【連載】COPDとは全く違う! 知ってる? 間質性肺炎の看護

間質性肺炎の薬物療法|治療薬の種類と特徴

執筆 畔柳弥生

大阪赤十字病院 薬剤師

監修 南雲 秀子

東京医療学院大学保健医療学部看護学科助教 看護師/米国呼吸療法士(RRT) /保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

目次


薬物療法には看護師のサポートが不可欠

 間質性肺炎の治療に用いられる薬剤には、副作用や相互作用など注意が必要なものが多くあります。そのため、主治医や薬剤師から説明されていても一度や二度では理解が難しく、繰り返しの説明や生活面で注意が必要なこともあります。

 また、間質性肺炎は治癒が難しく、徐々に進行する疾患であるため、薬物治療の効果を実感することは難しいかもしれません。しかし、治療しなければさらに進行します。
 
 治療の継続や副作用の早期発見には看護師のサポートが不可欠です。「薬のことを理解するのは難しい」という、看護師のみなさんの声をよく耳にしますが、ぜひこの機会に知識を深めていただければと思います。

安定期に使用する治療薬

抗線維化薬

 特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の病態において、肺の線維化は慢性炎症自体に起因するものではなく、繰り返す肺胞上皮障害と異常な創傷治癒の結果として進行していくことが明らかになっています。

 そのため、抗炎症作用を有する薬剤よりも、抗線維化薬の導入が必要であると考えられるようになり、「特発性肺線維症の治療ガイドライン2017」でも、慢性安定期には抗線維化薬を投与することが提案されています1)

【ピルフェニドン(ピレスパ®)】
●用法・用量
 1回200mgを1日3回から開始し、1回600mgまで漸増
 
●適応
 特発性肺線維症
 
●作用機序
 TGF-β産生抑制が主要な機序となります。IFN-γの発現を維持し、Th1/Th2バランスをTh2にシフトしないようにすることで、抗線維化作用を示すとも考えられます。

●主な副作用と看護上の注意点
 光線過敏症、食欲不振、胃不快感、悪心、倦怠感、眠気、γ-GTP上昇が主な副作用です。

 最も頻度の高い光線過敏症(51.7%)の予防・対策には「可能な限り日光を防御すること」が重要になります。そのため外出時には、「天候にかかわらず長袖の衣服や帽子などを着用してもらう」「日傘や日焼け止め効果の高いサンスクリーン剤〔日焼け止め(SPF50+、PA+++以上)〕を使用してもらう」といった指導をすることが必要です。

 サンスクリーン剤の塗り方のポイントなどは、メーカーから出ている写真入りのパンフレットが参考になります。ちなみに、首筋、耳、うなじ、腕の内側、手の甲、指先、すね、ふくらはぎ、足の甲などは塗り忘れしやすいため注意が必要です。さらに男性の場合、日焼け止めを塗る習慣がない人も多いので、必要性を理解してもらうための説明も大切です。
 
 また、喫煙は本剤の血中濃度を低下させ、効果が減弱するため、禁煙指導も必要です。

●その他
 高薬価(200mg:¥695.7/錠)であるため、利用できる患者には「難病医療費助成制度」や「高額療養費制度」といった助成制度を案内するとよいでしょう。

【ニンテダニブエタンスルホン酸塩(オフェブ®)】
●用法・用量
 150mgを1日2回
 
●適応
 特発性肺線維症
 
●作用機序
 血小板由来増殖因子受容体(α型、β型)、線維芽細胞成長因子受容体(1型、3型)および血管内皮細胞増殖因子受容体(1~3型)を阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬です。炎症過程の抑制のみならず、線維化反応も抑制します。

●主な副作用と看護上の注意点
 肝酵素上昇、下痢、食欲減退、悪心が主な副作用です。

 2018年2月に、メーカーより「特発性肺線維症(IPF)患者におけるオフェブ®カプセル投与中の重篤な肝機能障害と定期的な肝機能検査のお願い」という注意喚起が出ています。これによると、肝関連事象の多くは投与開始後3カ月以内にみられています。そのため、定期的に肝機能検査がされているかの確認が重要です。また、創傷治癒を遅らせる可能性があるため、手術時は投与を中断することが望ましいとされています。手術前には休薬の有無の確認が必要です。

 下痢や食欲減退、悪心の対策としては「一度にたくさん食べるのを避け、少量に分け頻回に食べる」「下痢によって失われた水分を補給する。室温に戻した水分をゆっくり飲む」「揚げ物などの脂っこい物、刺激の強い物などを避ける」「ゆっくりと飲食し、消化しやすいようによく噛む」「熱い物は冷ましてから食べる(匂いが気にならなくなる)」「食後は椅子などに腰をかけて安静にする(食後2時間は横にならない)」「締め付けの少ない洋服を着る」などがあります。

●その他
 高薬価(100mg:¥4,382.9/cap、150mg:¥6,574.4/cap)であるため、ピルフェニドンと同様に「難病医療費助成制度」や「高額療養費制度」といった助成制度を案内するとよいでしょう。

ステロイド

 抗線維化薬以外の主な薬物療法の1つにステロイド療法があります。
 
●適応
 びまん性間質性肺炎(肺線維症)
 
●作用機序
 ステロイドは脂溶性のため、細胞膜を容易に通過し、細胞質内の糖質ステロイドレセプターと結合して核内に移行します。この複合体がAP-1などの転写因子を干渉し、炎症性サイトカインを抑制します。さらに、炎症を促進、あるいは抑制する遺伝子周辺のヒストンの脱アセチル化、あるいはアセチル化により抗炎症作用をもちます。

●主な副作用と看護上の注意点
 感染症の誘発、骨粗鬆症、糖尿病の誘発・悪化、脂質異常症・動脈硬化、精神病、副腎不全、消化性潰瘍、白内障・緑内障、異常脂肪沈着(中心性肥満、満月様顔貌、野牛肩)が主な副作用です。
 
 また免疫抑制作用により、日和見感染症のニューモシスチス肺炎などを発症することがあり、予防のために、多くはスルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ®)を服用します。また、骨粗鬆症や消化性潰瘍の予防内服を多くの場合行います。
 
 注意点として、長期にわたり生理量を上回るステロイドの投与を受けている患者では、negativefeedbackにより視床下部-下垂体-副腎系が抑制され、内因性コルチゾール産生が低下しています。そうした状態でステロイドを急に中止すると副腎不全が生じます。そのため、長期にステロイドの投与を受けている患者に対しては、特に怠薬や自己判断での減薬・中断をしないよう指導します。

免疫抑制剤

 添付文書上、タクロリムス(プログラフ®)カプセルのみ「多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎」に対して保険適用(IPFには適用なし)があり、ほかの薬剤は間質性肺炎に対しては保険適用外となります。

【アザチオプリン(イムラン®)】
●用法・用量
 2~3mg/kg/日(保険適用外)
 
●作用機序
 代謝拮抗薬で、肝臓で6-メルカプトプリンに変換され、生理活性を有するようになります。細胞周期に特異的に作用し、DNA合成期に作用してプリン合成を阻害するとともに、T細胞の増殖抑制作用があります。
 
●主な副作用と看護上の注意点
 骨髄抑制、肝機能障害、感染症が主な副作用です。感染症に関しては本剤投与中に水痘または帯状疱疹に感染すると、致命的な経過をたどることがあると添付文書に記載されています。そのため、本剤投与前に水痘または帯状疱疹の既往や予防接種の有無を確認するとともに、既往のない患者においては、感染を極力防ぐよう常に注意し、十分な配慮と観察を行います。また、水痘以外に、B型肝炎ウイルスの再活性化にも注意が必要です。
 
●その他
 アザチオプリンは、フェブキソスタット(フェブリク®)、トピロキソスタット(トピロリック®、ウリアデック®)との併用によって、骨髄抑制などの副作用が増強する可能性があり、併用禁忌となっています。また、発症するおそれがあるため、生ワクチンも禁忌となっています。妊娠に関しては、動物実験で催奇形性が報告されているため、避妊の重要性への理解を促し、実施してもらうことも重要です。

【シクロホスファミド(エンドキサン®)】
●用法・用量
 1~2mg/kg/日(保険適用外)
 
●作用機序
 アルキル化剤に分類され、DNA、RNA、蛋白同士の共有結合や架橋結合を促進し、DNAの複製や転写を阻害することで細胞死や細胞内機能を変化させます。免疫抑制作用は用量と期間に依存し、B細胞とT細胞を減少させます。
 
●主な副作用と看護上の注意点
 骨髄抑制、肝機能障害、悪心・嘔吐、食欲不振、脱毛、出血性膀胱炎が主な副作用です。
 
 脱毛の程度は個人差があり、ほとんど気づかないような場合もあれば、強く現れる場合もあります。洗髪はやさしく行い、気になる場合は髪を短くしたり帽子を被るよう伝えます。女性は特に気にする人が多いため、心のケアも必要となることがあります。
 
 出血性膀胱炎は、膀胱に尿を滞留させず頻回の排尿を心がけることが予防において重要です。そのため、排尿は我慢しないよう伝えます。なお、発現時期は、1日100~175mgの投与で20~30カ月後が多いと報告されています。

【シクロスポリン(ネオーラル®)】
●用法・用量
 3mg/kg/日(保険適用外)
 
●作用機序
 カルシニューリン阻害薬であり、T細胞機能を特異的に抑制します。免疫系への作用は多岐にわたりますが、古典的にはヘルパーT細胞におけるIL-2などのサイトカイン発現の転写レベルの抑制が重要な作用です。T細胞におけるIL-2の発現には、T細胞特異的転写因子(nuclear factor of activatedTcells:NF-AT)の脱リン酸化が必要ですが、NF-ATの脱リン酸化を担うカルシニューリンを不活性化することによりIL-2遺伝子転写を阻害します。
 
●主な副作用と看護上の注意点
 腎障害、多毛、血圧上昇、悪心・嘔吐、振戦、糖尿病・高血糖、高尿酸血症、高脂血症が主な副作用です。なお、トラフ濃度(薬物を反復投与したときの定常状態における最低血中薬物濃度)が高くなると、副作用発現頻度が高くなるため、100~150ng/mLになるよう調節します。トラフ濃度は服薬直前の値となるため、採血時間には注意が必要です。

●その他
 ピタバスタチン(リバロ®)、ロスバスタチン(クレストール®)と併用すると、これらの薬剤の血中濃度が上昇し横紋筋融解症などの副作用の発現頻度が高くなるため、併用禁忌となっています。生ワクチンも発症するおそれがあるため、併用禁忌となっています。

 ほかにも注意点があります。併用禁忌薬や併用注意薬があるシクロスポリンは、相互作用が多い薬剤であり、薬剤以外にもグレープフルーツなどの柑橘類にも注意が必要です。グレープフルーツはさまざまな薬剤との相互作用があることで有名な果物ですが、ほかの柑橘類にも薬剤の代謝に影響を及ぼすものがあります。シクロスポリンや後述するタクロリムスなどの代謝を阻害し、血中濃度を上げる可能性がある柑橘類を表に示します。

血中の濃度を上げる可能性のある柑橘類

【タクロリムス(プログラフ®)】
●適応
 多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎

●作用機序
 シクロスポリンと同様にカルシニューリン阻害薬であり、薬理作用はシクロスポリンとほぼ同じです。

●主な副作用と看護上の注意点
 腎障害、肝機能障害、血圧上昇、振戦、糖尿病・高血糖、脂質異常症、高カリウム血症が主な副作用です。通常、目標血中トラフ濃度を5~10ng/mLとして調節します。シクロスポリン同様、採血タイミングに注意が必要です。

●その他
 スピロノラクトン(アルダクトンA®)、カンレノ酸カリウム(ソルダクトン®)、トリアムテレン(トリテレン®)と併用すると高カリウム血症が起こりやすくなるため、併用禁忌となっています。生ワクチンも発症するおそれがあるため、禁忌となっています。また、前述のシクロスポリンと同様に、柑橘類の摂取にも注意が必要です。

その他の治療薬

【N-アセチルシステイン(ムコフィリン®)】
●作用機序
 抗酸化作用を有するとともに、直接活性酸素のスカベンジャーとして作用し、さらには炎症性サイトカインの産生を抑制することで抗炎症・抗線維化作用を発揮すると考えられています。

*スカベンジャーとは、抗酸化物質のことであり、活性酸素を無害なものに変える働きをするものをいう

●主な副作用と看護上の注意点
 構造に硫黄が含まれており、軽い臭気(硫黄臭)の副作用が出現することがあります。

イラスト/カミヤ マリコ


引用・参考文献

1) 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班 特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会編:特発性肺線維症の治療ガイドライン2017.南江堂,2017.
●各薬剤の添付文書、インタビューフォーム、ホームページ
●川合眞一,編:その患者・その症例にいちばん適切な使い方がわかる ステロイド療法のエッセンス.月刊薬事7月増刊号 58(10);2016.
●杉山幸比古,編 :特発性間質性肺炎の治療と管理.克誠堂出版,2013.
●厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究」班 特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会編:特発性
肺線維症の治療ガイドライン2017.南江堂,2017.
●日本医薬情報センター,編:重篤副作用疾患別対応マニュアル.日本医薬情報センター,2011.
●浦部晶夫,他編:今日の治療薬2018 解説と便覧.南江堂,2018.
●大日本住友製薬HP内:カル・グレ Ca拮抗薬とグレープフルーツの相互作用Q&A.(2018年4月26日閲覧)https://ds-pharma.jp/gakujutsu/contents/calgre/


この記事はナース専科2018年7月号より転載しています。

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