【連載】楽しく身につく問題解決型思考

問題解決に必要な2つの思考|問題解決型思考をマスターしよう!

執筆 田中 智恵子(たなか ちえこ)

株式会社メディカルクリエイト 看護経営コンサルタント

現場で問題が発生したとき、知識や経験、勘だけに頼らず、データなどのファクトに基づいて論理的に考え、問題の本質を見極めて解決していく思考とスキルが求められます。そこで、問題を解決していくうえで身につけておきたい、ものの考えかたと頭の整理法について説明します。


目次

※「②手段と目的を間違えない」以下の閲覧はログイン(登録無料)が必要です。


1.ゼロベース思考―既存の枠に捉われずに考える

 図1の事例を考えてみましょう。認知症の疑いのある患者の場合、点滴が理解できず自己抜針したと考えるのが大方ではないでしょうか。
 
図1:点滴の針が抜けたときの状況
図1:点滴の針が抜けたときの状況
 
 しかし、ほかに原因はないでしょうか?例えば、固定が悪く、ちょっとした体動で抜けてしまった、あるいは、何かのトラブルで患者が意識的に抜針したのかもしれません。このように原因としていろいろな可能性が考えられますが、私たちの思考は、「認知症だから自分で点滴を抜いた」と思いがちです。
 
 問題の原因や解決策を考える場合、あらゆる可能性を考え、発想することが大事です。私たちは無意識に、「こういうときにはこうだ」という既存の枠に当てはめてしまいます。問題解決をするときには、この枠を外して考えることが重要になります(図2)。
 
図2:既存の枠を取り払う思考(ゼロベース思考)
図2:既存の枠を取り払う思考(ゼロベース思考)

 既存の枠を外すポイントとして、次の2つを実践しましょう。
 

①プラス思考をもつ

 問題を解決しようとする場合、「もし△△が起きたら困る」「医師の協力がないから無理」など、できない理由を先に考えてはいないでしょうか?しかし、できない理由を並べても改善は進みません。そのような思考をマイナス思考といいます。
 
 できない理由を並べるのではなく、どうすればその障害を取り除くことができるかという、プラス思考をもちましょう(図3)。
 
図3:プラス思考とマイナス思考
図3:プラス思考とマイナス思考

②手段と目的を間違えない

 仕事に一生懸命になってしまうと、つい目的を忘れがちです。例えば、感染症対策委員になり、解決策として手指消毒液の消費量を決めたものの、なかなか消費されないことにイライラし、なんとか消費量を増やしたいと躍起になっても、思うように増えないとします。
 
 このようなときは少し冷静になって、そもそもの目的は何かを考えてみるといいでしょう。イライラしているのは、「手指消毒液の消費量を増やすこと」を目的と考えてしまっている可能性があります。
 
 そもそもの目的である感染症予防策としての手指衛生の方法について、どんなときにどんな方法で使用すれば効果的か、現状と目標のギャップを埋めるさらに別の手段を考えてみることで、新たな解決策が生まれることもあります。
 

2.仮説思考―仮説を立ててものごとを考える

 問題解決を進める際、現時点で「こうではないか」と自分の意見をもち、それを検証して進める方法をとると解決が効率的に進みます。そのような思考を仮説思考といいます。
 
 仮説思考には、①問題が起きている理由を考える場合と、②起きている問題の結論を考える場合の2つがあります。
 

①問題が起きている理由を考える場合→「Why(なぜ)?」を繰り返す!

 例えば、お金が貯まらないことが問題である場合、その理由やメカニズムを仮説的に思考していきます(図4)。ここで「Why?」を繰り返していくと、「誘われると断れないから」という理由が出てきました。その後、誘われると断れないことが、お金が貯まらない本当の原因なのかを検証していけば、スピーディーに問題解決を進めることができます。
 
図4:「理由の仮説」の立て方
図4:「理由の仮説」の立て方

②起きている問題の結論を考える場合→「So,What(だから、何?)」を繰り返す!

 結論を考える場合は、「So,What?」を繰り返す思考をしていきます。図5は、体重が増えた現状に対して、「So,What?」を繰り返すことで、仮説的に「週3回スポーツクラブへ行く」という解決策が出てきました。その結論がよいのか、ほかの方法がよいのか検証し、行動に移していきます。
 
図5:「結論の仮説」の立て方
図5:「結論の仮説」の立て方

 このように、問題を解決する際、自分でおおよその当たりをつけ(仮説を立て)、それを検証し実行するサイクルをまわしていくのが仮説思考です(図6)。
 
図6:仮説思考
図6:仮説思考

 院内の問題解決に際しても、いろいろな場面でこの仮説思考が応用できます。例えば、ICUがいっぱいで救急患者の受け入れができないとき、仮説的に、なぜ受けられない事態が起こっているのか理由やメカニズムを考えて、データを取ってみます。そうすることにより、情報の収集分析の効率がアップします。同様に、断らないためにどうするかの改善策も仮説的に考え、検証するサイクルをまわしていくことが、問題解決の早道になります。
 
 仮説思考を用いることで、やみくもにデータをいろいろ取って種々雑多な問題が浮かび上がり、何がどうなっているのか、頭がデータで麻痺した状態になるのを防ぐこともできます。
 

(ナース専科2018年3月号より転載)

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