【連載】発見!私たち中堅の成長スイッチ

【術前・術後ケア】重症度が高い病態の患者を受け持った場面 ~大腸穿孔患者への術前・術後ケアより~

執筆 松本 侑子

獨協医科大学埼玉医療センター  看護部E5病棟 看護師・保健師

目次


私の看護のエッセンス
 ●患者の「今」に捉われず、患者を点ではなく線として看ることが重要です。
 ●業務優先の看護になってしまうことはありますが、そのことに気づき、気づいた時点で修正を行うことが大切です。
 ●中堅看護師としての気づきをきっかけに、チーム全体に問題提起し、チーム全体で考え、答えを導いていくことが必要です。


事例紹介

 Cさん、大腸穿孔、70歳代、男性。
 
 大腸穿孔にて緊急入院し、同日緊急手術にて結腸ストーマを造設しました。術後すぐには抜管できず、数日間HCU(high care unit)で過ごし、状態が安定したため外科病棟へ転室しました。しかし、その後再穿孔が起こり、ハルトマン術を施行し、またもや抜管できず数日間HCU管理となり、抜管後に病棟管理となりました。意識レベルはクリアでしたが、喫煙歴が長く、呼吸状態も落ち着かなかったため、酸素投与を長く継続する必要がありました。

 大腸穿孔による腹膜炎も併発しており、腹腔内には膿瘍形成があり、何本ものドレーンが留置されていました。また、炎症指標の高値が継続しており、連日40℃近い発熱に苦しんでいました。
 
 入院前のCさんのADLは自立していましたが、2週間以上寝たきりであったため、ADLは著明に低下していました。徐々に状態も落ち着いてきたころ、医師から離床の許可が出ました。しかしCさんは長期間離床していなかったことで、離床することに強い不安がありました。また、カテーテル類も多く挿入されているため動きづらさもあり、なかなか離床には至りませんでした。Cさんの趣味はゴルフであり、毎週のようにゴルフに通っていたそうです。

看護上の問題の抽出

 清拭時にCさんは、「今まで何の不自由なく元気に過ごしていたのに、急にこんなことになってしまったよ。ゴルフが好きでね、毎週ゴルフに出かけていたんだ。またゴルフができるようになるかな。またみんなとやりたいな、ゴルフ」と漏らしました。

 筆者はCさんに対し、「ゴルフができる身体に戻るように一緒に頑張りましょう」と声をかけました。

 こうしたCさんとの会話のなかで、筆者はCさんの「今」しか見ていないことに気がつきました。Cさんの病態は重症であることに違いはありませんが、Cさんは数週間前まで自分の身の周りのことは何でも自分で行い、毎週趣味のゴルフに通っていました。
 
 Cさんを大腸穿孔術後の患者として捉えていましたが、Cさんは夫であり、父であり、祖父でもあります。
 
 Cさんには「退院後も趣味のゴルフを続けたい」という思いがありました。その思いはCさんにとって退院に向けた長期目標となります。
 
 Cさんの目標を達成するには、患者がもっている機能の低下を防ぎ、早期に向上できるような介入をしていくことが重要であると気づきました。
 
 また、今から退院を見据えた看護を行うことは早すぎることではないと考えました。


この事例からは、次の2つの看護上の問題を見ることができます。
問題点1 状態悪化によるADLの低下で、今後寝たきり状態となることが予測される
問題点2 突然の穿孔による緊急入院・緊急手術であったため、現状を受け入れられない思いがあることが予測される


看護上の問題に対する介入方法の検討プロセス・看護展開とその結果

問題点1 状態悪化によるADLの低下で、今後寝たきり状態となることが予測される

介入方法の検討プロセス
 Cさんは、まだ離床すらしておらず寝たきりの状態で、経口摂取の目処も立っていませんでした。そのため、週1回のカンファレンスで、Cさんの現状と目標を照らし合わせながら看護介入を行っていくこととしました。

看護展開とその結果
 まずCさんに、「ゴルフができるまでの体力回復はそう簡単な道のりではないけれど、毎日少しずつ前に進んでいけるように一緒に頑張りましょう。そのためには少しずつでもよいのでベッドから身体を離していく必要があります。また、経口で栄養をとり体力を回復していくことが必要です。今後、これらを段階的に行っていきましょう」と伝えました。
 
 週1回のカンファレンスでは、その時点までの経過を確認し、Cさんの現在の状態を正しく理解したうえで今後の経過を予測し、その時々に合わせた看護介入をチーム全体で考えました。
 
 チームカンファレンス以外でも、看護計画とのズレを確認し、その修正を適宜行いました。

 また、Cさんと筆者だけでなく、Cさんとチームスタッフも同じ目標に向かい日々かかわり合うことで、忙しい業務のなかでもCさんの努力や思いなどの小さな変化に皆が気づけるようになりました。
 
 それを毎日積み重ねることでCさんの回復とともに、スタッフの意識もCさんにとっての看護を考えるようになりました。

問題点2 突然の穿孔による緊急入院・緊急手術であったため、現状を受け入れられない思いがあることが予測される

介入方法の検討プロセス
 まずは急激な環境の変化に戸惑うCさんに対し、毎日少しずつ声をかけ、現状に対する思いを確認することから始めることとしました。
 
 そして、少しずつ現状を受け入れることができ始めたころにCさんの趣味がゴルフで、またゴルフを続けたいという思いを吐露したため、それをチーム全体で共有することにしました。
 
 患者が入院前の状態に戻り、趣味を続けたいと思うのは当たり前のことであり、それを手助けすることが私たち看護師の仕事です。
 
 Cさんの思いをCさんの長期目標とし、この目標を達成するために、速やかに退院を見据えた介入をしていくことは、決して早すぎることはないとチームに訴える必要があると思いました。

看護展開とその結果
 Cさんが現状を受け入れ治療に対し前向きになれたころに、徐々にリハビリテーションを開始しました。

 まずはベッドサイドで手足を動かしていくことから始め、ベッドから身体を離すことの重要性を伝え、徐々にベッドから離れる訓練を行いました。現状を受け入れ、治療の必要性を理解してからリハビリテーションを行うことで、本人のリハビリテーションに対する意欲へとつながりました。

振り返り

■点ではなく線として患者を捉える
 筆者が新人看護師のころは、マニュアルを厳守しマニュアルに基づき業務をこなすことで精一杯でした。それに対し中堅看護師は、マニュアルを基本としながら、エビデンスに基づいた個別的な看護を提供することが求められます。

 重症患者を受け持った場合、患者が重症である「今」に捉われがちですが、患者は生活者であり、退院後は元の生活に戻らなくてはなりません。
 
 今回の症例を通して自身の看護を振り返り、患者を「点」ではなく「線」として捉えることの重要性を改めて実感しました。
 
 線として捉えることの重要性は新人看護師の頃から理解はしていました。しかし、患者の病態を理解することや、その日の検査データを読み解くこと、バイタルサインや症状の変化に気づくことに精一杯で、頭の隅の隅の隅のほうに追いやられていました。

 気づいたころには先輩看護師がさまざまな調整をしていてくれたり、退院がさし迫っていたりということが多々ありました。

■気づきをきっかけにチーム全体で問題に取り組む
 さまざまな経験を積んで患者を多角的に看ることができるようになった今だからこそ、気づくことがたくさんあります。現在に至るまで業務に追われながら、さまざまなことにもまれ、看護師として患者と向き合ってきた経験があるからこそ、今回のような気づきに至ったのだと思います。
 
 そして、気づいたことを自分だけで隠しもっていても意味がありません。また、気づいたことをスタッフに一方的に呼びかけるだけでは意味がありません。
 
 新人看護師が受け持てないような重症な患者であったとしても、気づいた人がチーム全体に問題提起し、チーム全体で患者にどんな問題があり、どのような看護が必要なのかを考え、答えを導き出していく必要があることを学びました。

成長のヒント

 患者との何気ない日々のかかわりのなかに成長のヒントがある!

 成長のヒントは患者がくれる!

 このことを意識しないでただ流されるままに業務をこなしているだけでは何も見えてこず、看護師としての仕事をつまらなく感じてしまうと思います。
 
 ただ何となく毎日をやり過ごすことはできますし、それでも毎月の給料はもらえます。

 しかし、意識することでわかること、見えてくるものがあります。そうして得たものは、患者のためになり、自分のやりがいにつながることを体験してほしいと思います。そのかかわりを見て評価してくれる人も職場にはきっといるはずです。成長へのヒントはいつも患者がくれるのです!

(ナース専科2018年3月号より転載)

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