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【術前・術後ケア】患者が周術期に抱く不安に対応する場面 ~直腸がん患者への術前・術後ケアより~

執筆 鈴木 里奈

獨協医科大学埼玉医療センター 看護部E5病棟 看護師

目次


私の看護のエッセンス
●患者が自分らしく過ごせるように支えます。
●患者の不安は何なのか、漠然とした言葉にならないものなのか、具体的なものなのかを明らかにします。
●チームで患者を看ます。
●確実なケアは信頼につながります。


事例紹介

Bさん、直腸がん、50歳代、男性。

 Bさんは、これまで大きな病気やけがをしたことはなく、初めての手術でした。腫瘍は大きく、根治のために術前化学療法としてSOX+Cmab(1クール3週間)を2クール行いました。化学療法の副作用が強く現れ、皮膚障害、食欲不振、倦怠感に耐えながらも仕事を続けてきました。入院前の外来では「腫瘍が肛門付近にあるため、一時的ストーマを造る」と説明されていましたが、入院後の術前の説明で、「術中の所見次第で、術式が超低位直腸前方切除術または、マイルズ術を行う可能性がある」と説明がありました。つまり、永久ストーマになる可能性が伝えられました。永久ストーマになる可能性もあると知り、Bさんはひどく落胆して、主治医からの説明の内容もあまり頭に入ってこないようでした。主治医からの説明の後にBさん、妻からそのときの思いや今後の生活への不安を聞きました。その後、手術はマイルズ術が行われ、永久ストーマとなりました。術後経過は順調で、ストーマのトラブルもなく退院となりました。

看護上の問題の抽出

 Bさんは永久ストーマとなる可能性を知り、ひどく落胆していました。本人は、「先生にお任せしているから仕方ないです。ただ、人工肛門を閉じて、元の身体に戻れると思っていたから抗がん剤も手術も頑張れると思ったけど、一生、人工肛門になるのは嫌です」と話しました。
 
 永久ストーマと一時的ストーマのメリット、デメリットも説明されていましたが、頭に入っていないようでした。妻は退院後の生活についての不安が大きく、看護師に日常生活についての質問が多くありました。
 
 Bさんは、一時的ストーマは3カ月~半年程度で閉鎖できると聞いており、ストーマも受け入れ、つらい化学療法の副作用にも耐えていました。登山が趣味で、友人と出かけることも多く、登山後には日帰り温泉にも行っていたそうです。ストーマを造設している期間だけ登山を控えようと考えていたようであり、一生ストーマと付き合っていく可能性があると聞いたことで、不安が増強していました。


この事例からは、次の3つの看護上の問題を見ることができます。
問題点1 ストーマ造設を期間限定のこととして捉えたために、永久ストーマが受容できなくなっていること
問題点2 本人・家族のストーマに関する知識の不足
問題点3 永久ストーマになることでのストーマ造設後の社会復帰における不安


看護上の問題に対する介入方法の検討プロセス・看護展開とその結果

問題点1 ストーマ造設を期間限定のこととして捉えたために、永久ストーマが受容できなくなっていること

介入方法の検討プロセス
 初めての手術というだけでも不安があるなかで、さらにストーマ造設、それも永久ストーマの可能性があることを伝えられており、まずは、現状のつらい気持ちを傾聴することが必要だと考えました。
 
 Bさんはがん治療のために、つらい化学療法やその後の副作用にも耐えながら、家族のために仕事を続けてきた患者でした。これまでの苦労を労い、患者のタイミングで今抱えている思いを表出できるようなかかわりが必要でした。そして、妻との関係性を考え、必要時は個別で話を聞くことも大切だと考えました。

看護展開とその結果
 主治医からの手術に関する説明後に、患者と妻の反応を確認しました。Bさんは「一時的ストーマだからこそ受け入れ、化学療法の副作用にも耐えてきた。正直、永久ストーマは造りたくない。しかし、がんの治療のためなら仕方ない」と話しました。筆者はBさんのこれまでの苦労を労い、認め、思いを傾聴しました。

問題点2 本人・家族のストーマに関する知識の不足
問題点3 永久ストーマになることでのストーマ造設後の社会復帰における不安

介入方法の検討プロセス
 Bさんには化学療法を開始する以前からストーマ造設に関する説明がなされ、Bさん自身もネットなどで情報を収集し、一時的ストーマ造設については理解・納得したうえで治療に臨んでいました。ストーマ造設に対しても、がん治療のための期間限定のこととして捉えており、ストーマは閉鎖できるという望みを支えに、ストーマ保有者となることを受け入れようとしている状況でした。
 
 また、ボディーイメージの変化や排泄経路の変更、手術そのものの漠然とした不安の訴えよりも、日常生活や社会復帰に対する不安のほうが大きい印象がありました。
 
 そこで、今後の日常生活がイメージできるような知識の提供、自信がつくようなセルフケア獲得に向けた支援、患者の個別性に合わせたトラブルのないストーマケア・装具選択が必要ではないかと考えました。

看護展開とその結果
 Bさんの妻からは「夫は趣味を続けられるのか、日常生活は支障なく送れるのか」などのストーマ造設後のことに対する質問が多く聞かれ、そのつど説明しました。
 
 妻からの質問に答えているうちに、Bさんからも、「飛行機には乗れるのか、周囲の人にはストーマ保有者だと気づかれないのか」といった、ストーマに関する質問が聞かれるようになりました。
 
 そこで、すでにBさんに渡っていたパンフレットを見ながら、その他の日常生活における注意点やストーマの管理について、身体障害者手帳についてなどを具体的に説明しました。Bさんの理解度や、受容の程度を把握したうえで、段階的にオリエンテーションを行ったことで、ストーマのある生活がイメージしやすくなったと考えます。
 
 筆者の病棟の看護体制はチームナーシングであり、チームで患者を診ています。カンファレンスで患者の状況を伝え、本人への統一したかかわりと、家族の受け止め方や思い、サポート体制の確認が必要ではないかと話し合い、退院後の生活を見据えた看護介入のため、早期から介入できました。
 
 患者のストーマに対する不安が軽減されても、ストーマ造設後の頻回な漏れや皮膚トラブルは患者のストーマのセルフケアに対する不安が増強する要因となりえます。ここで不安が生じると、社会復帰がスムーズにいかなくなったり、ストーマのある生活がストレスになったりしてしまいます。
 
 患者が自信をもってセルフケアをできるようにするためには、まずは、患者の生活スタイルに合わせたストーマサイトマーキングが必要です。患者の日常生活について細かく情報収集し、ケアのしやすい位置にマーキングを行います。

 ストーマ造設後も、実際にストーマを見た反応を確認し、ボディーイメージの変化をどこまで受容できたかを確認し、セルフケア指導を始めます。
 
 まず、ストーマの観察、アセスメントを適切に行い、装具選択をしていきました。Bさんは入院前からストーマ造設に対する説明は受けており、術後のストーマの受け入れはスムーズであった印象でした。
 
 また、ストーマケアに関しても入院中はトラブルなく経過しました。本人主体でストーマケアを行いましたが、妻がほぼ毎回ケアに同席し本人に声かけを行っていたのが印象的でした。本人は不安げにケアをしており、できているところを認め、自信がつくようにかかわりました。
 
 退院後も支障なくケアが行えるよう、日常生活の指導や、退院後の相談窓口として、ストーマ外来があることを説明しました。結果、Bさんは術後合併症の出現もなく退院を迎えることができました。

振り返り

■チームによる統一した看護の実践
 今回の事例を振り返り、一時的ストーマを期間限定のこととして受け入れていた患者であっても、永久ストーマに関しては拒否的反応があり、介入の難しさを感じました。
 
 患者・家族と話すうちにストーマに関することだけでなく、患者自身が見えてきました。ストーマの受け入れ状況や生活スタイル、ストーマや腹壁の状態は患者によってさまざまです。チームで密に情報共有し、看護問題や介入方法について話し合うことで、チームで統一した看護ができました。

■患者の不安と向き合い、信頼関係を築く
 患者について知り、患者の思いを知り、患者に合わせたケアを行うことで患者の不安は少しずつ軽減されていくことを学びました。
 
 患者に合わせた支援をすることで、患者がストーマ保有者になっても、自分らしく過ごすことができると思います。術前に不安が軽減でき、術後もトラブルなく経過したことで、不安が増強せずに退院が迎えられたと思います。
 
 患者の不安と向き合い、漠然とした不安から具体的な不安の内容を明らかにし、介入できたことで、患者との信頼関係を築くことができました。

成長のヒント

 患者の不安と向き合うためには、まずは患者自身と向き合うことだと思っています。患者について知り、寄り添うことで、相手にこちらの思いが伝わります。そこで初めて、患者が自分らしく過ごせるようにかかわることができると考えます。
 
 患者への精神的な介入ができていても、ストーマにトラブルや便漏れ、術後合併症があると患者の不安を助長させてしまいます。そのため個別性のあるストーマケア方法の確立と術後合併症予防のための看護が重要となります。自分一人ではこれらは実現できないので、チームでいかに患者の退院後を見据えたかかわりができるかだと思います。

(ナース専科2018年3月号より転載)

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