【連載】Q&Aで考える高齢患者さんのせん妄ケア

せん妄発生時に行われるのはどんな治療?

解説 金盛琢也

日本赤十字豊田看護大学 老年看護学 講師 (旧:聖路加国際大学 大学院看護学研究科 老年看護学)

Q.せん妄発生時はどのような治療が行われますか?

A.まずはせん妄の原因疾患の治療を優先します。非薬物療法で生活リズムの回復などを図り、それでも症状が改善しない場合には薬剤による治療が行われます。

非薬物療法によるアプローチからスタート

 せん妄の治療では、原因となっている疾患の治療が優先されます。肺炎が認められればその治療を、投与中の薬剤が原因であれば使用を中止します。それに加えて、まずは非薬物療法によって環境の整備や、不眠などの生活リズムを乱す要因を是正していきます。足浴やアロマを利用したマッサージなどは、視覚や嗅覚、皮膚感覚が刺激され、患者さんに心地よさと安心感を与えます。ラジオなどの音も低活動型せん妄には有効で、症状の改善につながるといわれています。
 
 患者さんとコミュニケーションをとる場合には、リアリティ・オリエンテーション(第6回のcolumn参照)を行うことも重要です。

薬剤は主に対症療法的な役割として用いられる

 非薬物療法でもせん妄が改善しない場合や、興奮状態でライン類が抜去されて治療ができない場合などには薬物療法を行います。しかし、この薬物療法は原因疾患の治療を継続するためと、危険な行動を防止するためのもので、せん妄そのものを治療する方法としては確立されていません。さまざまな副作用を伴うため、使用にあたっては、あくまでもケアによって症状の改善が期待できず、安全上やむをえない場合にのみに限定するべきといえるでしょう。
 
 せん妄による興奮に対する薬物療法では、一般的に抗精神病薬や抗うつ薬が用いられます。せん妄の初期対応あるいは急性期には、非定型抗精神病薬のリスペリドンを症状が出ている時期のみ経口投与します。これまでは定型抗精神病薬であるハロペリドールが用いられてきましたが、近年は副作用がより少ない非定型抗精神病薬が用いられることが多くなっています。ただし、副作用が少ないといっても、ふらつきや過鎮静による転倒、誤嚥性肺炎などの副作用があり、特に高齢患者さんは抗精神病薬の副作用が出やすいので、服用中は十分に注意が必要です。その他、抗うつ薬ではペロスピロン塩酸塩水和物などが経口投与されます。
 
 一方、せん妄による昼夜逆転などの睡眠覚醒障害に対しては、ミアンセリン塩酸塩、トラゾドン塩酸塩などが用いられることがあります。
 


参考文献
●日本精神神経学会,日本語版用語監修,高橋三郎,他 監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014.
●亀井智子 編著:高齢者のせん妄ケアQ&A 急性期から施設・在宅ケアまで.中央法規出版,2013.
●酒井郁子 他編:どうすればよいか?に答える せん妄のスタンダードケアQ&A100.南江堂,2014.
●八木一馬:入院患者におけるせん妄のマネージメント.みんなで解決!病棟のギモン.レジデントノート 2016;18(9):1758-63.
●林安奈 他:せん妄の鑑別診断と鑑別のポイント.せん妄に対する治療戦略最前線.臨床精神薬理 2017;20(2):149-55.
●粟生田友子 他:らくらくせん妄/不穏 予防・アセスメント・対応マニュアル.BRAIN NURSING 2017;33(3):7-49.


この記事はナース専科2017年10月号より転載しています。

ページトップへ