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進む肺がんの個別化治療 ALK陽性非小細胞肺がんにおける 個別化治療の進展と展望とは

2018年10月11日大手町サンケイプラザにて、ファイザー株式会社によるプレスセミナーが行われました。テーマは「進む肺がんの個別化治療 ALK陽性非小細胞肺がんにおける 個別化治療の進展と展望とは」。講演は日本肺癌学会理事長 近畿大学医学部 呼吸器外科 主任教授 光冨徹哉先生と、日本肺癌学会理事 兵庫県立がんセンター 呼吸器内科部長 里内美弥子先生です。

まず初めに、光冨先生が「ドライバー遺伝子異常をもつ肺がん分子標的治療の現状と展望」をテーマに講演されました。

肺がんの死亡率は年々増えている

 肺がんによる死亡率は年々上昇しています。肺がんは、がんの中でも特に致死率の高い疾患であり、2016年に肺がんで亡くなった人は73,838人で、1日に換算すると200人以上にもなります。

 2007年に行われた「Ⅳ期肺がんの化学療法の4群無作為比較試験(FACS試験)」では、肺がん治療における20世紀の到達点は、奏効率(ORR)~30%、無増悪生存期間(PFS)5~6ヵ月、全生存期間(OS)1年あまり、といわれていました1)。これらの試験からわかるように、これまで肺がんは、予後が悪い疾患の1つであると認識されていました。

 ちなみに、この頃の抗がん剤の作用は、DNA合成、RNA合成、タンパク合成などを阻害するものがほとんどでした。これらの合成はすべての細胞に必要なものであり、がんと正常細胞を区別することも困難でした。そのため、副作用も強く、使用量や使用期間に制限があり効果も制限されていたという状況でした。

肺がん治療は遺伝子レベルへと移行

 肺がんもほかのがんと同様、遺伝子の異常によって引き起こされます。肺がん治療の分野では、ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的薬が多く承認されている状況であり、年々新たな薬剤が開発されています。ドライバー遺伝子とは、がん細胞の増殖や生存が依存しているもののことです。

 同じ薬剤でも、遺伝子異常の有無によって効果の出方が変わるため、遺伝子異常を調べて患者さんに薬剤を投与することが、治療の肝となるのです。

ALK肺がんの発見

 2007年、肺腺がんにおけるEML4-ALKの遺伝子転座が発見されました2)。ALK肺がんは肺腺がんの3〜5%で、若年者に比較的多く、非喫煙者に多いという特徴があります。ALKチロシンキナーゼ阻害剤(以下ALK-TKI)が奏効することがわかっていますが、耐性ができてしまうため、治癒することはありません。

 ALK-TKIには、アレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブなどの薬剤がありますが、それぞれ耐性機構に違いがあります。耐性獲得は必発であり、例えば、効果の著明なアレクチニブという薬剤を使った場合は、G1202Rという治療の難しい耐性が出現します。どういう順番で薬剤を使うのかを考慮する必要があります。

肺がん治療のこれから

 分子標的治療の研究が進んだことにより、肺がんの一次治療は、ドライバー遺伝子の変異がある場合はその種類によって、変異がなければ免疫療法、など一人ひとり違うがんであるということを前提として行われるようになりました。効率のよい治療のためには、従来のような化学療法ではなく、遺伝子検査を行い治療選択を行うことが重要です。


続いて、里内先生が「第3世代ALK阻害剤の特性について」をテーマに講演されました。

ALK‐TKIは大きな力を持っている

 ALK融合遺伝子陽性の肺がんに対して、ALK‐TKIが大きな効果があることがわかっています。これまでの肺がん治療には、第1世代であるクリゾチニブと第2世代のアレクチニブ、セリチニブが使用されてきましたが、この度承認された第3世代のロルラチニブは、ALK-TKI使用後でも効果があるということが証明されています。

治験では大きな効果が証明された

 第2世代のALK阻害剤を使用した場合には、ALK‐TKIに強い耐性のある変異が出現する頻度が高く「耐性変異の克服」「血液脳関門の通過」がロルラチニブ開発の目的とされていました。

 日本人も参加した国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験では、前治療に「クリゾチニブを使用していた患者さん」「クリゾチニブ以外のALK‐TKIを使用していた患者さん」「2、3つのALK‐TKIを使用していた患者さん」という3つのグループに分け、197人に対する有効性を調べました。結果として、奏効率は全体の47%、頭蓋内病変のある患者さんでは53%に達しました。

 頭蓋内病変に関しては、ほとんどの患者さんに腫瘍の縮小がみられ、腫瘍が消失した例もありました。また、経時的変化率をみた結果、多くは1カ月程度の短期間で効果がみられました。

ロルラチニブにはどんな副作用があるのか

 もちろんどの薬剤にも副作用は存在します。ロルラチニブの場合、主な副作用には、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、浮腫などがあります。そのほか、認知障害や気分障害、言語障害などの中枢神経系障害がみられることもわかっています。中枢神経系障害というと心配になる人も多いのですが、この症状は「可逆的」であり「薬剤を中止することで改善」します。人や物を忘れてしまったり、ちょっとした間違いが多くなることはありますが、患者さん本人はその状態を自覚しています。実際に、休薬を繰り返しながら仕事を続けていた、という患者さんもいます。

「患者さんと一緒に治療する」ことを前提として

 治療時は、効果についてはもちろん、副作用についてもきちんと説明していかなくてはなりません。患者さんは薬剤の効果があると、ついつい頑張りすぎてしまうこともあるため、コミュニケーションをしっかりと取ることが必要です。近年、新薬が次々と開発されていますが、患者さんの状態や意見を取り入れながら、遺伝子に合わせて薬剤を使い分けることも、今後の課題となっています。

【引用・参考文献】

1)Ohe Y,et al:Randomized phase III study of cisplatin plus irinotecan versus carboplatin plus paclitaxel, cisplatin plus gemcitabine, and cisplatin plus vinorelbine for advanced non-small-cell lung cancer: Four-Arm Cooperative Study in Japan.Ann Oncol 2007;18(2):317-23.
2)Soda M,et al:Identification of the transforming EML4-ALK fusion gene in non-small-cell lung cancer.Nature 2007;448(7153):561-6.

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