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【連載】今こそ、 訪看デビュー 働き方が選べる!スキルが上がる!

なぜ、今、訪問看護なの?①

執筆 小沼絵理

日本訪問看護財団 「訪問看護eラーニング」担当

目次


訪問看護(在宅医療)が必要とされる背景

1 超高齢社会による在宅看取りのニーズの高まり

 日本の少子高齢化が過去に例を見ないスピードで進行し、超高齢社会となった今、2025年問題に代表されるような要介護高齢者の増加が社会的課題となっています。高齢者の増加は死亡数者の増加につながり、年間の死亡者数は、今後10年足らずで20万人以上増加するとの推計があります1,2)。それに伴い、現在死亡場所の大半を占めている病院や老人ホームなどの不足が予想されており、在宅看取りのニーズが高まることは必然です。
 
 さらに、病院の在院日数の短縮*1による医療依存度の高い在宅療養者や障害児・者の増加4)、なかでも従来の重症心身障害児・者の定義に当てはまらない医療的ケア児の増加5)が新たな課題として注目されています。

 また、家族構成も時代とともに変化し、「単独世帯および夫婦のみの世帯の増加」「三世代世帯の減少」「平均世帯人員の減少」が進行しています。介護状況をみると、「高齢者が高齢者を介護する老老介護」「認知症の人が認知症の人を介護する認認介護」「1人の介護者が複数人を介護する多重介護」「育児と介護を同時に行うダブルケア」「男性介護者の増加」「18歳未満で介護を行うヤングケアラーの存在」「介護離職」など、家族介護力に関するさまざまな課題が指摘されています6)
 
 しかし、このような課題を抱えながらも、国民の多くは、身体機能が低下しても自宅で生活したい7)、人生の最期を自宅で迎えたい8)と望んでいます。

*1  一般病院の平均在院日数は、この20年で33.5日から16.2日と半減している3)

2 在宅ケアニーズの高まりで訪問看護へのニーズも高まる

 このように、①要介護高齢者の増加、②死亡者数の増加、③在院日数の短縮による医療依存度の高い在宅療養者の増加、④家族構成の変化に伴う家族介護力の低下、⑤国民の在宅療養に対する意識といった複数の要因により、在宅ケアニーズが高まり、それを担うサービスの1つである訪問看護に対するニーズも同様に高まっているのです。
 

国による在宅療養を支援するための政策・施策

 要介護高齢者や障害児・者の在宅療養を支援するために、国はさまざまな施策を打ち出しています。なかでも、2000年に施行された介護保険法と2011年に提言された地域包括ケアシステムが、特筆すべきポイントです。

1 介護保険法施行により増える訪問看護の利用

 介護保険法は、増加する高齢者へのサービス提供の適正化を目指し、老人福祉法と老人保健法の再編により誕生した法律です。
 
 介護保険法の目的は、①保健医療福祉サービスの統合と一体的な提供、②サービスを選ぶ権利の保証、③自立支援、④在宅ケアの重視、⑤民間活力の導入(多様なサービスの提供)、⑥社会的入院の是正です。同法の施行により、要支援者・要介護者に対する訪問看護は、介護保険法に基づくサービスと位置づけられ、利用者*2との契約によって看護の提供を行うこととなりました*3

 こうして、介護保険法施行により介護の社会化が進められましたが、その後も要介護高齢者は著しく増加し、2000年に約184万人だった介護保険サービス受給者は、2015年には約521万人と2.8倍にも上っています9)。訪問看護ステーションの利用者数は医療保険適用を含むものの、同様に20万人から47万人へと増加しています10)

*2 介護保険法では「患者」ではなく「利用者」と呼ぶ
*3 要介護認定を受けていない対象者には医療保険が適用される

2 地域包括ケアシステムにおける訪問看護の役割

 地域包括ケアシステムは、団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題への対策として構築が進められています。持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律では、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と定義されています。
 
 具体的には、中学校区を念頭におき、おおむね30分以内に駆けつけられる日常生活圏において、「住まい」「生活支援」「医療」「介護」「予防」という5つの取り組みが、療養者のニーズに応じて適切に組合わされます。入院、退院、在宅復帰を通して、サービスが切れ目なく一体的に提供されるというものです(図)。

地域包括ケアシステムの構成要素
 
 訪問看護は、「住まい」に訪問し、「生活」をみながら「介護」と連携し、「医療」を提供し、さらに「予防」的視点をもって看護サービスを提供します。それはまさに、地域包括ケアシステムにおいて要ともいえる役割を担っているのです。


引用文献

1)厚生労働省:平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況.(2018年7月19日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/
geppo/nengai17/dl/gaikyou29.pdf
2)国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成29年推計).(2018年7月19日閲覧)https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29gaiyou.pdf
3)厚生労働省:平成28年(2016)医療施設(動態)調査・病院報告.(2018年6月22日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/16/dl/02
02.pdf
4)厚生労働省:平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査結果).(2018年6月22日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsuchousach28.pdf
5)田村正徳,他:「医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究」の中間報告,埼玉医科大学総合医療センター.(2018年6月22日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000147259.pdf
6)厚生労働省:平成28年国民生活基礎調査.(2018年7月19日閲覧)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450061
7)内閣府:平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果.(2018年6月22日閲覧)https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/pdf/kourei
h273-6.pdf
8)厚生労働省:平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査 結果(確定版).(2018年6月22日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000200749.pdf
9)厚生労働省:平成27年度介護保険事業状況報告.(2018年7月19日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/15/dl/h27
point.pdf
10)厚生労働省:平成13年および平成25年介護サービス施設・事業所調査.(2018年7月19日閲覧)(平成12年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service00/index.html (平成25年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service13/index.html


この記事はナース専科2018年9月号より転載しています。

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