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【連載】注射・採血・輸液の手技徹底攻略!

播種性血管内凝固症候群(DIC)の患者さんの採血ってどうする?

執筆 甲斐夕里江

大分県立病院 看護部 がん化学療法看護認定看護師

Q.播種性血管内凝固症候群(DIC)の患者さんの採血時の注意点を教えてください。

A.DICの患者さんの採血の注意点を考える上でまず、DICという病態の特徴を知ることが重要です。そこから見えてくる注意点を考えていきましょう。


DICってどんな状態?

 DICは、白血病、敗血症、固形がんなどの基礎疾患に合併して起こり、血管内凝固が活性化され、全身の細小血管に血栓が多発します。その結果として、多臓器の障害が起こり、また止血に必要な血小板・凝固因子が消費されて出血傾向を呈する症候群です。症状は、臓器症状と出血症状に分けられます。

 臓器症状は、多発性の微小血栓による循環障害によって主要臓器の血流が著しく低下し、腎臓では乏尿や無尿、肺では呼吸困難、心血管障害ではショック、中枢神経では意識障害などが起こります。出血症状には、紫斑(皮下に拡がる青黒いアザ)、点状出血(皮下に生じる2mm程度の小さな出血)、口腔粘膜や歯肉にみられる浸出性出血(粘膜から染み出すような出血)、消化管出血、血尿などがあります。

 急速に進行するDICは致死率が高く、早期発見や早期治療が必要になります。そのため、看護師は疾患を理解し、早期治療へつなげられるよう正確なデータを出すための確実な採血手技や患者ケアが必要となってきます。

採血時の注意点はどんなこと?

1)採血スピッツの取り扱い
 DICの診断は、基礎疾患や出血症状などの臨床症状、PT(プロトロンビン時間)、Plt(血小板数)、Fib(血漿フィブリノーゲン)、FDP(フィブリン分解産物)、D-dimer(血漿Dダイマー)などの異常をスコアリングして判定します。臓器症状は、腎機能(BUN、CRE、eGFR)や肝機能(T‐Bil、AST、ALT)で明らかになります。

 DICの診断で必要となる凝固検査用の採血管(黒スピッツ)は少量の抗凝固剤(3.2%クエン酸ナトリウム緩衝液)が含まれており、採血量の過不足により検査値が不正確になる可能性があります。黒スピッツは必要な血液検体量が注入できるように真空仕様となっていますが、記された白線に検体量が一致しているかを確認し、スピッツ内で検体が凝固しないように、直ちに4~5回穏やかに転倒混和しましょう。これらは正確な検査値を得るために必要な手技となります。

 翼状針で採血する場合、ルート内に残る血液が0.2~0.3ml程度あるため、採血量が不足することがあります。その場合は、生化学など採血量に制限のないスピッツから採取を行いましょう。

2)皮下出血の予防
 採血手技において、DICを起こしている場合は特に駆血時間が長くなったり、駆血帯の圧が強すぎると静脈がうっ血し、皮下出血をきたしやすくなります。そのため、駆血時間はできるだけ短くし、血管の選定に時間がかかったときは一度緩めて締めなおすようにしましょう。駆血帯の圧も先行研究より70~95mmHgがよいと言われています1)
 
 目安として、ゴム管駆血帯を使用し、周囲径の2横指分短い長さを交点として装着する方法は実践しやすいと思いますので、参考にしてみてください。また、駆血帯を直接皮膚に巻くと皮下出血などの原因となる場合があるため、患者さんの衣服やタオルなどの上から駆血するなど工夫をしましょう。

3)患者さんへの対応
 まず、血液検査での血小板減少や凝固機能の程度を確認し、出血リスクをアセスメントする必要があります。DICが切迫して日単位で数値の変動がありうると予想された場合には、採血が頻回に行われます。患者さんや家族から「そんなにたくさん血液を取ったら輸血しても足りないんじゃない?」などといった言葉が聞かれることもあると思います。

 採血は侵襲的な検査であり、頻回な採取となると患者さんの苦痛も増します。そのため、私たちは患者さんや家族へ頻回な検査や不安定な病態への不安や苦痛に寄り添いながら、採血は必要最小限であること、DICから離脱できるまでは短期間での病状把握が必要であることを説明し、理解を得ることが重要です。

 また、DICでは採血部位からの易出血(圧迫止血後の再出血や出血斑)が起こりやすい状態となります。そのため、採血後は患者さんへ止血しにくくなっていることを伝え、確実な止血ができるよう5分ほど圧迫止血することや止血後の再出血がないか確認するよう指導が必要となります。出血傾向がある人は、採血後に内出血しやすいので、しっかりと圧迫止血を行うことで予防できます。意識が混濁している患者さんに対しては、止血バンドを使用するとよいでしょう。


【引用・参考文献】
1)伊藤真弓、岡田ひろみ:駆血圧を意識したゴム管製駆血帯の装着方法の明確化.日本看護学会論文集看護教育47巻.日本看護協会出版会,2017,p.79‐82.
2)中根実:がんエマージェンシー化学療法の有害反応と緊急症への対応.医学書院,2015,p.224‐244.
3)岡庭豊:病気がみえるvol.5血液 第1版.メディックメディア,2016,p.176‐9.

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