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【連載】基礎から解説! 無痛分娩のケア

お産の進行と痛み -分娩進行に合わせた産痛緩和-

執筆 鈴木 怜夢

聖路加国際病院 麻酔科 周麻酔期看護師

執筆 池添日菜

元聖路加国際病院 助産師

分娩進行

 分娩経過は分娩第1期、分娩第2期、分娩3期と3つの時期に分類されます。分娩第1期は分娩開始から子宮口全開大までの時期をいい、初産婦は約10〜12時間、経産婦は約5-6時間程度となります。分娩第2期は子宮口全開大から児娩出までの時期をいい、初産婦は約1-2時間、経産婦は約30分-1時間時間程度となります1)。無痛分娩中はこの時間が延長すると言われています2)

 分娩第3期は児娩出から胎盤娩出までの時期をいい、初産婦では約15〜30分、経産婦では10-20分と言われています1)。そして児は分娩進行に伴い、狭い産道を通るために回旋(回旋については下記補足参照)しながら娩出されます。


回旋とは
骨盤や産道に合わせて赤ちゃん自身の姿勢をかえながら出てくることを回旋といいます。回旋には4段階あり、この回旋がうまくできていないと産婦さんの痛みが強くなったり、分娩が進行しなくなることがあります。第1回旋では児が顎を引いて自身のお腹をみるような体位になります。第2回旋では児が産婦さんの背骨側を向きます(産婦さんが仰向けなら赤ちゃんはうつ伏せになる)。第3回旋で児は反屈位(頭をそらせる)になります。第4回旋で児の顔面が母体大腿の内面を向きます。

図1 回旋の流れ
分娩の流れ
Lan Symonds: Management of labour 「Essential Obstetrics & Gynaecology 5th Edition」Elsevier Inc, 2013.より引用し、一部改変

分娩第1期

 分娩開始は、①陣痛周期が約10分以内②陣痛が1時間に6回以上になった時点とされています3)。「フリードマン曲線」4)は初産婦の分娩経過を図に示したもので、分娩第1期の最初の2/3では子宮口開大は緩徐であり「潜伏期」と呼ばれ、残り1/3では子宮口の開大は急速に進行するため「加速期」としています。

 分娩第1期の初期には不規則で軽い陣痛ですが、分娩進行とともに増強し、陣痛の間隔は短く、陣痛発作時間は長くなっていきます。その間子宮頸部では展退(子宮頸部がのびて薄くなっていく)と開大が進み、児頭も第1回旋し骨盤に進入します。

 子宮口開大とともに児は第2回旋しながらさらに下降が進んでいきます。子宮口全開大近くになると陣痛間隔は2〜4分、発作時間は40〜60秒となり、努責感(いきみたい感覚)が出現し、この頃に破水が起こる産婦さんが多くいます。

図2 フリードマン曲線
フリードマン曲線
Friedman EA. Patterns of labor as indicators of risk. Clin Obstet Gynecol 1973; 16:172-83から引用し一部改変

分娩第2期

 この時期には陣痛の間欠時間は約2〜4分、発作時間は約1分となり、児頭の下降が進んでいきます。次第に陣痛発作時に陰裂が少し開いて、児頭の一部が見えるようになりますが、陣痛間欠時には産道抵抗により児頭は膣内に後退して見えなくなります(排臨)。その後もさらに児頭の下降が進むと陣痛間欠時においても児頭は後退しない状態となります(発露)。その後何度かの陣痛によって第3回旋、第4回旋を経て全身が娩出されます。

分娩第3期

胎児娩出後いったん停止した陣痛は再び発来し、胎盤が徐々に子宮壁よりはがれ娩出されます。通常、胎盤が娩出されるときの痛みはほとんどありません。

痛み-産痛-

 産痛とは、分娩時の子宮収縮、軟産道開大、骨盤壁や骨盤底の圧迫、子宮下部や会陰の伸展ななどによって生じる下腹部痛や腰痛ななどの疼痛を総称したものといわれています5)。大多数の産婦さんが分娩中に産痛を訴えます。

産痛緩和法

非薬物的方法

 非薬物的産痛緩和方法には、マッサージ、体位変換、呼吸法、温罨法、入浴ななどがあります。これらは簡単ですぐに行うことができ、リラックス効果が産痛緩和に繋がると考えられ日々行われていますが、十分な鎮痛効果は期待できません。

薬物的疼痛緩和法

 連載第1回でも説明したとおり、薬で痛みを和らげる方法は主に2つあり、1つめはよく知られている硬膜外麻酔などの区域麻酔を用いた方法、2つめは痛み止めを点滴やガスで全身に投与する方法があります。

点滴での痛み止めは母体や胎児が眠くなるなどの影響がありますが、区域麻酔で痛みを和らげる方法はそのような影響がほとんどなく鎮痛効果も期待できるため広く採用されている方法です。亜酸化窒素:(別名:笑気しょうき)という強力な鎮痛作用のあるガス性吸入麻酔薬を吸って痛みを和らげる方法を補助的に用いている国もあります。

分娩進行に合わせた産痛緩和(硬膜外麻酔を用いた無痛分娩)

 無痛分娩をしていたとしても、麻酔をしない分娩と同様、分娩進行に伴い陣痛の部位、強度、質は変化していくため、それに合わせたケア・鎮痛を行う必要があります。また痛みの強さと分娩進行は個人差が大きいため、分娩進行で予測しながらケアを行うことも大切ですが、産婦さんの表情、言動、バイタルサインも注意深くみながら産婦さんのニーズに合わせたケア・鎮痛が重要です。

陣痛発来から分娩第1期(潜伏期)までの産痛と産痛緩和

 分娩開始後、分娩第1期の潜伏期のころは下腹部や腰の痛みで、生理痛や下痢のような感じなどと表現されることが多いといわれています。分娩進行に伴い陣痛は強く、長く(陣痛のない時間が短くなる)なるため、何かしらの方法で産痛緩和をしていく必要があります。潜伏期に無痛分娩をはじめるかどうかに関しては、施設や医療者の方針などで異なりますが、アメリカの産婦人科学会では産婦さんの希望したタイミング(リクエスト)が必要十分条件とされています6)

 安定した(麻酔がちょうどよく効いている)無痛分娩中は陣痛がやわらいでいるので、陣痛の強さや長さを産婦さんは自覚しにくく、また医療者も産婦さんの表情では分娩進行がわかりにくくなる場合があります。無痛分娩をしていない場合、分娩が進行するにつれて痛みが強くなるので見た目でもわかりますが、無痛分娩中は痛みが和らいでいるため分娩進行していても表情が穏やかなことが多いです。分娩監視装置でのモニタリングとともに、内診も合わせて分娩が進行しているのか、停滞しているのか、定期的に確認し、産科スタッフ、麻酔スタッフと情報共有していくことが大切です。

分娩第1期の活動期から子宮口全開大の産痛と産痛緩和

 分娩第1期の活動期には、児頭が下がってくることにより会陰部、肛門周囲の痛みが出現し、痛みも強くなり、「人生最大の痛み」として表現する産婦さんが多くみられます。安定した無痛分娩の場合は、会陰・肛門部の軽度圧迫感を感じたり、痛みはほとんどないか耐えられる程度の痛みを感じることがあります。分娩が急速に進行した場合、痛みの強さと部位が急激に変化しますが、硬膜外麻酔の効果は刺入点から上下一定範囲で、かつ無痛分娩では薄い局所麻酔を使っているため、効果不十分になることがあります。その場合は薬の強さ(力価)や、薬の量(ボリューム)の調整が必要になります。

 それ以外にも硬膜外カテーテルの位置異常や、産科の合併症など鎮痛が不十分になる・痛みが急に増強した原因を鑑別しなくてはならないので、スタッフ間の情報共有・チーム医療が大切です。分娩第2期は痛みが増すとともに努責する時期でもあるので、無痛分娩中に強い薬を多く使用すると下肢や腰の運動神経も遮断され、うまくいきめなくなるときもあります。うまくいきめないことによって分娩進行が停滞している場合は、産婦さんとも相談しながら薬の量や強さを少し減らす工夫も必要となります。

児娩出から胎盤娩出、その後の処置の疼痛と鎮痛

 児娩出後や胎盤がでるときは、通常痛みはさほどないとされています。ただし無痛分娩で使用した硬膜外麻酔を続けて使用することによって、その後の会陰縫合などの処置が必要になった際の鎮痛も可能です。


【引用・参考文献】
1)町浦美智子:3分娩経過と所要時間「助産師基礎教育テキスト第5巻 分娩期の診断とケア」、日本看護協会出版会、2018、p30.
2)Anim-Somuah M, Smyth RMD, Cyna AM, Cuthbert A. Epidural versus non-epidural or no analgesia for pain management in labor (Review). Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 5. Art. No:CD000331.
3)堀内成子:Ⅱ分娩期のケア技術「パーフェクト臨床実習ガイド母性看護第2版」、株式会社照林社、2017、p94.
4)Friedman EA. Patterns of labor as indicators of risk. Clin Obstet Gynecol 1973; 16:172-83.
5)日本産科婦人科学会編.“産痛”.産科婦人科用語集・用 語解説集.改訂第3版.東京,日本産科婦人科学会.2018.106.
6)Practice Bulletin No.177: Obstetric Analgesia and Anesthesia, Obstetrics & Gynecology 129(4)2017,e73–e89.
7)Lan Symonds: Management of labour 「Essential Obstetrics & Gynaecology 5th Edition」Elsevier Inc, 2013.

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