<穿刺時の介助>

 硬膜外麻酔や脊髄くも膜下併用硬膜外麻酔を行う際は、適切に穿刺体位がとれるよう妊婦さんの介助を行います。背中を丸める姿勢(膝をかかえて体育座りのような姿勢)をとることによって、背骨と背骨の間が開いて穿刺しやすくなります。かし陣痛があるなかで同じ姿勢をとり続けることが困難な場合もあり、陣痛と陣痛の合間にスムーズに穿刺できるよう、穿刺中に陣痛がきた場合も呼吸を整えて体位がなるべく変わらないよう妊婦さんに声かけしていきます。

分娩:③無痛分娩開始後

 無痛分娩開始後のケアで大切なポイントは、疼痛コントロールと分娩進行です。疼痛コントロールができているのか確認しつつ、分娩進行の観察、分娩促進ケアを行う必要があります。同時に医師への連絡・相談が必要な項目も理解しておきましょう。急変時に関して、別途第5回無痛分娩の安全対策と急変時の対応で説明します。

<疼痛コントロール>

 無痛分娩開始後、痛みが改善しているか確認します。当院では、「耐えられる痛み」を目指して少量の麻薬(フェンタニル)を添加した薄い局所麻酔薬(0.1%ロピバカイン:商品名アナペイン®)を使用していますが、個人差も大きく痛みが0になる妊婦さん、子宮の収縮・張りといった陣痛の感覚までもなくなる妊婦さんもいます。しかし痛みがあまり改善しない・鎮痛が不十分な場合は、感覚神経がブロックされている範囲を「コールドテスト1)」を用いて評価します。

 コールドテストの結果、ブロック範囲に左右差があった場合やブロック範囲が不十分な場合は医師に連絡・確認の上、体位変換を行ったり、PCAポンプ(第1回の麻酔の方法参照)を使用している場合はPCAボタンを押すよう妊婦さんに説明します。ブロック範囲に左右差がある場合、効果が不十分な側を下にした側臥位をとることによって、重力で下にした側にも薬が効く場合があります。体位変換の際は、妊婦さんに多くのコードやライン類がついているので注意しながら行います。

 ブロック範囲が不十分な場合は、PCAボタンを押すことによって硬膜外腔にさらに薬が追加投与され、ブロック範囲が広がり良好な鎮痛となることがあります。左右差が改善されなかったり、良好な鎮痛が得られない場合は、医師に相談し硬膜外カテーテルを入れ直すこともあるため、必要物品の準備と介助を行います。分娩が急速に進行した場合も鎮痛不十分となることがあります(詳しくは次回の「第3回お産の進行と痛みに関して」で説明します)。


コールドテスト
麻酔が効いている範囲を、患者さんの冷覚を用いて確認する方法です。麻酔が効いている部位は冷たさを感じにくくなり、麻酔が効いていない場所(例えば前額部)と同じ冷たさを感じない部分が麻酔効果の範囲となります。無痛分娩では、Th10以下の麻酔効果範囲が必要で、第2期あたりではS領域にまで必要となります。

デルマトーム
KEEGAN JJ,et al:The segmental distribution of the cutaneous nerves in the limbs of man.Anat Rec 1948;102(4):409-37.を引用改変


<分娩進行>

(分娩進行について詳しくは「第3回お産の進行と痛みに関して」で解説します)

 分娩進行に関しては、自然分娩と同様、分娩進行を観察しつつ、分娩促進ケアを行います。無痛分娩を行うことにより微弱陣痛や分娩が遷延しやすい2)ため、分娩促進ケアを考慮します。しかし無痛分娩中は下肢の運動障害により、歩行やスクワット、バランスボールなどが実施できず、分娩促進のケアが限られてしまうこともあります。運動障害がある場合は、ベッド上でもできる、あぐらや座位といった体位変換などのケアを安全な範囲で行います。また無痛分娩中の妊婦さんは尿意を感じにくくなることがあり、膀胱に尿が溜まったままだと分娩進行を妨げることがあるため定期的にトイレに誘導したり、トイレに歩行できないときは導尿を行います。

 自然分娩では陣痛発作時の妊婦さんの疼痛の様子や疼痛部位などの外診所見より分娩進行を把握することができますが、無痛分娩の場合にはそれらの所見はないため分娩進行を把握することが難しくなります。肛門圧迫感や胎児心拍、疼痛の変化などから分娩進行を確認しつつ、内診して分娩進行を把握し産科医師・麻酔科医師と共有します。分娩進行が停滞する場合は、その原因(胎児の胎位・胎勢異常、微弱陣痛など)を検索します。回旋異常に対して母体の体位変換をしたり、微弱陣痛に対して十分な水分補給・輸液をすることもあります。陣痛の強度・頻度が十分でないと判断した場合には、産婦人科診療ガイドライン3)に則って促進剤を使用することもあります。

 分娩第2期については、子宮口全開大後、児頭が下降しているかどうかを確認する必要があります。自然陣痛のみで児頭が下降する場合もありますが、無痛分娩により努責感がない場合が多く、児頭下降のために努責のタイミングを指導し、有効に努責がかけられているか評価します。努責がうまくかけられないほど無痛分娩による運動障害がある場合は、医師に相談し麻酔薬の濃さや量を減らすことがあります。また努責を開始するタイミングとしては、子宮口全開大してすぐ怒責するのではなく、少し待ってから怒責するほうが、分娩第2期は長くなりますが努責している時間が19分程度短くなると報告されており4)、ある程度児頭の下降を待ってから怒責をするほうが有効的にいきめる可能性があります。


【引用文献】
1)平成29 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」参考資料2(2018年12月6日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000204860.pdf
2)Anim-Somuah M,et al:Epidural versus non‐epidural or no analgesia for pain management in labour.Cochrane Database Syst Rev 2018;2018 May 21.
3)日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会,編:産婦人科診療ガイドライン 産科編2017.日本産科婦人科学会,2017.
4)Lemos A,et al:Pushing/bearing down methods for the second stage of labour. Cochrane Database Syst Rev 2017;9(10).
5)KEEGAN JJ,et al:The segmental distribution of the cutaneous nerves in the limbs of man.Anat Rec 1948;102(4):409-37.

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