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【連載】手術室看護の基本を知ろう!

内視鏡手術とは

執筆 佐藤大介

東北医科薬科大学病院 手術部 手術看護認定看護師

 手術にはさまざまな術式があります。例えば消化器外科の手術で幽門側胃切除や右半結腸切除などお腹を大きく開けて手術をする、いわゆる開腹手術があります。最近は大きく腹部を開けずに、ポートと言われる筒状のものを数本腹部に差し、そこから長い鉗子を挿入し手術をする内視鏡手術という術式が増えてきています。腹部を大きく開ける開腹手術と内視鏡手術の違いは何でしょうか。今回は腹腔鏡下の内容を中心に、内視鏡手術についてお話ししていきます。


内視鏡手術とは

 内視鏡手術は従来行われてきた開腹手術と比べて、術後の疼痛が少ない傾向にあります。また、内視鏡手術では手術創が小さいために、美容的な面でも患者さん側から要求されることが多くなってきています。
 
 一方で、カメラ(内視鏡)や鉗子を挿入する穴(ポート)の位置が固定されるため、内視鏡や鉗子の方向が制限され、内視鏡手術では開腹手術に比べて手術操作が制限されてしまいます。当然手術時間は開腹手術より長くなる傾向にあり、出血があった場合、比較的少量の出血でも視野が見えなくなる可能性があります。

 内視鏡手術では気腹装置と呼ばれる機械を使用します。気腹装置とは手術の視野を得るために腹腔内をガス(医療用二酸化炭素)で充満させる装置であり、一定圧(およそ8~10mmHg)を維持しています。従来の腹壁を吊り上げて行う吊上げ法がありますが、現在はこの気腹法が主流になっています。

内視鏡手術時の合併症

 気腹法は、腹腔内に圧をかけることによってさまざまな合併症を生じる可能性があり、それらを十分に知っておく必要があります。合併症には皮下気腫、気胸、二酸化炭素の血管内流入によるガス塞栓、気腹時の腹膜進展に伴う迷走神経反射や高炭酸ガス血症による不整脈、気腹や頭低位によって気管チューブの位置が深くなり気管支内に入り込むなどがあります。その他、SpO2が突然低下した場合、気腹により胸郭が押し上げられて気管分岐部の位置が上に移動することによって片肺換気を起こしている可能性があります。

 気腹を行う際は二酸化炭素を使用するので、気腹を開始すると呼気終末二酸化炭素(ETCO2)分圧が上昇します。分時換気量を20%程度増加させるため、1回換気量か換気回数が増加することがあります。また、気腹を行うと肺の膨張が妨げられるため気道内圧が上昇します。

 気腹は圧が高くなればなるほど視野を確保しやすくなります。しかしその反面、圧が高くなれば患者さんに与える影響も大きくなりさまざまな合併症を引き起こす可能性も高くなります。気腹法を行うことで腹腔内に圧力がかかることにより、腹腔内臓器の血流が減少します。また、下肢の血流貯留や大静脈の圧迫などにより心拍出量が減少します。

 これらの合併症を認識し、患者さんおよびモニター・気腹圧の異常がないか観察する必要があります。また、乾燥した気腹ガスを流入することで、気化熱として体内の熱が奪われ低体温を起こしやすいため、適切な体温管理を行うことも重要です。

 その中でも最も危険な合併症に空気塞栓があります。血管や実質臓器を損傷した時に、ガスが大量に血管内に入ることで生じるといわれています。SpO2や血圧が急激に低下し、命の危険に陥りますので、注意が必要です。麻酔科の医師との連携も非常に重要です。

看護師の役割と注意点

 看護師はどのような準備をして手術に臨むのでしょうか。前述しましたが、内視鏡手術は大きく腹部を開けずに、ポートといわれる筒状のものを数本腹部に差し、そこに長い鉗子を挿入して手術をする術式です。術式に応じたポートの数や太さ、内視鏡用のカメラや腹腔内を映すためにモニターを用意します。

 そのほかに、内視鏡手術では内視鏡装置や電気メス、超音波凝固切開装置などのその他のデバイスと、さまざまな医療機器を使用し、術式ごとに使用するものが異なることも多いです。術前に使用する器械がそろい、安全に使用できるか確認する必要があります。

 気腹で使用するガス(医療用二酸化炭素)のボンベの残量をチェックし、十分な量があるか事前に確認する必要があります。鼠径ヘルニアや胆摘などはポートのみで十分に手術可能ですが、結腸切除などでは内視鏡プラス小開腹する必要があり、開腹したときの対応をしなければいけません。

 内視鏡手術では、術野のモニター画面を通し“今何をしているか”など術野を共有して観察する必要があります。手術の進行を理解・予測し、縫合器などの必要となる物品が室内にそろっているか事前に確認し、タイミングを図り準備することが重要です。術野モニターを観察して手術の進行を理解し、術者・麻酔科・器械出し看護師・外回り看護師とチーム医療として協働・連携を図ることが重要です。

TOPICS 手術支援ロボット ダ・ヴィンチとは

ダ・ヴィンチ手術と従来の内視鏡手術の違いは?

 近年の手術技術の発展によりダ・ヴィンチ手術が始まりました。ダ・ヴィンチ手術とは腹腔手術を支援する内視鏡下手術支援ロボットを使用した手術のことです。現在、前立腺がん全摘手術には開腹手術と腹腔鏡手術がありますが,これらの良いところを合わせたのがダ・ヴィンチ手術といえるでしょう。

 当院では2018年にダ・ヴィンチ手術をスタートさせました。最初は泌尿器の手術から始まり、現在は前立腺摘出術が主ですが、今後さまざまな診療科で使用が検討されています。

 ダ・ヴィンチ手術では内視鏡手術と同様にポートと呼ばれる小さい穴(前立腺がん手術では4~6個ほどポートを使用)から長い鉗子を入れて手術を進めていきます。

 ダ・ヴィンチには3つのカートがあり、それぞれペイシェントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートといいます。

 実際に患者さんの体内で手術操作をする機械がペイシェントカート、執刀医が座って操作するのがサージョンコンソール、ビジョンカートには、助手の医師やその他スタッフが見えるように手術の様子が映し出されます。執刀医以外はこのビジョンカートを見ながら手術を進めていきます。

 筆者の初めて見たとき感想ですが、サージョンコンソールに乗って手術をする執刀医は近未来の世界を想像しました。

 医師によると内視鏡の手術より鉗子の動きが大きく(先が360°回転するなど)、手術がしやすいとのことでした。しかし、内視鏡に比べてダ・ヴィンチの操作はかなり難しく、執刀医の熟練された技術が必要になります。

看護師はどう動く?

 看護師は助手の医師と共に手洗いをします。助手の医師に鉗子を渡したり、器械類の管理を行います。ポート挿入時や閉創時には普段通り器械出しをしますし、イメージとしては腹腔鏡下時の器械出しと大きく変わりありません。しかし、腹腔鏡下時で使用する鉗子に比べて長く、高価なものやすぐ壊れてしまう器械もあり、より取り扱いに注意が必要になります。

 当院ではダ・ヴィンチを導入するにあたって担当者を決めました。機器メーカーが主催するダ・ヴィンチ手術を導入するための勉強会があり、担当者が参加しました。さらに業者主催で当院手術部看護師に向けて勉強会を再度依頼し、基本的な手術の流れや器械の取り扱いなどを指導してもらいました。手術導入時はダ・ヴィンチ担当のスタッフに主に担当してもらい、少しずつ担当できるスタッフを増やしていっている段階です。


【引用・参考文献】
1.日本麻酔科学会・周手術期管理チームプロジェクト:周術期管理チームテキスト第2版.2011.公益社団法人 日本麻酔科学会
2.日総研グループ:手術看護エキスパート 2017;11(2).
3.メディカ出版:OPE NURSING 術式別でわかりやすい!内視鏡外科手術実践マニュアル 2014秋季増刊,2014.

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