1. トップ
  2. 看護記事
  3. 看護クイズ・読み物
  4. 書籍紹介
  5. 【書籍紹介】看護師のためのアドラー流子育て・自分育て ーあなたが変われば、子どもも、家庭も、職場も変わる!ー

【書籍紹介】看護師のためのアドラー流子育て・自分育て ーあなたが変われば、子どもも、家庭も、職場も変わる!ー

  • 公開日: 2019/7/4

看護師向けの子育て本とは限らない

 この本は6章立てで構成されており、「看護師」「アドラー心理学」「子育て」がキーワードになっています。子育て実践中のカウンセラー、心理学講座講師である著者が看護師としての経験も活かし、看護師向けにまとめました。看護師という仕事は失敗が許されない、完璧を求められる仕事です。そのため、家庭や子育てにも同じような考えを持ち込んでいる人が多いかもしれません。アドラー心理学を踏まえて著者は「子育ては完璧を求めなくていい」、「不完全な自分にOKを出す」といったことが大切だと述べています。

 子育てだけではなく、自分育て・部下育てにもつながる内容が盛りだくさんです。「アドラー心理学」をベースに、どの年代、どんな経験の看護師が読んでも1人の看護師としてだけでなく1人の人間を支えてくれる言葉が詰まっています。

 また、何より魅力的なのが、書きこみ式ワークがたくさんあるところです。本を読み、著者の語りかけに答える形でワークをやってみる。そうすることで、自然と心のモヤモヤが整理されていきます。この本を最初から最後まで通して読むことで、自分の心の変化がわかるような仕掛けもあります。著者との対話を楽しめる1冊になっています。

アドラー心理学から学ぶ、人生を前向きにとらえる方法

 第1章「子育てに活かせるアドラー心理学の考え方」では、子育てを題材にアドラー心理学のエッセンスについて解説されています。子育て中の人や子育て経験者であれば、子どもがお手伝いしてくれたから褒めるといったことは誰しもあるでしょう。しかし、著者は褒めには副作用があると述べています。「褒められるからやる」「褒める人がいるからやる」という外側からの因子で動く子どもは、褒めることだけでは消極的で依存的な子どもになる可能性があると述べています。そんなときに役立つのがアドラー心理学です。アドラー心理学は別名「勇気づけの心理学」といわれています。「勇気づけ」とは「困難を克服する活力を与えること」として、褒めることや叱ることよりも、体験か学び、それを次の行動に活かせるように関わることが大切であると述べています。

 第2章「子育ての前に必要なこと」、第3章「ひとりで頑張らない! 周りとともに子育てを」では、アドラー心理学を学ぶことで自分を大切にする考え方に触れることができます。

 著者は子育てをする前に、自分の心を整えることが大切ということと、「頑張る子育て」から「頑張らない子育て」へ考え方を少しずつでも変えていくことが大切と述べています。看護師として患者さんのために、親として子どものために尽くしてきた人は多いと思います。看護師として患者さんに、親として子どもに、これくらいするのは当然と思っている人はいませんか? しかし、まずは自分自身の声を聞いて、自分自身を大切に扱うことが必要と著者は述べています。すると、自分の心が整い、子どもの心も整っていき、自然と子育てで悩んでいることも解決していくと示唆しています。

 第4章、5章では、年齢別の子どもへ関わり方を詳しく述べています。ベビーサイン講師でもある著者は、モンテッソーリ教育や、おもちゃなど、さまざまなものを取り入れ子育てをしています。ベビーサインに関しては、すぐに使えるものが10個イラスト入りで紹介されています。

 小中学生、思春期の子どもへの関わり方、学校に行けない子どもたちへの関わり方など参考になる事例についても述べられています。

 また、第6章「大人が自分の人生を主人公で生きることが、子どもの自立につながる」では、子育てだけでなく、子育てを経験していない人にも参考になることが書かれています。例えば、子育てにおいて「私の育て方が悪いから、自分の子どもは手が掛かるのではないか?」と悩んでいる人もいるかもしれません。しかし、アドラー心理学を活用することで、自分は自分、子どもは子ども、そして過去や現在の状況をどのように捉え、どう意味づけしていくかは自分次第だと著者は述べています。

 特筆すべきは、子どもの性格は、親の育て方よりも誕生順位の方がより影響を与えると述べていることです。一番に生まれたのか? ひとりっこなのか? など、それぞれの誕生順位でどのような性格になりがちかということを、イラスト入りで紹介されています。もちろん、誕生順位がすべてではないとも述べていますが、子どもの性格について悩んでいる方は、子育てのヒント、参考として大いに役立つものと思います。

 子育てをしていなくても、著者はアドラー心理学に触れることで、今までの経験や環境が今の自分を作っているということ、人生を前向きに捉えることができると述べています。アドラー心理学は実践の心理学、「あなただけの小さな一歩を踏み出してみませんか?」この本はそう語りかけています。

大切なことは自分と向き合い、自分自身の人生を歩むこと

 紹介したもの以外にも、本書は子育てをしていない看護師にとってもヒントとなる内容になっています。例えば、職場での人間関係、先輩後輩関係についてなど、1年目の看護師から経験を積んだ看護師まで幅広く読むことができます。日々、業務に追われるなかで、自分の思うように相手を変えよう、直そうと考えず、自分は自分、相手は相手と考えることの大切さ、「勇気づけの心理学」であるアドラー心理学を通して自分が変わること、変わろうと決めることの大切さがわかります。また、周りに子育てと仕事の両立に奮闘中の看護師の方がいる場合は、相手がどんなサポートを心から望んでいるかが実感できます。

 この本を読むことで、看護師としてだけでなく、家庭や子育て、職場に変化が起こるきっかけになるかもしれせん。


看護師のためのアドラー流子育て・自分育てーあなたが変われば、子どもも、家庭も、職場も変わる!ー
著 長谷静香
定価 1500円+税
ページ数 266ページ

カテゴリの新着記事

ポジショニングについてしっかりと学べる1冊

豊富な図で基礎から実践まで学べる  本書はセミナーや学会などで長年ポジショニングにかかわってきた田中マキ子先生が監修したポジショニングの基礎から実践まで必要な知識がまとめられている1冊です。改訂第2版となる今回は、スモールチェンジの効果など最新の知見も追加されています。

2024/2/7

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
9位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949