【連載】教え方&指導術~中堅・ベテラン・看護学生編~

どうすればうまくいく? 看護学生への教え方

執筆 三宮 有里(さんのみや ゆり)

大阪市立大学大学院 看護学研究科 講師

組織の中心となって実習指導をする中堅看護師が、普段の指導内容を振り返り、問題や課題を解決する糸口になるような「教え方」のポイントを紹介します。また、これから実習指導を行う人は、実習指導に向けての心構えや準備の参考にし、実習指導のスキル向上に役立てていきましょう。


目次

※「ポイント1:実習のゴールを理解する」以下の閲覧はログイン(登録無料)が必要です。


実習指導がうまくいく!3つのポイント

 看護基礎教育における実習は、とても重要な位置づけを担っています。それは、学内で学習した知識や技術を実践の場で応用することにより、看護実践能力、人間関係形成能力、臨床判断や問題解決能力を高めること、さらには看護専門職の役割や責務への理解を深めることを可能にすると考えられているからです。実習は看護学生の学びにとって意義深いものであるといえます。
 
 一方で看護学生の実習指導をすることは簡単なことではありません。実習は中堅看護師が困ったことや苦労したことをよく体験する指導場面であり、実習指導と通常業務を同時に実施しなければならないプレッシャーのなかで、学生にどのように実習指導をしていったらよいのかと、多くの看護師がジレンマを抱えていることが推察されます。
 
 ここでは、実習の種類にかかわらず、どのような実習でもここだけは押さえたほうがよい、実習指導における「教え方」のポイントを説明していきます。
 

ポイント1:実習のゴールを理解する

 実習は、看護師養成機関における授業科目の1つです。授業それぞれに学習目標があるように、実習にも学習目標があります。実習の学習目標は、実習を終えたときに、学生は何ができるようになるのかを示しています。学習目標そのものを理解することは難しくないと思います。しかし、実習目標から実習前までの学習内容や、実習の前提条件を読み取ることはできません(書かれている場合は別として)。
 
 そのため、実習目標を見ただけでは、学生がこれまでの学内での学びを活用してどのようにしてこれらの目標を達成するとよいのか、どのくらい学生ができるようになればよいのか、わからないのが正直なところでしょう。
 
 教員と実習の打ち合わせをする際に、この実習において、学生が何ができるようになることを求めているのか、そうなるために学内ではどこまでの学習をしているのかをきいてみましょう。教員と実習について話し合うなかで、養成機関のカリキュラムや学習内容を把握し、実習のゴールは何かを理解していくことが大切です。
 

ポイント2:学生一人ひとりに合った学習支援をする


重要
①学生の「学習」をアセスメントする
②学生の学習課題を明らかにする


 中堅看護師の皆さんが、普段患者をアセスメントし、よりよい看護実践を目指しているように、よりよい実習指導を目指すには、学生の「学習」をアセスメントすることが重要であるといえます。
 
 学生の「学習」をアセスメントするには、「学生が実習で何を体験したのか」「その体験のなかでどのようなことが気になったのか」「何がうまくいかなかったのか」「それはなぜそのように思うのか」など、学生の体験、考えや思いを聴くことから始めることが必要です。
 
 学生と対話するというプロセスがあまり含まれていないと、自分の枠や軸、価値基準で学生の「学習」を見てしまい、学生一人ひとりにあった「学習」を支援するどころか、自分の「学習」を学生に押し付けてしまい、能動的に学習する学生の成長を止めてしまうおそれがあります。
 
 学生と対話するなかで、「学生の見ているものや感じていることを学生の視点から見ようとすること」「学生の学習の流れを汲み取ること」を常に意識して、学生が看護実践というプロセスのどこにつまずいているのかを分析し、学習課題を明確にしていくとよいと思います。
 
 そうはいっても、実習指導以外のさまざまな仕事を並行して行っている指導者にとって、学生と対話する時間を十分にとるのは、あまり現実的ではないかもしれません。そのような場合は、指導者として「一人ひとりの学生を理解する」ことができるように、教員をはじめとする実習指導にかかわる人と協力体制をとることが必要です。
 

ポイント3:実習環境を調整する


重要
①上司や同僚と学習環境を整える
②教員と実習指導の役割を調整する


 指導者が行うべき重要なことの1つに、学生が学習に集中できる適切な実習環境を整えることが挙げられます。実習は普段の学習環境とは異なる環境で行われるため、学生は戸惑いや緊張を感じています。ストレスの高い学習環境は十分な学習効果を得られない場合があるため、実習環境を調整すること、特に人的環境を調整することが重要だと考えます。
 
 指導者だけが学生の実習指導を行うという風土がある場合は、上司に相談して組織全体で学生の実習を支援するような仕組みをつくっていくことも必要です。学生と対話をする時間を多くとり、臨地における実習指導全体を見て、一人ひとりにあった学生の学習を支援するのであれば、学生と対話する時間を多くとることが必要です。学生が実施するバイタルサイン測定や清潔ケアなど、患者への直接的なケアの指導を同僚に依頼するのも1つの方法です。指導者以外の看護師にも実習指導のなんらかの役割を担ってもらい、学生の教育をする立場にあることを意識するよう働きかけるとよいと思います。
 
 また実習指導においては、教員と指導者のそれぞれの役割を確認しておきましょう。基本的に、実習における学生の学習に関する最終的な判断、それに伴う責任をとるのは教員を含む学校であり、臨地における看護ケアの最終的な判断、それに伴う責任をとるのは指導者を含む看護組織だと考えます。それを意識したうえで、教員と指導者それぞれが実施することを確認し、学生の学習をどう支援していくか、一緒に検討しながら実習指導を行うことが大切です。
 

看護学生をどのように教える!?

 看護学生に関するアンケートでは、実習指導で困ったことや苦労したことを回答してもらいました。「アンケート調査まとめ:看護学生(実習指導)の困りごと&悩みごと」で紹介された、特に多かった上位3項目と、見逃せない項目に対する「教え方」のポイントを解説します。
 

学生が勉強してこないをどうする?

勉強をしてこなかった理由を分析し、理由に合った対処法を検討しよう!
 「時間と労力を使って学生に指導をしたのに、学生が勉強してこなくてがっかりした」「勉強してこなかったとき、どう対応したらよいのかがわからなかった」ということが特徴的な意見から見てとれます。
 
 では、なぜ学生は勉強をしてこなかったのでしょうか。その理由は、①学習に向かう準備が整ってなかった、②何をどう学習するとよいのかわからなかった、③学習を継続できなかった、の3つに大別できると考えます。
 
 まず、1つ目の「学習に向かう準備が整ってなかった」のは、指導内容が頭に入っていかない状態にある、その内容がどう重要なのかがわからない、実習目標・内容との関連性がわからないときに起こると考えられます。「明日、○○さんは○○の手術を受けるから勉強してきて」「○○さんは○○という薬を服用しているから調べてきてね」という指導者からのアドバイスを受けて、学生が学習するには、アドバイス内容を聞き取れるだけの患者に関するデータや情報を、カルテなどから収集できていることが前提として必要になります。
 
 また、勉強したり、調べたりしたことが、どう看護ケアに活きるのかを理解していることも前提として必要です。まずは、課題の前提になっていることは何かを明確にし、ここまでの学習準備が整っているかを確認することが必要です。そして、ここまでの学習が進んでいないのであれば、まずは学生が学習に向かうための準備を整えられるように支援していく必要があります。
 
 学習に向かう準備が整っていても、「何をどう学習するとよいのかわからない」のであれば、学習は進みません。学生が自分で学習を進めていくためには、指導者側から学生に課題を提示するよりも、学生自身が自分の課題に気づき、どのように学習を進めるとよいのかがわかるように働きかけることが重要です。
 
 まずは、もう一度実習目標を確認し、学生が目標達成するために、現時点で何ができていないのか、それができるようになるためには、何を学習するとよいのかを、教員や他の実習指導をしているスタッフと検討しましょう。そのうえで学生と話し合い、「現時点の課題は何か」「その課題をクリアするためには何が必要か」「どんな学習をするとよいのか」「どう学習してくるのか」を、なるべく学生本人の口から言ってもらうようにします。このようにすることで、学習の責任は自分にあることを学生に意識させます。ただし、学習内容が多いと学生の頭はパンクしてしまい、結局勉強できなかった、どれも中途半端になってしまったということが起こる可能性があります。学習内容を整理して、優先順位をつけることも支援するとよいでしょう。
 
 最後に「学習を継続できなかった」のは、やる気が続かなかったことが大きくかかわっていると思います。やる気を引き出し、保つためには、学習を進めていくなかで“やればできそうだな”と思っているか、学習をした後に“やってよかったな”と思えたかが重要です。
 
 このことはARCSモデルで説明されています。ARCSモデルとは、学習意欲に関連する概念を「注意(Attention)」「関連性(Relevance)」「自信(Confi-dence)」「満足感(Satisfaction)」の4つに分類し、各領域において学習意欲を刺激し、保持するために何をすればよいのかについて考える方法を提供しているモデルです1)
 
 学生が勉強してこない理由を、学習のプロセスから分析し、そのプロセスにおける「教え方」のポイントを示しましたが、ARCSモデルの“やる気”という側面から分析し、「教え方」を検討するのもよいでしょう。なお、教え方を検討する際には『インストラクショナルデザインの道具箱101』2)を参考にしてみましょう。
 

学生にこちらの思いが伝わらないをどうする?

学生の緊張感をほぐすような伝え方をするとともに、学生の学習状況も把握しましょう!
 特徴的な意見のなかに、「説明しても反応が鈍かったり、理解してもらえないこと」「何度言っても気がつかない」「コミュニケーション障害かと思う学生もいる」という意見がありました。これに対して学生は、「(指導者の)説明が難しくてわからない」「なぜそうしないといけないのかがわからない」「緊張してうまく発言できない」と答えるかもしれません。
 
 伝統的な日本社会においては、意思の疎通に支障が生じた場合、受信者(本誌においては学生)の努力や理解力に問題があったとみなされてきました。しかし、昨今のコミュニケーションにおいては、発信者と受信者が存在し、成否にかかわらず、発信者・受信者双方の共同責任と捉えるのが一般的な考え方です3)
 
 学生が一方的に悪いと決めつけるのではなく、指導者は“こちらの思いを伝える”ためにどうしたらよいのかを常に考えて発信/受信することが必要です。学生は普段と異なる学習環境に緊張しており、指導者の表情や態度にものすごく敏感になっています。そのため、伝えたい内容を正確に伝達するときには、学生の反応を確認しながら学生の緊張を解き、自分の非言語的な表情や態度にも気をつけるようにしましょう。
 
 それでも学生に伝わらないことがある場合は、教員に相談し、学生の学習状況を把握するようにしましょう。学生にわかってほしいと思って伝えたことがあったとしても、それを理解するところに学生が達していないことがあります。学生の学習の流れを確認してから、伝達する内容を整理して、学生にこちらの思いを伝えていくとよいと思います。
 

学生の不適切な態度や言動をどうする?

すぐに指摘をし、その理由を尋ねましょう。ただし、学生の人格を否定するような表現にならないよう気をつけましょう!
 「きちんと挨拶ができない」、「他のスタッフと話しているのに急に話しかけてきた」「説明しているのにメモを取ろうとしない」「ナースステーションで他の学生と実習以外の話をしている」「壁に寄りかかって立っている」「患者さんにため口で話している」など・・・・・・。学生の言葉づかい、挨拶、態度は、実習指導で困ったことや苦労したことの第3位にランク付けされています。第5位の「専門職を目指す学生としてあるまじき態度」も似たような内容であり、実習指導において、学生の言葉づかい、挨拶、態度に頭を抱えている人が多いことがわかる結果になりました。
 
 臨地実習において、学生は単に学生として存在しているのではなく、一社会人、職業人、組織人、看護者として存在していることを自覚して行動することが求められています。頭ではこのことをわかっていても、自分の言動が相手にどう受け止められるのか、自分の言動は人にどのような影響を及ぼすのか、あまり考えずに発言したり、行動してしまっている学生がいます。
 
 学生が自分の言動に気づくようにするためには、指導者から見て、学生の気になる言動があった場合、できる限りすぐにその場で指摘することが必要だと考えます。ただし、学生が意図して(よかれと思って)ある行動をしたにもかかわらず、結果としてそれが不適切な態度や言動になってしまった場合もあるので、先になぜそのようにしたのか、理由を尋ねるようにしましょう。
 
 例えば、「○○さんは、患者さんと話しているときの言葉づかいが気になるのだけど」と言い、患者や患者の周りにいる人が学生の言葉づかいにどう反応したのか、どう感じているのか、見たり聞いたりしたことを事実として伝え、何がどのようにいけなかったのか、なぜそうすべきなのかを振り返ってもらうようにするとよいでしょう。
 
 学生一人ひとりに伝えてもよいと思いますし、グループ全体で、看護者としての言葉づかいや態度について、どうあるべきなのかを検討するように仕向けてもよいと思います。ここで、学生に注意や指摘するときに気をつけてもらいたいことは、学生の人格を否定するような表現をしないことです。あくまでも、学生の“ある言動”が問題であることを伝えて、何の問題を解決する必要があるのかを学生が理解できるように伝えることが必要です。教員や実習指導にかかわっているスタッフと相談しながら、学生に合った方法で、適切な言動、振る舞いについて指導するとよいでしょう。
 
 第4位の「学生のやる気がみられない」場合の「教え方」については、第1位の「学生が勉強してこない」理由の1つとして取り上げて、説明しました。第5位の「学生の理解度にバラつきがある」ことは自明なことであり、だからこそ学生の理解度を確認し、それに合わせて学習支援をすることが必要になると考えます。学生一人ひとりに合った学習支援をするためには、教員をはじめとした実習にかかわる上司や同僚と、学生にどうかかわるとよいのかを常に考えて、行動することが重要です。
 
 

引用・参考文献

1)J. M. Keller:Motivational Design for Learning and Performance 2009(鈴木克明監訳:学習意欲をデザインする ARCSモデルによるインストラクショナルデザイン. 北大路書房, 2010).
2)鈴木克明, 監:インストラクショナルデザインの道具箱101. 市川尚, 他編著. 北大路書房, 2016.
3)杉本なおみ:改訂医療者のためのコミュニケーション入門. 精神看護出版, 2013.

(ナース専科2018年5月号より転載)

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