【連載】あなたのリーダーシップ発揮法

自分へのリーダーシップとメンバーシップ力の高め方

執筆 土肥 加津子(どひ かずこ)

医療法人社団慈恵会 新須磨病院 看護部長


目次

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自分へのリーダーシップ

ケース紹介 看護師12年目の私。病棟を6年、集中治療室に6年勤務しています。今の部署は同僚と仲もよく、働きがいを感じています。ところが突然・・・・・・。

NG行動

上司「Eさん、お話があるの、後で少しお時間いいですか?」
「えっ、あっ、はい(何だろう、何を言われるんだろう・・・・・・不安だな)」
上司「来月から、手術室に異動してもらうことになりました。この集中治療室で培った力を、手術室でも活かして頑張ってもらえると心強いです。」
「えっ!? 手術室ですか?(その後、沈黙)」
上司「ええ、Eさんは難しい患者さんの術後ケアも看てきて、素晴らしい看護をしてくれたでしょう。その経験は、術前訪問や術後訪問にも大いに活かせると思うわ」
「もう少し集中治療室で働きたいです。まだ看ることができていない疾患や治療もありますし、仲間とも離れたくないです。どうして私なんですか。ほかにも、もっと・・・・・・私、辞めさせられるんですか?」
上司「えっ?辞めさせる?逆、逆ですよ。患者さんからも同僚からも医師からも信頼されているEさんだから、看護師としてもっと力をつけてもらえるだけでなく、同僚や後輩の指導・教育も期待されて異動になるのよ。Eさんがいなくなるのは大きな痛手だけど、私の部署のスタッフがそんなふうに認められて、誇らしいと思っているの」
「・・・・・・」
上司「・・・・・・」
「わかりました。断れないですもんね。つらいですけど、お受けします。ありがとうございました」
上司「不安なことがあったら、いつでも言ってね。1人で抱え込まないで一緒に考えましょう(納得していない様子ね、大丈夫かしら・・・・・・)」

OK行動

上司「Eさん、お話があるの、後で少しお時間いいですか?」
「えっ、あっ、はい(何だろう、何を言われるんだろう・・・・・・不安だな)」
上司「来月から、手術室に異動してもらうことになりました。この集中治療室で培った力を、手術室でも活かして頑張ってもらえると心強いです」
「えっ!? 手術室ですか?(その後、沈黙)」
上司「ええ、Eさんは難しい患者さんの術後ケアも看てきて、素晴らしい看護をしてきてくれたでしょう。その経験は、術前訪問や術後訪問にも大いに活かせると思うわ」
「もう少し、集中治療室で働きたいです。まだ看ることができていない疾患や治療もありますし、仲間とも離れたくないです(どうして私なんだろう?でも聞けないな、いつかは手術室にも行きたかったけど今は、どうしよう・・・・・・)」
上司「患者さんからも同僚からも医師からも信頼されているEさんだから、看護師としてもっと力をつけてもらえるだけでなく、同僚や後輩の指導・教育面でも期待されての異動になるのよ。Eさんがいなくなるのは部署にとっては大きな痛手だけど、私の部署のスタッフがそんなふうに認められるなんて、誇らしいと思っているの」

(1日だけ返事を待ってもらうことにし、家でゆっくり考えました。昨年、友人が異動したときのこと、恩師から言われた「何事もやってみることが大事。新しい自分発見につながる」という言葉などを思い出しました。12年も働いたのだから、そろそろ後輩や部署の役に立つことも考えないとな・・・・・・とも考えました。)

(翌日、上司へ返事を。)

「わかりました。まだまだやり残したことがありますし、私もこの部署が大好きだから未練がありますが、そんなふうに認めていただけたのは先輩やみなさんのおかげです。不安もいっぱいですがお受けします。看護の力をもっとつけて、またこの部署の役に立てるよう頑張ってきます!」
上司「不安なことがあったら、いつでも言ってね。私にも、手術室看護教えてね!」
「はい!」


自分で自分をリードするとは?

 看護師を続けていると、誰もが1度は「このままでよいのか」「もっと違う経験をする必要があるのではないか」と自身のキャリアに悩むことがあると思います。筆者も20代のころは、あれもこれも夢が膨らみ、「私のしたいことはこれじゃない」など、いちいち悩んでいたように思います。そして、30代になって、「強み」という言葉を知りました。自分の強みを考えたとき、これまでの経験で身につけたことこそが「自分の強み」だと気づきました。それからは、新しいことにチャレンジするというより、経験を活かしつつ、少し背伸びをした仕事内容や役割を進んで引き受けました。そうした新しい業務や機会に、自分の力を育んでもらったように思います。
 
 では、自分で自分をリードするとは、どんなことを意味するのでしょうか。
 

自分をプロデュースする視点を養う

 このケースの場面で、Eさんは、いずれにしても異動の申し出を受ける決断をします。しかし、NG行動とOK行動では、その受け止め方が異なります。
 
 NG行動では、自分自身で起こった出来事に驚いたまま、考える前に反応しています。そして、納得していないながらも、結果的には了承してしまいます。ですが、このまま手術室に異動したとしても、新しい職場で自らを鼓舞して仕事に臨むというわけにはいかなさそうです。不安や不満を抱えたまま、周囲の人の助けを受けながら仕事をこなすか、はたまた、ほかの大きなきっかけで手術室看護のやりがいに目覚めるか、とにかく、他力本願での毎日がしばらく続くということになりそうです。
 
 一方、OK行動では、突然の出来事に戸惑い、今の部署にとどまりたいと思う気持ちは同じでも、周囲の意見に素直に耳を傾け、受け入れるという行動がとれています。このような行動がとれていれば、たとえ手術室に異動したとしても、不安はありながらもチャレンジをしながら、自らの力で、看護の幅を広げようと努力していくことができるはずです。2つの行動の違いは、「看護師としての自分の目標があるか」「素直な心で自分で自分を高めたいと思っているか」ということでしょう。
 
 NG行動のなかにも目標はありますが、「仲がよい職場のみんなと離れる」という事態に強く意識がいってしまったため、異動をどうしても理不尽に感じてしまっています。それどころか「辞めさせられる」といったネガティブな反応にまで至っています。このように、ほかの意見を受け付ける余裕がなくなり防衛に入ってしまうと、素敵なアドバイスや評価の言葉も自分のなかに入っていきません。
 
 思い通りにならないことが多いのが人生です。他人任せ、環境任せではなく、自分で自分をプロデュースする視点をもつことができれば、チャンスをつかみやすくなり、職業人としてのキャリアも積んでいけるように筆者は感じます。
 

メンバーシップ力を高める

メンバーシップ力とは

 毎日の仕事でチームリーダーをしていると、「このメンバーだと今日はスムーズだな」「今日は残業になりそうだ・・・・・・」など、メンバーの顔ぶれによってリーダー業務がうまくはかどるときと、そうでないときがあることでしょう。それは、リーダーとメンバーの相性やパワーバランスが影響している場合もありますが、おおむね「メンバー」がもつ、メンバーシップ力によるものが大きいと思います。メンバーシップとは、リーダーシップの対語で、フォロワーシップとも呼ばれる考え方です。集団に所属するメンバーが、各自の役割を果たすことで全体に貢献することをいいます。
 
 では、このメンバーシップ力を身につけるには、どうすればいいのでしょうか。一番の近道は、メンバー各自が「リーダーの目線で物事を見て、聞いて、感じて、そのなかで、チームの一員としてできることを率先して行う」ことです。
 

メンバーシップ力で部長や師長を上手にリード

 以前、筆者が上司からもらったアドバイスのなかにこんなものがありました。「スタッフなら、日々看護師長の視点をもつ」「課長なら部長、部長なら社長の視点で物事を捉えないと、いい仕事はできない」という言葉です。これらの真意がわかるでしょうか。これらは、「自分が今いるポスト(ポジション)の立ち位置で物事を見ていても、メンバーシップ力は発揮できない」ということです。
 
 メンバーシップ力は、実は、先輩や上司を動かすことができる面白い力だと思っています。私も日々、看護師長やスタッフからの提案や依頼を受けては、「ん?これって上手に私を活用してるなぁ」と感心しています。ぜひ、メンバーシップ力を身につけて看護部長や看護師長をも上手にリードしてみてください。
 
(ナース専科2018年7月号より転載)

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