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【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

県内唯一の大学病院として 研修・教育に注力 看護師が中心となり 県内の医療の「道標」に<和歌山県立医科大学附属病院>

  • 公開日: 2018/12/19
  • # 注目ピックアップ
  • # 看護師インタビュー

 「私達は安全で質の高い医療を提供し、地域の保健医療の向上に貢献します」を理念に掲げる和歌山県立医科大学附属病院は、県内唯一の大学病院として、質の高い医学研究を基に高度医療を推進すると共に、医学教育・研修にも力を入れています。また、県内全体の医療レベルを底上げするための活動も積極的に行っています。その取り組みについてうかがいました。


看護師が中心となって全職員を教育

 同院の看護職員と和歌山県立医科大学の看護学生双方のキャリアアップを支援しているのは、2014年に開設された「看護キャリア開発センター」(池下ゆかりセンター長)です。新人看護職員研修や看護師の継続教育研修を中心に、教育プログラムを構築。現場の看護師に求められる知識や技術の習得だけでなく、看護専門職として自身でキャリアデザインができるよう、看護の新たな可能性に挑戦できる感性豊かで創造的な看護職員の育成を目指しています。また、県内の看護職員のキャリアアップも積極的に支援し、地域に貢献することも目標として掲げています。

 一方で、院内全体の教育研修にも力を入れている同院では、中山美代子医療安全推進部次長と小島光恵感染制御部主査(感染管理認定看護師)が中心となって、全職員を対象とした医療安全や感染管理の教育・研修を積極的に行っています。医療安全推進部は、医療事故の防止と医療の安全性の確保を目的に設置され、医療安全の推進と医療安全文化の醸成・確立に取り組んでいます。部長(医師)、次長(2名)、専従のゼネラルリスクマネジャー、事務職員で構成され、うち中山次長が専従となっています。また、院内各部門にはリスクマネジャーを配置し、安全管理に関する点検と改善、安全対策に関する事項の周知徹底を図っています。

 「大学病院の職員としての質の高い研修を実施しています。毎年約250名の職員が新規に採用されるため、少人数で行う新人研修は、院内のインストラクターにも協力してもらっています。全職員を対象とした医療安全研修会や復職者研修会、院内巡回にも力を入れています」(中山次長)

医療安全推進研修
新規採用者への医療安全推進研修

毎年250名の新規採用者のレベルを一定に

 感染制御部では、医師や看護師だけでなく、検査部、薬剤部、事務局などと協力し、患者さんが安心して治療に専念できる安全な療養環境と、職員が健康に働くことができる職場環境の提供を目指しています。メンバーは、部長(微生物学教室教授)のほか、医師(2名)、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職員で、小島主査が専従の感染管理認定看護師として重要な役割を担っています。また各診療科や看護単位、中央部門には、感染対策マネジャーを配置しています。「新人研修では、針刺し事故防止のため実技指導を行っています。手指衛生の研修会では、対面で実技チェックをしています。各部署からの要請で出張研修を行うことも多いですが、今年は『血液培養の採取方法』をテーマにしたいと思っています」と小島主査。

 同院の職員総数は約2000名。毎年250名が新規採用となるため、単純計算で8年で全職員が入れ替わることになります。全職員の知識・技術を一定のレベルに保つには、毎年の研修の積み重ねが重要です。医療安全推進部や感染制御部のメンバーだけでは手が回らない部分もあるため、両部に配置したリスクマネジャーや感染対策マネジャーが協力し教育・研修を行う体制を整えています。

研修風景
新規採用医師、看護師へのAHA-BSLヘルスプロバイダーコース研修

同院での教育が県内に波及

 同院の退職者の多くは県内のほかの病院に就職するため「当院できちんと教育・研修し、高いレベルの知識・技術が身に付いていれば、それがひいては県内全体の底上げにもつながる。そのためにも、当院での教育が重要」と上野雅巳地域医療支援センター教授は指摘します。和歌山県下のほとんどの病院に、和歌山県立医科大学から医師を派遣しており、顔が見えやすい環境が構築されています。県内の病院を対象とした研修会を開く際にも、多くの病院からの参加があるといいます。

 独自に研修ができない病院に対し、和歌山県看護協会が安全管理者養成研修などを開催する際、中山次長が協会から派遣され、講師を務めることがあります。また、研修を聞いた病院・施設などから、中山次長が直接講師の依頼を受けることもあり、県内全体の底上げに貢献しています。「依頼があればどこへでも行きます」と中山次長。また小島主査も、県内で活躍する約20名の感染管理認定看護師の1人として、研修会の際には講師を務めています。

 「安全メール」を公開し、県内の病院からの質問や相談を受けたり、院内にある書籍やDVDを貸し出すなどの活動も、県内全体の医療レベルの底上げに役立っています。「土地柄からか、県内の病院は『大学病院ではどうしているのか』『大学病院で実施しているなら、当院でも行いたい』と、当院の動向を気にする傾向が強い」と上野教授。同院は、医療安全、感染管理を含めた医療レベルにおける県内の「道標」になっています。

上野雅巳地域医療支援センター教授を中心に、中山美代子医療安全推進部次長 (左)と小島光恵感染制御部主査
上野雅巳地域医療支援センター教授を中心に、中山美代子医療安全推進部次長 (左)と小島光恵感染制御部主査

DATA

和歌山県立医科大学附属病院
和歌山県和歌山市紀三井寺811-1
開設●1954年
病床数●800床
職員数●(常勤換算)782.1名
看護配置●一般病棟 7:1
日本医療機能評価機構認定病院/地域がん診療連携拠点病院/地域肝疾患診療連携拠点病院/周産期母子医療センター設置病院
和歌山県立医科大学附属病院の写真


ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2018年11月(no.119)より転載

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