お気に入りに登録

【連載】やってみよう! フットケア

第12回 高齢者のフットケア

執筆 山口晴美

NANA NURSING THERAPY代表・看護師

前回の子供のフットケアはいかがでしたか?
子供たちより多彩な理由でフットケアが必要なのは高齢の患者さんですね。
特に糖尿病や血管系、免疫系の疾患をお持ちの方は予防も大切です。
今回からは高齢者のフットケアの実践です。


1.高齢者の特徴

 フットケアにかかわらず、看護ケアは観察が8割といっても過言ではないと思います。その人の体の現状を病状だけでなく、生活に合わせたケアを見つけることが大事です。まずは高齢者の身体を観察し、必要なケアを選択しましょう。

●変形が多くみられる

①関節などの骨の変形の有無
・足指、足首、膝、股関節、背骨等、全体のつながりを観察
・開張足、扁平足、ハイアーチがないかを確認
・外反母趾、内反小趾など指の変形がないかを確認

※変形した足ををどのように使っているか? がポイントです。
歩行可能な場合は、ケア前に見ます。そのほか、発赤がないか目視することと疼痛や経過などを問診して確認します。
変形した足の見本

②爪の変形
・形、厚みなどがあって生活に支障があるかどうか
・今後支障が出そうか
・可能であれば、いつからあるかを把握する
爪の変形

●立ったときに指が浮いていて重心がかかとにある

指の変形

●皮膚がかたい、または脆弱である

●靴を正しく履けていない

・大きさ、履きやすさ、歩きやすさ
・靴下とフィットしていない(ゆるすぎる、分厚い、サイズが合っていない)

●目が見えにくい、足に手が届かない、変形等により自分で十分なケアができない

・どれぐらいの期間、ケアできていないか?

●筋力やバランス感覚の低下により運動や歩行がうまくできない   

・杖、松葉づえ等の補助具の有無、使っている頻度等

 高齢者の足は子供の足と違ってこれから発達していくものではないため、身体全体の老化に伴い、改善が難しいものがあります。手術後は特に今までの身体とは明らかに違います。なくした機能、取り戻せた機能により、身体の使い方も変わっていきます。今後の生活も視野にいれなければなりませんが「現状の身体を持って生活できる」という視点でケアしましょう。

2.高齢者のフットケアの目的とケアの方法

①感染予防
②現状の身体がなるべく維持できる
③炎症、創傷等の早期発見 
上記の3つがあり、それぞれについてケアを考えて行います。

①感染予防

 高齢者の足に多くみられる感染症は皮膚、爪の「白癬症」であり爪が肥厚、変形し、崩れていくこともあります。白癬菌をばらまかないためにも清潔を保てるようケアします。

清潔の保持(足を洗いましょう)
・入浴時に爪の先端、生え際、指の間、かかと、くるぶしの周囲をきちんと洗う
・入浴できない場合は足浴、清拭、ガーゼや綿棒などで部分清拭を行う
・白癬の皮膚や爪を削るときには、周囲に飛び散らないようにやすりや皮膚・爪をしめらせてから行う
・施行者の衣服や身体になるべく飛び散らないよう方法を考える。

指の間の白癬
指の間の白癬

 高齢者は栄養補給が十分にできていないことや薬を多用しているので免疫力が落ちていることが多いです。フットケアが中心ですが感染防止については循環や呼吸、代謝など身体全体のことを考えてケアしていくことが必要です。

②現状の身体を維持できるようケア

 高齢者は急激な体の変化(特に体重のかけ方、バランスの取り方の変化)に適応するのに時間がかかるため、徐々に馴らしていくことが必要です。

 転倒の経験やぐらつくと自信をなくして行動が狭まってしまい気分的に落ち込みやすくなります。

それをふまえて
・ケアを一度に行わないことも重要(変化をなるべく小さく)
・肥厚した爪の厚みは生活に支障なければそのままでもよい
・靴下や寝具にひっかるようであれば少しずつ削る(歩く人は特に感覚を確認しながら行う)
・胼胝(たこ)や鶏眼(うおのめ)は観察し、支障があればケアする(保護だけでもよい)
・巻き爪は指の長さを保てるよう(のばしすぎたり深爪にならない)こまめにケアする
・ケア後は必ず歩行してもらい違和感がないか確認する


<症例1>
80代 女性 高血圧、認知症
 30年以上爪切りをしていなかった。フットケアになれていないため2週間に1回、1回につき20分で3回、足浴(泡浴)→爪切り、やすりがけを行う。

 以後は1~2カ月に1回通院時に観察と爪切りを行う。

 初回は不安が強く、緊張がみられたが2回目からは会話もでき歩行時に疼痛がなくなったため活動しやすく表情も柔和になった。
症例の経過


③炎症、創傷等の早期発見

 高齢や糖尿病、神経障害により感覚が鈍くなると炎症、創傷などの初期に気がつかず悪化してしまうことがあります。傷つきやすく直りにくいため観察をこまめにすることが必要です。

「足を見てくださいね」ではなく
・いつ(毎日? 曜日を決めて? 入浴時、靴下を履くときなど)
・誰が(本人が? 家族が? 介護・看護者?)
・どこを(爪、指の間、足の裏。 赤くなっている、痛い、ぶよぶよしている部位などいつもと違う感じも重要)
・どんな方法で(本人、家族ができること、医療者は観察ポイントを統一する)
・どうする(みつけたら誰にどのように報告するか? ケアの判断の仕方)
以上を具体的に伝えておくことが早期発見、関心の喚起につながると思います。

まとめ

 高齢者のフットケアは「今より少し改善すること」を目標に患者さんが自分の身体を認識できるよう配慮しながらゆっくり行うことが大切です。
 
 長年かかって変形したものや老化によるものは元には戻りにくいものです。看護では元に戻すことよりも今の身体がいかにうまく使えるかを考えて日常生活の援助をしていくべきだと考えます。患者さんに添った、すぐにできるケアを患者さんと一緒に考えてみてください。


<ちょっと提案>
 病院で手術後は靴を履いてリハビリを行いますね。高齢者は家に帰ると多くの時間は、裸足か靴下の生活になります。

 手術後に靴を履いてしか歩いたことがなければ裸足の感覚がなかなかわかりづらく家で転倒したりします。

 できれば退院までに、裸足や靴下でたたみや床、カーペットでの歩行練習をして日常生活に自信を持ってもらいたいと思いますが、短期間で退院となれば難しいです。ベッド上で歩く(足裏を使う)ことで感覚だけでも掴む援助ができるとよいのではないでしょうか。

ページトップへ