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【連載】知っておきたい!肝胆膵疾患

胆道がんとは|胆管・胆嚢・乳頭部がんの原因・検査・診断・手術療法

  • 公開日: 2019/7/30

胆道がんとは

 胆道は肝細胞から分泌された胆汁が十二指腸に流出するまでの、全排泄経路を指し示します。大きく肝内胆道系と肝外胆道系に分けることができます。通常、胆道がんといえば、肝外胆道系由来のがんのことをいいます。

胆道がんの誘因・原因

 胆道がんの誘因・原因としては、膵管と胆管の合流形態に異常がある膵胆管合流異常症や原発性硬化性胆管炎といったものがあります。また最近では、特定の有機溶媒*1への曝露との関連も指摘されています。

 胆道がんと一口にいっても、その発生部位により症状や治療法(手術術式)が大きく異なりますので、疾患を理解するためには胆道系の解剖についての知識が必須となります。肝外胆道系の解剖区分を図1に示します。

 胆道がんは①(肝外)胆管がん、②胆嚢がん、③乳頭部がんの3つに区分されます。先ほども述べましたが、症状や治療法が発生部位により異なるため、それぞれについて解説していきます。なお、現時点では胆道がんに有効とされる薬物は少なく、手術療法が治療の主体となります。そこで、ここでは手術療法を中心に述べていきます。

*1 水に溶けない物質を溶かす有機化合物

図1 肝外胆道系の区分
図1
Bp:肝門部領域胆管、Bd:遠位胆管、Gf:胆嚢底部、Gb:胆嚢体部、Gn:胆嚢頸部、C:胆嚢管、A:乳頭部

①胆管がん

 肝外胆管から発生するがんで、高齢男性に多く発生します。解剖学上、肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんに分けられます。

胆管がんの症状・臨床所見

 黄疸、褐色尿、皮膚掻痒感、上腹部痛、体重減少、発熱などを契機として、がんが見つかることが多いです。特に黄疸がきっかけとなることがよくみられます。がんにより胆管が閉塞・狭窄した結果、黄疸を発症する閉塞性黄疸といわれるもので、胆管炎を伴うことが多く発熱の原因となります。

胆管がんの検査・診断

 腫瘍マーカーとしてはCA19-9、CEAなどが上昇することがあります。遠位胆管がんでは膵頭部がんとの鑑別が難しい症例もあります。

◆腹部超音波検査
 胆管内の腫瘤、肝内胆管の拡張、胆嚢の腫大といった所見が認められます。

◆腹部CT検査
 造影剤を使用した検査が有用です。隣接臓器や血管への浸潤・転移の有無を調べることができます。また、マルチスライスCT(multi-detector row CT:MDCT)は解像度が高く、周囲臓器との関係の把握に有用であり、がんの胆管内の進展範囲の診断に関しても非常に有用です。がんの進展についてよい条件下で調べるためには、後述する減黄(黄疸を改善させる治療)処置を行う前にCT検査を行う必要があります。

◆直接胆道造影検査
 胆管内に直接造影剤を注入し、がんの存在部位や進展の程度を調べる検査です。内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)が行われることが多いです。胆汁を採取したり、病変部を擦過することで組織学的診断をつけることもできます。また、本検査施行時に減黄処置を併せて行うことがよくあります。

胆管がんにおける減黄

 胆管がんの患者さんは黄疸を呈していることが多くあります。黄疸が強い状態が続くと全身の臓器に障害が及ぶだけではなく、手術療法などの侵襲を伴う治療を行うことができなくなります。そのため、まずは減黄が必要となります。減黄処置には以下の方法がよく行われます。

◆内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(endoscopic nasobiliary drainage:ENBD)
 内視鏡的にドレナージチューブを腫瘍よりも肝臓側へと挿入し、鼻からチューブを体外へ出して胆汁を排出させるものです。チューブを使用し胆道造影検査や胆汁採取を行うことができ、逆行性胆管炎になりにくいという利点がありますが、ドレナージチューブ自体が患者さんにとって負担になりますし、体動時に抜去してしまわないように注意が必要です。

◆内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(endoscopic retrograde biliary drainage:ERBD)
 内視鏡的にステントチューブを胆管内に留置し、内瘻化させます。患者さんの負担は少ないですが、チューブの閉塞などが原因となり、逆行性胆管炎の発症リスクが上がるという短所があります。

◆経皮経肝胆道ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)
 経皮的に拡張した肝内胆管にドレナージチューブを挿入・留置し、胆汁を体外へ排出させるものです。percutaneous transhepatic cholangial drainage (PTCD)*2ということもあります。内視鏡的なドレナージが困難である症例などで行われることが多いです。逆行性胆管炎のリスクが低いことなどが利点ですが、穿刺に伴う腹腔内出血、胆汁性腹膜炎といった手技に伴う合併症があります。また穿刺部にがん細胞が生着してしまうことがあり、このことも本手技の欠点です。

*2 日本では PTCD が用いられることが多いが、英文では PTBD が一般的

胆管がんの手術療法

 肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんで選択される術式が異なります。

◆肝門部領域胆管がんの場合
 がんの広がりに応じて切除する肝臓の術式が異なります。尾状葉切除を伴う拡大右葉切除、または左葉切除に肝外胆管切除、リンパ節郭清が加わるものが標準術式となります。さらに広範囲の肝切除が行われることもあります。腫瘍の浸潤度によっては、門脈や肝動脈の合併切除・再建が行われることもあります。また肝外胆管を切除するため、胆汁の排泄路を新たに作成する必要があります(胆道再建術)。標準的な再建後のシェーマを図2-1、図2-2に示します。

図2-1 肝(拡大)左葉切除、尾状葉切除、胆管切除後
図2-1

図2-2 肝(拡大)右葉切除、尾状葉切除、胆管切除後
図2-2

◆遠位胆管がんの場合
 膵頭十二指腸切除術(亜全胃温存、全胃温存の術式も含みます)、リンパ節郭清が標準術式になります。門脈や肝動脈の合併切除が行われる場合があることは、肝門部領域胆管がんのときと同じです。本術式では胆道再建だけではなく、膵-消化管吻合、消化管再建術も必要となります。一般的な再建後のシェーマを図3に示します。

図3 膵頭十二指腸切除後再建
図3

その他

 胆管の長軸方向(胆管に沿って)に広く進展していくタイプの腫瘍もあります。こういった広範囲に広がる胆管がんに対しては、上述した拡大肝葉切除術に膵頭十二指腸切除術を加えた術式が選択されることがあります。非常に侵襲の強い手術ですから、術前術後管理も十分な注意が必要です。また、肝の予定切除量が大きく、術後肝不全の発症が危惧されるときには、術前に切除予定側の門脈塞栓術を行った後に、根治手術となることもあります。

②胆嚢がん

 胆嚢から発生するがんで、高齢女性に多くみられます。組織学上、粘膜筋板という構造がないためがんの浸潤、転移が生じやすいといわれています。

胆嚢がんの症状・臨床所見

 早期がんでは症状はほとんどみられません。進行してくると、右上腹部痛、腹部腫瘤、悪心・嘔吐、全身倦怠感、食欲不振といった症状が出現してきます。がんが進展し胆管を閉塞・狭窄すると、黄疸とそれに伴った症状が出現することがあります。

胆嚢がんの検査・診断

 腫瘍マーカーとしてはCA19-9、CEAなどが上昇することがあります。肝外胆管に浸潤あるいは圧排をしてくれば、閉塞性黄疸の所見が出てきます。その他の画像検査としては胆管がんとほぼ同様であり、注意点もほぼ同じです。胆嚢壁の腫大や腫瘤、肝内胆管の拡張といった所見がみられます。隣接臓器への浸潤の有無や主要な脈管との関係などを調べることも胆管がんのときとほぼ同様です。腫瘤を形成する特殊な胆嚢炎との鑑別は非常に難しいこともあります。

胆嚢がんの手術療法

 がんの進展度と部位により術式が大きく変わってきます。以下に代表的なものを列記します。

◆胆嚢摘出術
 早期がん、あるいはがん疑い病変のときに行われます。

◆小範囲の肝切除、リンパ節郭清
 胆嚢が付着している肝の小範囲だけを切除するもの(肝床部切除)と肝S4、肝S5の領域を切除するものがあります。胆管切除も追加されることがあります。胆管切除を行ったときは胆道再建が必要となります。

◆肝拡大右葉切除、胆管切除、リンパ節郭清
 胆嚢がんが肝門部に進展しているときに適応となります。術前に前述した門脈塞栓術が必要となる場合もあります。

◆肝切除、膵頭十二指腸切除術、リンパ節郭清
 がんが十二指腸や肝十二指腸間膜に広く浸潤しているときなどに選択されます。横行結腸に浸潤しているときには、結腸合併切除が追加されることもあります。右葉切除に膵頭十二指腸切除術が加わるときは、手術侵襲が非常に大きくなります。

 胆管切除もしくは膵頭十二指腸切除が行われたときの再建図については、図2-1、図3を参考にしてください。

③乳頭部がん

 胆管が膵内で主膵管と合流し、十二指腸に開口する乳頭部でがんが発生したものです。臨床所見は遠位胆管がんに類似します。

乳頭部がんの症状・臨床所見

 遠位胆管がんのときとほぼ同様です。黄疸、褐色尿、皮膚掻痒感、上腹部痛、体重減少、発熱などを契機として、がんが見つかることが多いです。露出した乳頭部がんは消化管出血の原因となることもあります。

乳頭部がんの検査・診断

 腫瘍マーカーとしてはCA19-9、CEAなどが上昇することがあります。遠位胆管がんのときとほぼ同様の検査を行います。所見も似ていることが多いため、そちらを参考にしてください。確定診断は上部消化管内視鏡検査時の組織診でつくことが多いですが、露出しないタイプの乳頭部がんではわかりにくいこともあります。閉塞性黄疸がみられるときは、上述のような減黄処置を行います。

乳頭部がんの手術療法

膵頭十二指腸切除術、リンパ節郭清が標準術式です。再建については図3を参考にしてください。

図3 膵頭十二指腸切除後再建
図3

胆道がんの化学療法

 胆道がんの治療法は手術療法が中心となることは前述したとおりですが、近年有効な薬剤も種類は少ないですが出てきました。切除不能胆道がん、あるいは再発胆道がんに対しては化学療法が行われます。ゲムシタビンにシスプラチンを併用したレジメンや、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤などが使用されます。

 胆道がんの診療・看護においては、胆道がんの発生部位と進展度により治療法が大きく異なることを理解することが重要です。手術侵襲の大きな術式が適用されることも多く、周術期看護を行う上では注意が必要です。各手術術式についても十分に理解しておく必要があります。


【参考文献】

●日本肝胆膵外科学会 編:胆道癌取扱い規約 第6版、金原出版、2013、p.4

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