【連載】発見!私たち中堅の成長スイッチ

【術前・術後ケア】チームリーダー実践の場面 ~直腸がん患者への術前・術後ケアより~

執筆 吉田 朋恵

獨協医科大学埼玉医療センター 看護部E5病棟 看護師

目次


私の看護のエッセンス
 ●入院している患者の一部分だけを捉えるのではなく、患者の全体像を把握します。
 ●後輩看護師、先輩看護師の懸け橋となることが、中堅看護師の役割です。
 ●患者を中心としたチームの対話で患者のケアが生まれます。


事例紹介

 Dさん、直腸がん、80歳代、女性。Dさんの直腸がんはStageⅠで、腹腔鏡下超低位前方切除術+回腸ストーマ造設術を施行しました。もともとはキャリアウーマンであり、未婚で独居の患者です。食事はほとんど外食で、友人にお金を払って家事を依頼するなど自由に生活をし、金銭的余裕があります。親族は弟、妹、姪がいます。弟は近くには住んでいますが、姉のストーマケアをする気はありません。妹は卵巣がんでここ1年寝たきりの状況で、姪が介護しているため、ストーマケアは家族には頼れない状況です。妹もオストメイトでしたが、Dさんはこれまで関心を示さず、見ることもしてきませんでした。
 
 術前にはストーマケアのオリエンテーションを外来看護師、病棟看護師が施行しました。ストーマに対しての理解は得られましたが、患者1人ではケアに不安があり、Dさん・家族ともに訪問看護の導入を希望しました。
 
 術直後よりストーマケアの指導を開始しましたが、術後せん妄の発症やイレウスで腹痛を訴え、離床がなかなか図れなかったことで指導が進みませんでした。それでもケアを自ら実施してもらおうと、受け持ち看護師が声をかけましたが、ケアを実施できない期間が続きました。病状が落ち着いた術後10日目ころより、ようやくケアに参加するようになりました。しかし、ケアは雑であり、何度説明してもケアの手順が覚えられません。また、ストーマの高さがなく、腹壁も凹凸があったことから、面板からの漏れが頻回に続き、Dさんはストーマケアへの意欲をなくしてしまいました。

看護上の問題の抽出

 受け持ち看護師がストーマケアの指導をしましたが、ケア方法は投げやりで雑であり、何度指導しても手順を覚えられない状況でした。退院後は訪問看護を導入しても、患者主体でケアを実施し、訪問看護師にはケアを手伝ってもらうようにしようとかかわっていきました。
 
 繰り返し指導を行っていくうちに、「私は全部友人にお金を払ってやってもらうからやらない」とストーマケアを拒否するようになりました。しかし、受け持ち看護師は「自分でケアができなければ退院できない」と、ケアの指導を繰り返し実施しました。
 
 ストーマケアは難渋し、1日に何度も便が漏れてしまうことも多々ありました。ストーマの高さや腹壁の状況から、高さのある凸面で、それに追従する、ベルトの装着ができる装具が必須でした。さらに、患者はロールアップタイプの破棄口ではうまく便破棄ができず、キャップタイプの破棄口に限定されたこと、訪問看護師が訪問できる日数を考え、最低でも3日間貼付できる装具であるなどの条件があったことから、装具選定にも難渋しました。


この事例からは、次の3つの看護上の問題を見ることができます。

問題点1 患者のストーマケア・セルフケア不足
問題点2 看護師の患者に対する全体像の把握不足
問題点3 ストーマケアの難渋


看護上の問題に対する介入方法の検討プロセス・看護展開とその結果

問題点1 患者のストーマケア・セルフケア不足 
問題点2 看護師の患者に対する全体像の把握不足 

介入方法の検討プロセス
 受け持ち看護師から、ストーマのセルフケア指導が滞っているとの情報があり、チーム内でカンファレンスを実施しました。
 
 チームのメンバーにストーマケア状況を確認すると、ケアにかかわった看護師から、「1人ですべてを管理するのは難しい」という声が上がりました。どのようにケアを覚えてもらおうかとチーム内の看護師それぞれが思っていましたが、チーム内で検討することがなされていませんでした。
 
 まずは、Dさんの今までの生活や家族背景などを振り返ってみようとチームメンバーに投げかけました。すると、メンバーそれぞれから情報が上がり、自由気ままに生活してきたDさんの背景や、経済的に余裕があること、「ケアすべてを友人にお金を払ってでもやってもらうから、もう何もしたくない」と自暴自棄になっているとのことでした。
 
 ストーマケアを拒否しているこの状況で、さらに指導することは、セルフケアが確立されないだけでなく、われわれとDさんとの関係が良好に保たれなくなるのではないかと話し合いました。
 
 カンファレンスでは、ストーマケアのすべてを訪問看護師に依頼することと、便破棄だけは自分でできるように指導をしていこうとチームメンバーに投げかけ、Dさんの了承を得たうえで、ケアを開始しました。

看護展開とその結果
 ストーマケアに対し拒否が見られていたDさんも、便破棄だけであれば「何とかできそう」と前向きに捉え、2週間ほどかかりましたが、1人でできるようになりました。

問題点3 ストーマケアの難渋

介入方法の検討プロセス
 ストーマケアは、筆者も受け持ち看護師と一緒に実施するように努め、ケア方法の提案と自分のアセスメントを伝えるようにしました。記録だけでは伝わらないケアのポイントやアセスメントをできる限りチームメンバーに伝え、誰が介入しても同様のケアができるように努めました。
 
 また、WOC(皮膚・排泄ケア認定看護師)とも連携を図り、筆者はリーダー看護師としてチームメンバーとWOCの懸け橋になるようにしました。

看護展開とその結果
 ストーマケアに関しては、WOCと一緒にケア方法を検討し、考えられるケアを試行錯誤しながら、Dさんに合ったケアの確立に至りました。
 
 面板からの漏れも頻回に起こったため、訪問看護は24時間対応している訪問看護ステーションに依頼をしました。退院前には訪問看護師とのカンファレンスを実施し、継続したかかわりがもてるようにしました。

振り返り

■チームメンバーがもつ情報を共有する
 経験年数の浅い看護師は、日々の看護に精一杯で、目の前の患者の状態や術後の問題だけに捉われ、視野が狭くなりがちです。しかし、日々患者と接しているのは受け持ち看護師であり、看護師一人ひとりが患者情報をたくさんもっています。
 
 そして、看護師一人ひとりの対話のなかから生まれた患者の情報を出し合い、患者のことをチームメンバーで語り合い、共有していくことで患者に合わせたケアが生まれると感じます。

■チームリーダーとして求められること
 リーダー看護師に求められることは、語り合える場をつくること、語り合える雰囲気づくり、患者の全体像を捉え、退院後の生活を見据え、患者に合わせたケアを提供するための助言であると考えます。
 
 そして、自分の考えやアセスメントを伝え、一緒に考えることで、後輩看護師の育成につながると考えます。
 
 反対にWOCなどの認定看護師や先輩看護師との対話では、自分では気づかなかった視点やケア方法に気づき、自分のスキルアップへとつながります。いずれの場合も、患者のことを語り合う場を自らつくっていくことが必要であると感じます。

成長のヒント

 受け持ち看護師が得た何気ない情報を引き出せるようにかかわることが大切であると考えます。
 
 また、患者の全体像を把握するには、患者の生き方や考え方を知り、患者が求めていることをアセスメントすることが重要です。

 それらの情報や看護を語る場を多くつくることで、後輩の育成、自己のスキルアップにつながります。臨床現場でもっと患者のことを語ることを習慣化できるようにしていこうと思います。

引用・参考文献

1) 鈴木由紀子:さまざまな場で学んだ「読む、書く、話す(聞く)」を教育現場に活かすために.看護教育2017;58(8),620-25.

参考図書

①日本がん看護学会,監:病態・治療をふまえたがん患者の排便ケア.松原康美,編.医学書院,2016.
②松原康美,編:ストーマケア実践ガイド術前からはじめる継続看護.学研メディカル秀潤社,2013.

(ナース専科2018年3月号より転載)

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