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【連載】今こそ、 訪看デビュー 働き方が選べる!スキルが上がる!

【訪問看護】ワーク・ライフ・バランス 重視派|あなたは どのタイプ? 働き方をみてみよう!②

取材 竹内真由美

おもて参道訪問看護ステーション

訪問看護は基本的に土日が休みで夜勤もなく、子育てとの両立がしやすい環境といえます。とはいえ、実際に目にしてみないと、信じることは難しいかもしれません。そこで、2人のお子さんを育てながら訪問看護師として活躍する竹内真由美さんに、仕事の進め方や時間の使い方をはじめ、仕事と子育てを両立するなかで直面した悩みと、どのように解決しているかなどをお話しいただきました。


目次


【竹内真由美さんのProfile】
2002年 東京慈恵会医科大学付属第三病院外科入職
2006年 がん研有明病院緩和ケア科配属
2012年 がん研有明病院外来配属
2014年 おもて参道訪問看護ステーション勤務

“もっとゆっくり患者さんと接したい”という思いから訪問看護に

 訪問看護に携わる前は、大学病院で約4年、その後、がん専門病院の緩和ケア病棟に約6年勤務し、出産を機に異動した外来で約2年間の経験を積んできたという竹内さん。外来勤務にやりがいを感じつつも、「もっとゆっくり患者さんと接したい」という思いが強くなったといいます。

 「緩和ケア病棟では、訪問看護に移る先輩も多く、私も患者さんが人生を終えるまで、地域で寄り添っていきたいと思うようになりました」
 
 悪天候で電車が止まり、子どもを保育園に迎えにいけなかった経験をきっかけに、家から自転車で通える位置にある、おもて参道訪問看護ステーションで働き始めました。その後、2人目の子どもを出産しましたが、育休を経て認定こども園に子どもを預けられるようになった時点で、すぐに復職しました。

 「医療は刻々と進歩しています。少しでもブランクが生じるのが不安で、早く復職したいと思っていました」と竹内さん。現在は、夫と小学2年生の長男、2歳の次男という4人家族のなかで、妻と母親の役割を果たしながら訪問看護師を続けています。

所長の言葉とスタッフの協力が支えに

 竹内さんの勤務シフトは、平日の9時から17時までで、常時7~8名の利用者を受けもっています。子育て中であることから、夜間のオンコールは担当していません。勤務後は子どもを迎えにいき、ひと息つく間もなく育児と家事をこなすという時間に追われる日々を送っています。ですが、看護の仕事が大好きな竹内さんは「大変だと思っても、つらいと思ったことはない」と話します。そんな竹内さんですが、初めのうちは気持ちの葛藤もありました。

 「どうしても時間内に仕事をやりきれなかったり、子どもが熱を出して仕事を休まざるを得なかったりすることがあります。そのときは、周りのスタッフに迷惑をかけてしまうので、とても申し訳なく思っていました。それに、仕事に100パーセント力を入れられないというのもストレスでした」

 そんなとき、竹内さんを救ってくれたのが所長の言葉でした。

 「私と同じく2人の子育て経験のある所長が『今、一生懸命やらないといけないのは子どもを育てること。仕事はほかのスタッフが代われるけど、子どもにとってママはあなた1人しかいないのよ』と言ってくれました。この言葉を聞いて、子育てがひと段落すれば、仕事に専念できるようになる、それまではこれでいいんだと思えるようになりました」
 
 産休・育休を経て復職したときも、不安になっている竹内さんを「大丈夫だよ」と温かく励まし、休職する前に担当していた利用者を中心に受けもつよう配慮してくれたといいます。そのため、竹内さんはスムーズに復職を果たすことができました。周りのスタッフも協力的で、入職してからずっと竹内さんを支えてくれていると話します。

 「1人で頑張っていても、どうにもならないことがあります。『私は、周りの環境に恵まれている』と実感しています。感謝のひと言に尽きます」


わからないことや不安なことがあれば、まわりのスタッフに相談。1人で考えるよりも解決の糸口を早く見つけることができ、情報の共有にもつながる

思わず提案したケアが家族にとって忘れられないエピソードに

 利用者や家族とのかかわりも竹内さんの支えとなっています。

 「育休から復職したときに、利用者さんから『おかえり』『待っていたよ』と声をかけてもらったのが、とてもうれしかったですね」
 
 中でも強く印象に残っているのが、末期がんの女性Aさんのことです。抗がん薬治療のために入院し、在宅に戻って初めて訪問したとき、Aさんから「足がベタベタして気持ちが悪い」という訴えがありました。まだ訪問回数が少なく、十分な信頼関係が築けているとはいえない時期でした。入院中は常時点滴が入っているため、入浴ができなかったことを察知した竹内さんは、「今後はお風呂も入っていきましょうね」とAさんに声をかけました。それでもずっと足を気にしているAさんをみて、竹内さんは思わず「バケツがあれば、足は洗えるので洗いましょうか」と提案していました。すると、ご主人がバケツにお湯を汲んできてくれて、Aさんの足を洗うことができたのです。
 
 「足を洗っているとき、ずっと『気持ちがいい』とおっしゃってくれました。この言葉を聞いたとき『これが看護なんだ!』と思いました。病院では、どうしても治療が優先されます。でも在宅では、物品がなくても利用者さんの安楽を優先してケアをすることが大切だと気づきました」

 それからのAさんは、訪問するたびに子育てのこと、子どもとの思い出などいろいろなことを話してくれたそうです。竹内さんも共感することが多く、子育ての経験が利用者とのコミュニケーションに活きていることを実感しました。

 その後Aさんが亡くなり、数カ月を経てご主人のグリーフケアに訪問したときに、ご主人が、足を洗ったことが印象的だったと話してくれました。

 「ご主人はこれからも1人で生きていかなければなりません。そんなご主人にとって、自分が咄嗟に行ったケアが思い出に残るエピソードとなり、本当によかったと思いました」

 そうした数々の利用者と家族とのかかわりを経て、「病気をもちながら生活していく利用者さんとその家族を支えていきたい」と、竹内さんは訪問看護への思いを話します。

限られた時間で最善のケアをしていきたい

 子育てをしながら訪問看護師として勤務して今年で4年目。竹内さんがずっと意識しているのは、家事も仕事もいかに効率よくこなすかということ。頭のなかで次にやることを組み立てて、実践するように努めています。移動中も無駄にせず、頭を整理したり、考える時間にあてているそうです。

 
移動は身軽で動きやすいリュックサックで。移動中も考える時間にあてるなどして無駄にしない

 「仕事は勤務中に集中して、家にはなるべくもち込まないようにしています。ただ、どうしても調べものは後回しになってしまうので、子どもたちが寝たあと、実施したいケアについて、パソコンを使って文献などを調べることもあります」


仕事や家事・育児の合間を縫って調べものをすることも。すきま時間を有効に活用している

 竹内さんには、限られた時間であっても最善のケアをしたいという思いがあります。そのために、体調管理には配慮しています。

 「あまり根をつめず、この時間になったら寝ようと、睡眠時間だけは確保するようにしています。自分が倒れてしまっては、かえって利用者さんやスタッフ、家族にも迷惑をかけてしまいますから」

 また、なるべく1人で抱え込こまず、周りのスタッフに相談することも大切だと話します。
 
 「長く悩んでいても解決できなければ、時間のロスにつながってしまいます。それに、私が急に休んでも迷惑がかからないよう、ほかのスタッフに知ってもらうことも大切だと思っています。自分だけで情報を抱え込まず、記録もどんなケアをしているのかが伝わるように書くことを心がけています」

 スタッフ間だけではなく、診療所の医師との情報共有やコミュニケーションも訪問看護では大切だと竹内さんは実感しています。
 
 「病院では同じ職場にいるので、医師とのやり取りがスムーズでした。でも、訪問看護では、いろいろな診療所の医師と電話や書面でやり取りしなければならないので、誤解が生じないよう丁寧に対応しています。結果、それが仕事の効率の向上にもつながります」
 
 プライベートでは、朝のこども園の送りは夫が担当するなど、夫婦の役割分担を工夫しています。

 「朝の送りを夫に任せることで、だいぶ負担が軽くなっています。特に、子どもがこども園で別れるときに泣くので、そのストレスがないのが一番助かっています。私は、家族全員が無理をしないのが、仕事と家庭を両立させるためには必要だと思っています」

子育てと仕事が両立できる幸せを実感

 子育てがひと段落したら、何をしたいかと尋ねると、緩和ケアの認定看護師を取得することだと竹内さんは答えます。 

 「ずっと現場にいたいので、緩和ケアの実践について、もっと知識を深めていきたい。そうすれば、在宅での疼痛緩和や看取りについて、もっとできることが増えるのではないかと考えています」
 
 将来の夢は、がん患者や家族、周りの人が気軽に相談できる「がんカフェ」を開くこと。そんな夢をもちながら、今は仕事と育児に奔走しています。

 「よくママ友から『仕事と子育ての両立は大変ね』と言われます。でも私は、子どもには子どもの、私には私の世界があると思っていて、仕事をしているほうが精神的に楽なんです。やることはたくさんありますが、大好きな看護をして、終わったら子どもたちが笑顔で迎えてくれる。こんなに幸せなことはありません」

 竹内さんは笑顔で話してくれました。


Q.お気に入りのスポットを教えてください!
 訪問看護やお迎えのときに通る代々木公園です。移動中に桜やバラなど、季節の花を楽しむことができます。新緑の時期は自転車で駆け抜けると、とても気持ちがいいですよ。特に訪問看護の移動中は考えごとをしていることが多いので、いいリフレッシュになりますね。
 

Q.休日はどのように過ごしていますか?
 お休みの土日は、家事をしたり、子どもたちと公園で遊んだりしています。子どもたちが大きくなると、友だちと遊ぶようになると思うので、家族全員で遊べる今の休日は貴重な時間です。先日は、仲のよい家族と河原にバーベキューに行きました。川でスイカを冷やしたり、川面に石を飛ばして遊んだり、子どもたちのいい思い出になったかなと思っています。
 


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公益財団法人日本訪問看護財団立おもて参道訪問看護ステーション

■所在地:東京都渋谷区神宮前5-8-2 日本看護協会ビル5F
■体制:24時間対応・ターミナルケア対応

1985年、訪問看護制度がない時代に設立。東京都渋谷区・港区(北青山・南青山・麻布・
赤坂)を中心に訪問看護と居宅介護支援を提供している。訪問看護認定看護師、認知症看
護認定看護師が在籍し、さまざまな医療ニーズに対応。また、健康や介護について気軽に
相談できる「けやき通り保健室」も運営している。
 


この記事はナース専科2018年9月号より転載しています。

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