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高齢者で増え続ける爪白癬は、完全治癒で再発を防ぎたいー多くの症例に必要な、塗り薬と経口薬の併用治療ー

4月19日、東京の大手町ファーストスクエアカンファレンスにて、佐藤製薬株式会社・エーザイ株式会社の共催による爪白癬に関するメディアセミナーが開催されました。白癬菌による感染症である白癬は、足裏や足の爪、手になどの皮膚に生じる、いわゆる水虫として知られていますが、特に爪に生じる爪白癬は完全治癒をしない例が多く、再発し感染を拡大させることが課題となっています。その治療法について、第一人者である埼玉医科大学皮膚科教授の常深祐一郎先生による講演をレポートします。


高齢者の4人に1人にみられる爪白癬。痛みがADLを下げることも

 白癬菌が足の皮膚に感染したものが足白癬(足水虫)で、爪に感染したものが爪白癬(爪水虫)です。国内の有病者数は、推定では、足白癬が4~5人に1人であるのに対し、爪白癬が10人に1人ではあるものの、高齢者に多く、60歳以上では4人に1人が罹患しているとされています1)

 爪白癬は、足白癬の白癬菌が爪の先端や側縁から爪の下に侵入・増殖して起こります。白癬菌が爪の主成分であるケラチンを栄養として増殖し、爪が白っぽく濁ったり、分厚くなったりします。分厚くなった爪は、周囲の組織や接触する足指を圧迫して潰瘍や痛みを生じるため、歩きにくくなるなど、高齢者の活動を制限する要因になります。ときには、足以外の背部や臀部などの皮膚に白癬菌の感染が広がって、広範な皮疹を生じることもあります。白癬菌の皮膚への感染は、湿疹と似ていますが、一般的な湿疹に対する治療では治らないため、検査によって白癬の診断を得て抗真菌薬を用いた適切な治療が行われる必要があります。
 

治療は外用薬と内服薬で行うが、完治まで治療を継続するのがむずかしい

 治療の原則は、薬剤によって白癬菌を除菌することです。外用薬と内服薬が併用されます。外用薬は、爪表面から塗り薬を浸透させて効果を発揮しますが、一部の特殊な病型や軽症例を除き、多くの場合、外用薬だけでは爪の深部での菌の増殖を抑えるのが不十分であるために、内服薬によって血流から爪の病変部に薬効を到達させます。

 ただ、爪白癬になっていた爪が治療によって多少きれいになっても、完全に除菌されているとは限りません。白癬菌の排除が不十分な場合、ほとんど全例で再発してしまいます。完全治癒には、白癬菌に感染した部分の爪が延び去り、爪の根元から全体が健康な爪に生え変わって、菌を完全に排除することが重要です。爪が生え変わるまでに6か月から1年以上がかかるため、治療は長期にわたります。実際、治療を途中で止めてしまう人が多いのも現実です。

 爪白癬の内服薬は、1990年代後半にイトラコナゾールとテルビナフィンの2薬が登場しており、それぞれ3カ月間のパルス療法、6カ月間連日内服という投与法で行われてきました。いかに治療を継続できるかが、爪白癬の完全治癒への課題といえます。

 昨年2018年7月には、新しくホスラブコナゾールが保険適用になっています。この薬は、1日1回3カ月の服用でよく、併用できない薬がほとんどないことが特徴です。昨今、ポリファーマシーが問題とされ、特に高齢者で内服薬を増やすことに懸念がある場合でも、活用されやすいといえます。2~3カ月服用を続けると、濁りのないきれいな爪が少しずつ現れてくるため、併用の外用薬を根気よく続けるモチベーションの維持につながります。
 

病型と新規治療薬に即したガイドラインは、遅くとも来年には公表予定

 爪白癬の病型は、主に5つに分けられます。最も多く見られるのが、爪の先端の皮膚との間から白癬菌が侵入したDLSO(遠位側縁爪甲下真菌症)で、爪白癬の半数近くを占めます。そのほか、爪が生えてくる根元から白癬菌が感染したPSO(近位爪甲下真菌症)、進行して爪全体に病変が及んだTDO(全異栄養性爪真菌症)、爪の表面から菌が侵入した部分だけが白く濁るSWO(表在性白色爪真菌症)、爪の縦方向に筋状に病変ができる楔(くさび)型が、それぞれ数~10数%あります2)

 このうち、軽症の遠位側縁爪甲下真菌症、および近位爪甲下真菌症は、外用薬のみで完治できる場合があります。これら以外は、内服薬の併用が必要です。また、楔型や肥厚が強い病変では白濁した爪を削り取るなどの処置も行います。

 爪白癬の標準治療については、現在日本皮膚科学会が、2010年代に登場した外用薬(エフィナコナゾール、ルリコナゾール、および経口薬の活用を反映した「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」の改訂作業を行っており、遅くとも2020年中には公表される予定です。

まずは足白癬にかからないことが大切。菌をもらわない生活上の注意点は

 白癬菌が最初から爪に感染することはなく、足白癬が時間をかけて爪に感染し保持されて、足や身体への再発を繰り返します。爪白癬の予防は、まず足白癬にかからないようにすることが大切です。白癬症は、足水虫をもつ人の足とスリッパやバスマットなどを通して接触することで感染します。白癬菌のついた足の皮膚が剥がれ落ちてバスマットなどに付着し、それを踏むことで同居人に感染する例が多いと言われています。家族に水虫があるときは、バスマットの共有を避けるようにします。バスマットは、洗濯すれば白癬菌を排除できます。スポーツジムやサウナなどでサンダルを裸足で共有することもあるでしょう。半日から1日以内に足を洗えば、白癬菌への感染は防げるので、家に帰ってから足を洗うようにします。

 足白癬になってしまった場合には、病院での検査のうえ、薬をもらって治療をするのはもちろんですが、足を洗う際には、ただれた皮膚を無理に擦り取ると傷ができて感染を広げやすくするので、せっけんの泡でやさしく洗うようにします。足の蒸れを防ぐことが大切であるため、5本指ソックスを利用するなどして通気性を確保するとよいでしょう。


【引用文献】
1) 渡辺晋一ほか:本邦における足・爪白癬の疫学調査成績.日本皮膚科学会雑誌.2001;111(14):2011-2012.
2) 常深祐一郎:爪白癬の病型と重症度ごとの治療薬選択と治療薬に対する評価のアンケート調査.日本臨床皮膚科医会雑誌.2016;33(5):630-636.

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