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【連載】今こそ、 訪看デビュー 働き方が選べる!スキルが上がる!

【訪問看護】キャリアアップ重視派|あなたは どのタイプ? 働き方をみてみよう!①

取材 丸田恵子

訪問看護ステーションSTORY学芸大学

病院はラダーがあるほか、上司や先輩といった身近なモデルケースがあり、看護師としてのスキルアップやキャリアパスが比較的イメージしやすい状況といえます。一方で、訪問看護師がまわりにほとんどいないために、そのキャリアの重ね方をイメージしにくいという人が多いでしょう。そこで、現場で訪問看護師として活躍するかたわら、大学・大学院で知識を磨き、訪問看護ステーションを開設した丸田恵子さんのケースをご紹介します。


目次


【丸田恵子さんのProfile】
2000年 訪問看護ステーション勤務開始
2010年 日本赤十字看護大学3年次編入
2012年 聖路加国際大学在宅看護学CNSコース入学
2013年 株式会社STORY設立
2014年 訪問看護ステーションSTORY学芸大学開設
2015年  事務所移転 まちかど保健室 Dカフェまちかど保健室事業開始
2016年 在宅看護専門看護師資格取得

結婚・出産を経て訪問看護師として復職

 丸田さんが訪問看護に携わり始めたのは、介護保険制度がスタートした2000年。当時、結婚・出産を機に休職中でしたが、ケアマネジャーの資格を取得し、復職を決めました。まだ子どもが小さいこともあって、夜勤のない訪問看護を選びましたが、休職前、リハビリテーション病院に勤務していたことから、もともと訪問看護に興味があったと話します。
 
 「病院に勤務していたころは、医師、リハビリスタッフと一緒に、退院予定の患者さんの自宅を訪問して、住宅改修の提案など環境整備を行っていました。ですから、退院後の患者さんの生活がみられるというのは魅力でした」
 
 入職したのは、病院併設の大規模な訪問看護ステーション(以下、ステーション)。決め手になったのは、ステーションに託児所があったこと、そして所長のブログを読んで、その人柄にひかれたことでした。まだ介護保険のサービスも充実していなかった時代で、訪問看護師はケアだけではなく、入浴介助から洗濯、掃除まで、利用者の生活を支えるために、ありとあらゆることをする必要があったと丸田さんは振り返ります。

家族支援を深めたいと看護大学に編入

 その後、転居を機に、都内のステーションに転職したころには、訪問入浴やヘルパーなど在宅サービスも広がっていました。すると、丸田さんのなかで疑問が生じてきました。
 
 「医療処置にかかわるサービスが少なく、看護師は何をやっているのだろうと思い始めました。介護と看護の違いなど、訪問看護師の役割について、あらためて考えるようになったのです」
 
 そんななか、忘れられない経験となったのが90歳代の女性利用者への看護でした。2人の娘がずっと交代で介護をしてきました。容態が悪化し、入院となったときに、丸田さんは娘たちに家でもみられると提案しましたが、返ってきたのは『今まで精一杯やってきたので大丈夫です』というひと言でした。
 
 「この言葉を聞き、在宅が絶対ではなく、施設や病院に行くというのも家族としては納得できるタイミングがある。そこまで看護師は根気よくかかわって、家族が出した結論に『本当によく頑張りましたね』と言えることが大切なのではないか。そうした家族支援が訪問看護師の重要な役割であることに気づいたのです」
 
 そこで、もう一度看護を学びなおして家族支援を深めようと、日本赤十字看護大学の3年次に編入。通学のかたわら、ほかのサービスもみてみたいと、訪問入浴やデイサービスの仕事を経験しました。
 
 「訪問入浴では介助技術などを学び、デイサービスではリハビリテーションやリクリエーションなどを通し、訪問看護ではかかわらない元気な高齢者の姿をみることができました。そのような場で、看護師としてどうかかわるか、とても勉強になりました」

 大学では、保健師の資格を取得。実習で行政における保健師の役割が理解できたとともに、地域の見方を学んだと話します。

学びをさらに深めるために在宅看護のCNSコースへ

 さらに丸田さんは、訪問看護そのものを再度学びたいと聖路加国際大学の在宅看護のCNS(専門看護師)コースに進学しました。

「大学院での学びは刺激的でした。指導教授の山田雅子先生は、看護部長、訪問看護ステーション、行政を経験された方で、管理面の視点、また国や制度の動きを学ぶことができました」


聖路加国際大学では山田雅子教授に師事。認知症患者やその家族への支援について学びを深めた

 大学院では、CNSと認定看護師の違いも明確になったと話します。

 「CNSには、訪問看護の技術だけではなく、ないものをつくり上げていったり、課題をみつけて解決していくことが求められます。しかも、病院のように同じ目標や志をもった1つの組織ではなく、さまざまな考え・立場をもった事業所と協力しながら、課題解決していかなければなりません。その方法論を演習や実習を通して学びました」

 プレゼンテーションの技術、会議の進め方、公用文書の書き方など、新しい学びを吸収する喜びを感じながらも、子育てをしながらの勉強はやはり苦労もあったと話します。
 
 「演習では、週に2~3回、自分が調べてきたことを発表し、レポートも多くて、期限を守るのが大変でした。早朝や子どもたちが学校に行っている間に資料をまとめるなど、効率よくこなせるように工夫していました」
 
 実習では、数々の診療所やステーションを経験し、丸田さん自身の学びのテーマであった家族支援の知識も深まっていきました。特に、軽・中度の認知症患者やその家族に対する訪問看護師のかかわり方について注目しました。軽・中度の認知症患者は、要介護度が低く、利用できるサービスに限度があることから、ケアプランに訪問看護が組み込まれることが非常に少ないという現状があります。しかし、丸田さんは認知症と診断された直後から、看護師の介入が必要だと強調します。

 「認知症では、さまざまな周辺症状が現れます。特に初期のころは、本人も家族も不安で感情的になりがちです。また家族はどう対応していいかわからず、先の見通しも立ちません。この時期に、家族関係がこじれてしまうと、その後の介護に大きく影響します。ともすれば、家族は患者さんが亡くなったあと、十分な介護ができなかったことを後悔することもあります。だからこそ、本当は初期の段階から、訪問看護師による対応方法の指導や本人や家族に対する精神的な支援が必要なのです」

認知症の訪問看護の必要性を実感しステーションを開設

 丸田さんは修士論文で、実際に認知症の訪問看護に取り組んでいるステーションの看護師にインタビューし、実践例をまとめました。そして、軽度の時期から認知症患者への訪問看護ができるステーションを立ち上げることを決意し、半年間かけて入念に準備を進めました。

 「自己資金だけで開業しようと考えていたので、絶対に失敗したくありませんでした。先輩からのアドバイスをはじめ、いろいろなステーションの成功例や失敗例を参考にしました。また、大学院で学んだことにより、診療報酬や介護報酬の改定など、時代の流れが予測できるようになったことも、開業時や経営していくうえで、とても役に立っています」

 そして、2014年に最低限の常勤換算2.5人の体制で開業。認知症に特化したいという思いはあるものの、それだけでは経営が成り立たないため、小児、精神、難病、ターミナルケアなど、あらゆる疾患や病期の看護を受けられるように体制を整えました。

 続いて、2015年には、目黒区の事業である認知症カフェ(Dカフェ)の1つとして、「Dカフェ・まちかど保健室」をステーション内に開設しました。

 「Dカフェの大きな効果は、利用者さんの社会参加につながること。Dカフェでのさまざまなイベントにかかわることで、自分の役割ができた気がすると言ってくれる利用者さんもいます。それは、訪問看護だけでは得られなかった成果です」


健康・病気・介護について、誰でも気軽に相談できる「Dカフェ・まちかど保健室」を月1回(毎月第4月曜日)開催している

看護の質を向上させてサービスを充実していくことが目標

 今後は、訪問診療の医師たちと協力して、街のなかに保健室を増やしていきたいと丸田さんは話します。 
 
 「例えば、認知症と診断されたら、訪問看護や家族会についての情報が得られ、認知症の家族支援ができる場を増やしていきたいですね」
 
 さらに、現在の目標について、次のように話します。 
 
 「現在は経営安定のために、ステーションの大規模化がうたわれていますが、私は小規模なまま、看護の質を上げて、サービスを充実させていきたいと考えています」

 看護の質を上げるためには、記録が重要だと丸田さんは指摘します。看護記録は基礎教育での指導も十分といえず、電子カルテの普及もあって、ちゃんと記録できる看護師が少ないと感じています。
 
 「S(患者さんの主観的情報)とO(客観的情報)を捉えて、そこからアセスメントを的確に行わなければ、適切な看護計画にはつながりません。つまり、症状のマネジメントがしっかりとできないと、記録も書けないのです。これは、病院でも訪問看護でも変わらない看護師に必要なスキルだと思います」


訪問前後やお昼どきに、申し送りや気になったことなどをスタッフ同士で共有


看護ケア計画や報告書の作成も重要な仕事の1つ

 特に1人で訪問する在宅では、ほかのスタッフや他施設との情報共有ツールとして記録は重要です。しかも、訪問看護計画書や訪問看護報告書、訪問看護記録など、さまざまな必要書類があり、提出する先が医師かケアマネジャーかによっても書き方は異なります。丸田さんは、スタッフに対して記録の重要性を伝え、書き方を指導してきました。

 「訪問看護の基本は医療的な症状のマネジメントができること。それによって、生活に影響している問題を解決するのが私たち訪問看護師の役割です。これからも、症状マネジメントができ、それにもとづいた記録ができるスタッフの育成に努めていきたいと思っています」
 


Q.休日はどのように過ごしていますか?
 基本的に土日が休みですが、ターミナル期や点滴が必要な利用者さんがいれば、訪問を行っています。休日は、畑仕事やガーデニング、書道など、看護とは関係のない趣味の時間を過ごすことで、頭を切り替えるようにしています。ちなみに、今年はスイカを収穫しました。

Q.ステーションで実施しているイベントを教えてください!
 子育て中のスタッフが多いので、カンファレンスを行ったあと、みんなでランチを食べにいくことで、定期的にコミュニケーションを図れるようにしています。
 
 利用者さんやご家族と一緒に、お花見会やクリスマス会を開くこともあり、スタッフと利用者さんたちの交流を深める場になっています。利用者さんの誕生日には、ご家族と一緒の写真を撮影し、それをもとにお祝いカードやクリスマスカードをつくり送っています。そんなささやかなものでも利用者さんが喜んでくれるのがうれしいですね。


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訪問看護ステーションSTORY学芸大学
■所在地:東京都目黒区中町2-31-10
■体制:24時間対応・ターミナルケア対応

東京・目黒区全域と世田谷区の一部の地域において、小児・精神・がん・認知症など幅広い年齢層、あらゆる疾患の訪問看護を提供。地域の人々が気軽に相談できる場、またコミュニティの場として、まちかど保健室(Dカフェ)を併設している。


この記事はナース専科2018年9月号より転載しています。

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