【連載】Q&Aで考える高齢患者さんのせん妄ケア

せん妄を重症化させないためのかかわり方とは?

解説 金盛琢也

日本赤十字豊田看護大学 老年看護学 講師 (旧:聖路加国際大学 大学院看護学研究科 老年看護学)

Q.せん妄を重症化させないための適切なかかわりについて教えてください

A.感染症や薬剤などの身体因子と、不快や痛みなどの促進因子を取り除き、なるべく早く日常的な生活リズムを取り戻すことを考えます。

アセスメントにより増悪因子を取り除く

 まずは、せん妄の原因と考えられる原因疾患や脱水、感染症の有無、せん妄を起こしやすい薬剤の服用など、身体内部の環境をアセスメントし、治療などで身体因子を取り除くことが大切です。また、特に高齢患者さんの場合は、環境に適応しにくいうえに、せん妄を発症することで疲労が蓄積していることが考えられます。過度な体力の消耗などによりアドレナリンが分泌されて興奮状態となることもあるので、水分や栄養の不足、休息のとり方にも注意が必要です。

 さらに、痛みや過剰な刺激がないかなど、促進因子を探ります。例えば、術後であれば創部痛はないか、床上安静による身体痛はないかを、疼痛スケールなどを用いて客観的に評価します。痛みがあると判断された場合には、医師と相談して疼痛コントロールを行います。
 
 照明や機械音などの騒音が刺激になっている場合にはその対応も必要です。家族からの情報や観察などから、患者さんにとって心地よい環境を整えます。

睡眠環境を整えて生活リズムを回復する

 せん妄の原因となっている疾患の治療とともに、日中の活動と夜間の睡眠を促し、せん妄の促進因子である生活リズムの障害を改善させていきます。
 
 生活リズムを取り戻す具体的な方法としては、①早期に食事を開始する、②離床する、③午前中に日光浴をする、④点滴などは日中に行い夜間の刺激を少なくする、⑤患者さんの興味のあることや、普段の生活にかかわる話をする、などがあります。

 ただし、日中患者さんとかかわりたくても時間がとれないという声は少なくありません。その場合、少数のスタッフでも運営できる院内デイケアなどを組織として取り入れ、患者さんが離床し、レクリエーションに取り組める体制を整えることが有効です。日中に活動することで、自然と夜間の睡眠も確保され、せん妄も改善されます。

 また、家族の存在は、患者さんにとっては安心感につながります。せん妄の重症化を防ぐためにもできればなるべく面会に来てもらい、場合によっては付き添ってもらうなど、家族に協力をお願いすることも大切です。
 


参考文献
●日本精神神経学会,日本語版用語監修,高橋三郎,他 監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014.
●亀井智子 編著:高齢者のせん妄ケアQ&A 急性期から施設・在宅ケアまで.中央法規出版,2013.
●酒井郁子 他編:どうすればよいか?に答える せん妄のスタンダードケアQ&A100.南江堂,2014.
●八木一馬:入院患者におけるせん妄のマネージメント.みんなで解決!病棟のギモン.レジデントノート 2016;18(9):1758-63.
●林安奈 他:せん妄の鑑別診断と鑑別のポイント.せん妄に対する治療戦略最前線.臨床精神薬理 2017;20(2):149-55.
●粟生田友子 他:らくらくせん妄/不穏 予防・アセスメント・対応マニュアル.BRAIN NURSING 2017;33(3):7-49.


この記事はナース専科2017年10月号より転載しています。

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