【連載】すぐ実践できる! ぐっすり睡眠術

生体リズムを整えよう

執筆 菅原 洋平(すがわら ようへい)

ユークロニア株式会社 代表

睡眠マネジメントを実践していくために、基本の法則を習得していきましょう。


目次


4-6-11睡眠の法則

 私たちの睡眠は、「メラトニンリズム」「睡眠―覚醒リズム」「深部体温リズム」という、3つの生体リズムによって成り立っています。この3つのリズムを整えられれば、自分にとって最適な睡眠をつくることができます。
 
 この3つのリズムを整える方法を私たちの生活にあてはめると、睡眠の法則ができあがります。それは、「起床から4時間以内に光を見て、6時間後に目を閉じ、11時間後に姿勢をよくする」ことです。例えば、6時起床の場合、10時までに光を見て、12時に目を閉じ、17時に姿勢をよくします。この4-6-11睡眠の法則は、これまで睡眠マネジメント研修を行ったIT企業や製造業、運輸業など、さまざまな人たちに、実践・活用してもらっています。それぞれのリズムについて、詳しくみていきましょう。
 

メラトニンリズム

 メラトニンとは、1日の長さを決めているホルモンのことです。「1日は誰でも24時間じゃないの?」と思われるかもしれませんが、体内時計が刻む時間は人それぞれ微妙に異なっています。23時間台の人もいれば25時間台の人もいます。ちなみに、私たち日本人の平均は24.2時間とされています。
 
 脳に光が届くと、メラトニンの分泌がストップして、その時点から体内時計がスタートします。そのため、毎朝のスタートをそろえることで、24時間に合わせて生活することができるのです。そして、メラトニンの分泌がストップしてから16時間後(子どもは14時間後)に分泌が高まり、眠くなってきます。睡眠を整えようとするときには、眠る前にできることを思い浮かべがちですが、夜の眠気は朝の光でつくられているのです。
 
 メラトニンの分泌をストップさせるには、1,500~2,500ルクスの明るさが必要です。通常、部屋のなかの明るさは500ルクス程度です。そのため、自分は目覚めたつもりでいても、部屋の中央あたりで過ごしていたのでは十分な光を得られないため、メラトニンの分泌はストップせず、体内時計のスタートが遅れてしまいます。
 
 そこで、目覚めたら窓から1m以内にいるようにしましょう。窓から1m以内ならば、3,000ルクス程度の十分な光が得られます。窓際に行くというと、紫外線が気になる人もいるかもしれませんが、明るいところにいれば、直射日光を浴びる必要はありません。特に意識せずとも脳に光が届けられるよう、目覚めたら窓から1m以内で過ごす生活動線をつくってみましょう。スマートフォンをチェックしたり、テレビでニュースを見るなど、毎朝必ずしていることを窓際で行うようにすれば、自然と脳に光が届けられます。
 
 もし、休日や夜勤入りの日で、朝はゆっくり眠っていたいと思ったら、一旦、いつもどおりの時間に起きてカーテンを開け、窓際で二度寝をしてみましょう。目を閉じていても、脳に光を届けることはできます。朝になっても部屋が暗いまま、二度寝をしてしまうと、メラトニンリズムのスタートが大幅に遅れて、夜になっても眠気が訪れなくなってしまいます。
 
 生体リズムは、その振幅が大きいほど乱れにくくなります。朝にしっかりメラトニンを減らせば、それだけ夜のメラトニンは増えます。同様に、夜にできるだけ暗くしてメラトニンを増やすと、朝には自然に減って目覚めがよくなります。そこで、夜に意図的に暗くする時間をつくってみましょう。
 
 具体的には、夜リビングで過ごしているときに、5分でも10分でもよいので、部屋の照明を消して真っ暗にする時間をつくります。音楽鑑賞やストレッチなど、目を使わずにすむ時間をつくって、脳に「夜」であることを知らせます。真っ暗にするほどリズムをつくりやすいので、真っ暗のまま過ごるとベストですが、慣れないうちは、真っ暗にした後に照明をつけて明るくしても大丈夫です。
 
 また、入浴でもひと工夫してみましょう。入浴はリラックスできる感じがしますが、わりとすぐ近くに照明がある場合が多く、強い光でメラトニンが減ってしまいます。そこで、浴室の照明を消して脱衣所の照明だけで入浴してみましょう。暗いところで一定時間過ごすことができるため、入浴後は速やかに眠くなります。
 

睡眠―覚醒リズム

 2つ目は、睡眠―覚醒リズムです。昼休みを過ぎて、「よし!午後の仕事も頑張るぞ!」と思った矢先、会議やミーティングでウトウトと眠くなってしまうことがあると思います。これは、気合や緊張感足りないのではなく、もともと脳に備わっているリズムが関係しています。
 
 脳は、1日に2回、必ず眠くなる仕組みになっています。起床から8時間後と22時間後です。朝6時起床の場合は、14時と明け方4時に眠くなるわけです。昼過ぎの時間帯や、夜勤で朝を迎える時間帯に集中力を欠いたり、ぼんやりしてしまうのは、睡眠―覚醒リズムの仕業なのです。
 
 この時間帯の眠気を避けるには、眠くなる前の起床6時間後に1~30分程度、目を閉じて、脳を休ませることが有効です。この方法は、計画仮眠や戦略仮眠と呼ばれていて、実施するには次の4つのルールがあります。
 

ルール1:眠くなる前に目を閉じる

 仕事中、眠気を我慢していたのに、限界がきてうとうとすると、ハッと目覚めた後も、頭がボーっとして、またウトウトしてしまうことがあります。これは、睡眠慣性という現象です。
 
 脳が睡眠に入り深い睡眠の脳波が出始めると、途中で目が覚めても睡眠の脳波が残ってしまいます。睡眠も車と同じように、急には止まれないのです。
 
 これを防ぐためには、眠くなる前に先手を打って眠気を取り去る必要があります。睡眠―覚醒リズムでは、起床から8時間後に眠くなるので、その2時間前の起床6時間後あたりが狙い目です。日勤であれば、ちょうど昼休みの時間にあたります。この時間はまだ全然眠くないかもしれませんが、ここであえて目を閉じることで、午後の眠気を先に取り去っておきましょう。
 

ルール2:仮眠の時間は1~30分まで

 1~5分程度目を閉じるだけでも、頭をスッキリさせることができます。トイレに行ったときなど、ちょっとした伱に目を閉じてみましょう。
 
 ここで覚えておきたいのが、脳は視覚を遮断しない限り、休憩できない器官であるということです。目を開けていては見た映像をどんどん取り込んで分析してしまうため、必ず目を閉じるようにしましょう。6~15分目を閉じると、脳内に溜まった睡眠物質が分解されて作業効率が回復します。時間に余裕があるときは、この程度の仮眠が最適です。
 
 休日に仮眠をするときには、30分を超えないように注意しましょう。30分を超えてしまうと、夜の深い睡眠の脳波が出てしまい、夜の睡眠分が使われるため、夜にぐっすり眠れなくなってしまいます。
 

ルール3:座ったまま目を閉じる

 人間の脳は、重力に対して垂直になっていると、深く眠れません。仮眠のときは深く眠ってしまうのを避けるため、座ったまま頭を固定するようにしましょう。図4のようにネックピローを使ったり、背もたれや壁に寄りかかるなどして、そのまま目を閉じます。
 
 反対に身体の疲れを取りたいときには、できるだけ脳を水平にすることが大切です。「眠気を取り去りたいときは垂直」「疲れを取りたいときは水平」と覚えて使い分けましょう。
 

ルール4:起きる時間を3回唱える

 「1分後に起きる」と頭のなかで3回唱えて目を閉じると、1分の少し前に心拍数が上がってきて身体が起きる準備をします。これを自己覚醒法と呼びます。仮眠は、脳に睡眠という作業をさせるため、その作業のゴールを設定すると、目覚めたときに、ぼんやりせず仕事を再開できます。
 
 これらの4つのルールをうまく使って、スッキリした頭で仕事に臨みましょう。
 

深部体温リズム

 3つ目の深部体温リズムは、睡眠の“質”に関係しています。深部体温は直腸体温とも呼ばれます。人間は、深部体温が高くなると活発になり、低くなると眠くなります。
 
 深部体温にはリズムがあり、起床から11時間後(6時起床の場合は17時)に最高体温になり、22時間後(6時起床の場合は、明け方4時)に最低体温になります。体温が最高になる起床11時間後に居眠りをしてしまうと、夜になっても体温が下がらずに寝つきが悪くなります。
 
 日勤を終えて、夕方帰宅中に電車でウトウトしたり、夜勤明けの夕方に眠ってしまったことで、夜になっても目が冴えてしまい、なかなか眠れなかった経験はありませんか?夕方の深部体温が上がるほど、夜間には急激に下がって深く眠れます。夕方に眠ることを避けて、できるだけ身体を動かすようにしてみましょう。筋肉が熱を産生するので、身体さえ動いていれば深部体温を上げることができます。
 
 夕方に仮眠することは避け、それができたら、横になるのも避けましょう。そして、座っているよりは、立って何か作業をしていたほうが体温が上がり、歩いたりエクササイズをすればより上がります。このように、特に意識せず普通に生活しているだけで、夕方には体温が上がるような生活スケジュールをつくってみましょう。
 

生体リズムを変えるには週4日以上の実行がカギ

 ここまで解説した3つの生体リズムは、行われた日数が多いリズムに同調するという仕組みをもっています。つまり、過半数を適切なリズムで過ごすことができれば、生体リズムを変えることができるわけです。1週間(7日)のうち、過半数である4日以上実行できればよいため、日勤の日に加え、休日に実行できればよしとするなど、無理なく取り組んでみましょう。逆をいえば、週に4日間が乱れた生活になってしまうと、その乱れたリズムが基準となり、整っているリズムも同調して乱れるので注意してください。
 
 また、生体リズムは、2週間単位で変化します。2週間リズムのことを、サーカダイセプタンリズムと呼びます。何かの生活習慣を変えようとしたとき、2週間後にちょっとした変化が起こります。
 
 例えば、「今までは、朝目覚めてから身体を起こせるまで1時間かかっていたのが、30分程度でベッドから出られるようになった」とか、「夕方に仮眠をすると2時間くらい眠ってしまっていたのが、1時間で起きられるようになった」というようなものです。劇的な変化ではないのですが、確実にみられる小さな変化です。そしてそれが、さらに2週間経過した1カ月後には、大きな変化になります。
 
 こうして1カ月で自分が理想とするリズムをつくれたら、その後は特に意識をしていなくても、6カ月後、そして1年後も、整ったリズムを保つことができるということが明らかになっています。そのためには、最初の2週間が重要です。2週間でしっかりと基準をつくるという気持ちで、取り組んでみてください。
 

自分に合ったリズムを探して良好なコントロールを

 生体リズムには、もう1つの特徴があります。3つのリズムのうち、1つだけ選んで整えると、ほかの2つのリズムも勝手に同調して、すべてが整うということです。例えば、「夕方に運動するように心がけていたら、自然と朝、自分で起きられるようになった」「いつも眠かったのが、朝、光を見ることを意識していたら、大体同じ時間帯に眠くなるようになってきた」といったことです。
 
 つまり、すべてを実行しようとせず、自分が最も簡単に実行できそうなこと1つに絞って実践することが、自分の生体リズムをうまくコントロールするコツです。
 
 実は、3つの生体リズムのうち、どのリズムに自分が最も影響を受けるのかは、遺伝子によって決まっていると考えられています。例えば、光への感受性が強い人は網膜の細胞が豊富にあり、光の影響を受けやすいことから、朝は光を浴び、夜は暗くすることでリズムが整いやすい傾向があります。一方で、日当たりの悪い部屋に引っ越したりすると、途端に眠れなくなることもあります。このように、強く影響を受ける因子によって、よくも悪くも作用するのです。
 
 3つの生体リズムのどれに反応するのかを、簡単にチェックできるリストをつくりました(表2)。リストをもとに、自分にあてはまりそうなものをみつけてみましょう。また、実際に生体リズムをコントロールし始めると、何によって最も整いやすいのかがわかってくるはずです。日々実証しながら、みつけていきましょう。
 
表2:3つのリズムの感受性判定チェック例
表2:3つのリズムの感受性判定チェック例

「4-6-11睡眠の法則」実践方法

 本Partの最後に、4-6-11睡眠の法則の実践方法を紹介しましょう。この法則は、起床時刻が起点となります。つまり、どんな起床時刻の人でも活用できます。
 
 例えば、夕方18時に起きて夜に働く人の場合は、次の3つのポイントを意識し、実行するようにします。
①目覚めたらできるだけ早いタイミングで照明に近づき、人工的に太陽光と同じ程度の光をつくる「光目覚まし」を使って脳に光を届ける。
②6時間後の0時頃に計画仮眠をする。
③起床11時間後の朝方5時には、できるだけ眠らずに身体を動かして体温を上げる。

 このように、自分にとっての朝と夜をつくり、体温が最高になる時間をつくると考えれば、体調不良は防げます。24時間社会をうまく乗り切るために、4-6-11睡眠の法則をうまく活用しましょう。
 

参考文献

●菅原洋平 著:あなたの人生を変える睡眠の法則,自由国民社,2012.

(ナース専科2018年9月号より転載)

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