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経管栄養(経腸栄養)とは|種類・手順・看護のポイント

*2020年5月25日更新

目次

経管栄養とは

 経管栄養とは、胃や小腸にチューブを挿入し栄養や水分を取り込む方法です。経口摂取が困難な重症患者さんの栄養管理などにも用いられます。
 
 腸が障害されていて腸からの栄養の吸収が難しい場合を除き、腸を使って栄養を摂取するのがよいとされています。

【経腸栄養の基本について学ぶ】
第1回 経腸栄養療法の特徴と適応
第4回 重症患者さんの栄養管理で早期から腸管を使用する意義とは

経管栄養の種類ー経鼻、経腸(胃瘻など)

 経管栄養の投与方法には、経鼻からの投与、胃瘻、腸瘻などいくつか種類があります。経鼻チューブか、胃瘻・腸瘻にするかの選択は、経腸栄養療法を実施する期間によって決定します。ここでは、経鼻経腸栄養、胃瘻、腸瘻の特徴について紹介します。
 
【投与経路の決定の仕方について学ぶ】
第6回 経鼻チューブか消化管瘻かはどのように決まるの?

●経鼻経腸栄養

 鼻から挿入したチューブから栄養補給を行います。手術の必要がないため、一時的に経口摂取が困難となった場合などの第一選択肢として用いられます。

【概要と適応、投与手順を確認する】
第6回 経鼻ルートと経胃瘻的空腸瘻

●胃瘻

 腹部に空けた瘻孔から、胃に直接栄養を入れる方法です。造設術には、PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)や開腹手術があります。

【胃瘻について詳しく学ぶ】
第5回 内視鏡的胃瘻造設術:PEG
第1回 いったい、 PEGのどこがいいの?【PR】
胃ろう・PEGとは|造設術や管理・看護のポイント(まとめ)

●腸瘻

 障害や疾患により胃に栄養剤を入れることができない場合に選択されます。胃瘻と同様に、造設するには内視鏡手術または開腹手術を行う必要があります。

経腸栄養剤とは

 日本外科代謝栄養学会では、経腸栄養剤の定義を「咀嚼を要しない液状の経腸栄養用の製材」としています。

 経腸栄養剤にはさまざまな種類のものがありますが、患者さんの消化管の機能や消化吸収能に合わせて選択します。また、疾患に合わせた栄養剤を選択する場合もあります。

 経管栄養で使用される栄養剤の多くは液体ですが、そのことによって起きる問題点を防ぐため、胃瘻患者さんには半固形化経腸栄養剤を選択することがあります。液体の栄養剤に比べて体位を気にせずにすみ、注入時間が短く、下痢や逆流の予防にもつながります。しかし一方で、便秘や脱水の合併症があります。

【経腸栄養剤の種類について学ぶ】
第3回 病態別経腸栄養剤
第4回 半固形化栄養剤(semi-solid)

経腸栄養剤の種類・分類

 経腸栄養剤には、さまざまな分類の仕方があります。病態に合わせて適したものを選択します。

【経腸栄養剤の選択の仕方をおさらい】
経腸栄養剤の選択の仕方
第8回 病態によって栄養剤の選択はどう異なるの?

医薬品か食品か
 経腸栄養剤は、医薬品か食品かで分類できます。

窒素源(タンパク質)の分解の程度での分類
 原材料から天然食品を使用した天然濃厚流動食と天然食品を人工的に処理、合成した人工濃厚流動食に分けられます。さらに、人工濃厚流動食は、窒素源(タンパク質)の分解の程度から成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤の3つに分類されます。

剤型違い
 経腸栄養剤には、液状タイプ、粉末タイプがあります。

【経腸栄養剤の種類と分類を確認する】
第2回 経腸栄養剤の種類と分類
第7回 経腸栄養剤にはどのような種類があるの?

■経管栄養の注入の手順

 ここでは、経管栄養の投与の手順と注意点、薬剤を投与する際の手順を解説します。

<栄養剤の投与>

①医師の指示を確認
※患者と栄養剤の内容が合っているかを確認する

②手洗い
※流水と液体石けんまたは、アルコール消毒薬のいずれかで手指消毒を行う

③必要な物品の準備・栄養剤の用意
※栄養剤を冷所で保管している場合は、下痢を引き起こしてしまうことがあるため、人肌程度に温めなおす
※患者さんに合わせた物品(加圧バッグ、ポンプ、イルリガードルなど)を用意する
※栄養点滴チューブを使用する場合は、余分な空気が入らないように栄養剤をチューブの先端まで満たす

④物品を患者さんのもとへ運ぶ・環境整備

⑤患者さん確認・体位調整
※本人確認をし、説明をして同意を得る
※経管栄養は時間がかかるため、排泄の確認を行う
※ベッドを30度以上に挙上し、クッションなどを使用して患者さんにとって安楽な体位を整える

⑥チューブを接続
※胃ろうの場合は、衣類を捲り上げて接続部がきちんと見えるような状態で行う
※漏れの原因となるため、しっかり接続したことを確認する
※経腸栄養開始前には、チューブが確実に胃に挿入されているかを毎回確認する必要があります。

⑦注入を開始し直後の様子を観察
※経鼻の場合は、胃泡音などできちんとチューブが胃内にあることを確認する
※滴下数の調整をし、しばらく患者さんの様子を観察して変化(表情・むせ込み・腹痛・腹部膨満感など)がなければ退室する

⑧注入中は定期的に患者さんの様子を確認
※栄養剤の種類によっては滴下のスピードが変化しやすいものもあるため、その都度調節する
※滴下が遅れてしまった場合も、注入速度を速めると下痢や嘔吐を引き起こす可能性があるため行わない
※注入速度が速いと胃食道逆流による嘔吐、喘鳴や呼吸障害、ダンピング症状などを起こす可能性があります。

⑨注入が終了したら白湯を注入
※常温程度の白湯を使用し、指示通りの量を注入する

⑩30~60分は臥位にならずに過ごしてもらう
※注入後すぐに臥位にすると、嘔吐や胃食道逆流を起こしやすいため

【手順と注意点を確認】
経腸栄養剤の注入ー手順とケアのポイント
第11回 経腸栄養時の管理 (栄養剤の調整、器具の洗浄、フラッシュ等)

<薬剤投与>

 薬剤は簡易懸濁法で投与します。

①錠剤に亀裂を入れる、またはつぶす

②約55度の少量のお湯で溶解させる(10分以内)

③体温程度まで冷ます

④専用のシリンジを使用して注入する

⑤白湯を流す

【薬剤投与に関連する記事を読む】
簡易懸濁法とは?
第14回 経管栄養時の水分投与と薬剤投与

経腸栄養(経管栄養)の観察項目

 経腸栄養(経管栄養)を注入中は、投与速度は適切か、患者さんに悪心・嘔吐や腹部膨満などの消化器症状がないかを確認します。注入前後は、排ガスや排便があるかどうかもみておきます。

【観察項目を確認する】
第9回 経腸栄養開始後のアセスメントでは何に注意すべき?

経管栄養の看護のポイントと注意点

<経鼻経腸栄養>

 チューブの交換は2週間に1回程度で、医師または看護師が行います。

<胃瘻の管理>

 胃瘻のトラブルを防ぐためには下記の点に注意します。

・1日1回程度カテーテルを回転させ、適度なゆるみがあることを確かめる。
・カテーテルは皮膚に垂直になるようにし、瘻孔に負担がかからないようにする。
・消毒ではなく水で洗浄し、湿らせたガーゼや布でよごれをふき取る。
・バルーン型の場合は中の水が自然に減少していくため、1~2週に1回は水の量を確認して交換する。その際は蒸留水を使用する。
・チューブ型の場合は栄養剤注入後、詰まりを予防するため微温湯でフラッシュする。

【投与時の管理について確認】
第11回 経腸栄養時の管理 (栄養剤の調整、器具の洗浄、フラッシュ等)

<経腸栄養バッグと栄養ルートの管理>

 経腸栄養法は静脈栄養法と比べると管理が容易ではありますが、細菌が増殖しやすくさまざまな感染症のリスクが高くなります。可能な限り使い捨てとし、困難な場合は、消毒薬に1時間漬け完全に乾燥させるなどし、細菌汚染の少ない管理方法で1日ごとや1週間ごとに交換するようにします。

<カテーテルチップの管理>

 使用後は水道水で洗浄し、外筒から内筒を外して乾燥させます。長くても1~2週間ごとの交換が推奨されています。

【経腸栄養に使用する器具の管理について読む】
第8回 経腸栄養に必要な器具とその管理 ~ボトル、チューブ、注入ポンプなど~

<下痢のケアー消化器合併症ー>

 経腸栄養の投与時に消化器合併症が起こることがあります。下痢はその中の1つです。投与速度が速いと下痢を引き起こすことがあるため、注意します。薬剤を服用して治療している場合は、薬剤の副作用で下痢になっている可能性もあるため、しっかりとアセスメントすることが大切です。

【下痢の対策に関する記事を読む】
第1回 経管栄養剤による「排便コントロール」改善への取り組み【PR】
第2回 経管栄養剤による「排便コントロール」改善への取り組み【PR】
第3回 経管栄養剤による「排便コントロール」改善への取り組み【PR】
第10回 経腸栄養中に下痢が起こりやすいのはなぜ? 対処法は?

<口腔ケア>

 口を使って食事をしていないことにより唾液の分泌量が減り、自浄作用が低下している状態になります。経口摂取をしていなくても口腔ケアは必要です。

【経腸栄養に関連した記事を読む】
胃瘻・経管栄養患者さんって褥瘡と関係があるの?
第9回 在宅経腸栄養法

<禁忌>

 腸管の機能が著しく低下している場合や、循環動態が不安定であるなど腸管を使用することができない場合は禁忌となります。経腸栄養を既に行っていればすぐに中止し、静脈栄養への移行を検討します。

【合併症について確認する】
第12回 経腸栄養療法の合併症とその管理
第13回 胃瘻の管理と合併症
第14回 経管栄養時の水分投与と薬剤投与

〇造設の術式

●経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
 経皮内視鏡的胃瘻増設術(以下PEG)の適応は「自発的に経口摂取できず、4週間以上の生命予後が見込まれる成人および小児」です。また、4~6週間以上経鼻経腸栄養を行っている場合の多くもPEGの適応となります。ただし、腹水の貯留している患者さんは腹膜炎の危険性があるため禁忌です。

●経胃瘻的空腸瘻
 先に増設された胃瘻から新たなカテーテルを通し、先端を空腸に留置します。胃瘻では繰り返し逆流を起こしてしまうようなケースが適応となります。

●経皮経食道胃管挿入術(PTEG)
 食道を穿刺し、胃・十二指腸・空腸などの消化管内にチューブを留置します。腹部手術後などPEG造設が困難な場合に選択されます。

●開腹胃瘻造設術
 全身麻酔下で開腹による外科的な手術で胃瘻を造設します。

【造設術について確認する】
第5回 内視鏡的胃瘻造設術:PEG
第7回 PTEGと手術的空腸瘻造設術
第10回 外科手術と経腸栄養 -周術期経腸栄養療法-

経管栄養に関するガイドライン

 経腸栄養(経管栄養)に関するガイドラインに「静脈経腸栄養ガイドライン第3版」があります。このガイドラインは、日本静脈経腸栄養学会が編集したもので、静脈・経腸栄養を適性に実施するために作成されました。以下の、5章からなっています。

PARTⅠ 栄養管理の需要性および栄養投与経路選択・管理の基準
PARTⅡ 栄養療法の進め方と評価
PARTⅢ 小児の栄養管理
PARTⅣ 成人の病態別栄養管理
PARTⅤ 小児の病態別栄養管理

【ガイドラインを確認する】
静脈経腸栄養ガイドライン第3版

経管栄養の看護計画

 嚥下機能低下患者さんに対する経腸栄養法の看護計画を例として紹介します。

看護問題
#1 誤嚥リスク状態
#2 低栄養リスク状態

看護目標
・誤嚥に伴う状態変調を起こさない
・適切な栄養管理により身体機能が維持される

OP(観察計画)
・バイタルサイン
・意識状態(JCS、GCS)
・栄養状態:TP、Alb、皮膚状態など
・嚥下機能の状態:咀嚼力、嚥下の仕方、流延の有無など
・口腔内の状況
・消化器症状の有無:下痢、便秘、嘔気、腹部膨満感など
・血液データ
・画像データ

TP(ケア計画・援助計画)
・医師の指示にもとづく栄養剤の使用、速度管理を行う
・必要に応じて注入前後で気管内吸引を行う
・栄養剤の逆流を防ぐため、投与前にベッドを30°~90°の範囲でギャッチアップにする
・経鼻経管栄養の場合はチューブの位置が消化管以外に誤って入っていないか確認する
(注入時に①レントゲンによるチューブ位置の確認、②聴診法、③胃内容物の吸引など複数項目で確認する)
・背抜きや除圧など必要に応じて体位の工夫、安楽な環境を整える
・投与後に下痢、腹部膨満感などが出現した場合は医師に報告し、指示を仰ぐ

EP(教育計画)
・経管栄養の必要性を説明する
・投与後に何か症状が出現した場合は医療者に伝えてもらうように説明する

参考文献

1)丸山道生,他編:経管栄養マニュアル 第1版.文光堂,2012,p2‐15.70‐107.110-164
2)藤澤雅子,他著:介護職のための喀痰吸引・経管栄養ビジュアルガイド 第1版.メディカ出版,2016,p52‐79.118-125

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