【連載】すぐ実践できる! ぐっすり睡眠術

良質な睡眠をとるためのコツとポイント

執筆 菅原 洋平(すがわら ようへい)

ユークロニア株式会社 代表


目次


元気になれる睡眠のポイントを学ぼう

調子を崩す人と元気な人違いが生まれる4つのポイント

 ここまでは、基本的な睡眠の整え方について解説しました。「話はわかったけど、夜勤があるから無理」と思った人もいるかもしれません。たしかに交替勤務は過酷ですが、あきらめないでください。
 
 筆者は普段、さまざまな交替勤務者の睡眠マネジメントを行っていますが、どの職場にも、同じ勤務形態にもかかわらず、調子を崩す人と元気な人がいます。二交替勤務でも三交替勤務でも、調子を崩してしまう人と元気な人のそれぞれの典型的なパターンがあります。いつも元気な人というのは、効率よく睡眠をとる技術が高い傾向にあります。睡眠は技術ですから、その仕組みを知ることができれば、どんなシフトであっても、身体や心へのダメージを最小限に抑え、安全で確実な仕事を実行することができます。
 
 調子を崩す人と元気な人の違いには、4つのポイントがあります。それぞれ詳しくみていきながら、自分の勤務に採用できる方法をみつけてみてください。
 
ポイント1:累積睡眠量を増やす
 1つ目のポイントは、実は準夜勤や夜勤の日の過ごし方ではなく、日勤や休日の過ごし方にあります。調子を崩す人は、日勤の夜と休日の夜の睡眠が、元気な人に比べて30~60分程度短いことがわかっています。
 
 日勤を終えた夜や休日の夜は、自分のために使える大切な時間です。ストレスやプレッシャーから解放されてようやく手に入ったこの時間に、ストレス解消にとネットサーフィンをしたり、動画を見ていたら、知らない間に夜中になっていたということはありませんか?
 
 「元気な人はこの時間をどうしているか?」というと就寝しています。といっても、それほど早寝ではありません。普段よりもほんの30分程度早く、寝ているだけです。ですが、日勤と休日を合わせて週4日だとして、1日あたりの睡眠が30分長くなると、1カ月の累積睡眠量は8時間増えることになります。これは、1日分、余分に睡眠がとれたことに相当します。累積睡眠量を増やせるチャンスを逃さないようにしましょう。
 
ポイント2:起床時刻の差を3時間以内にする
 「今日は夜勤だ」という日は、「ギリギリまで眠っておこう!」と考える人も多いでしょう。夜勤で眠れなくなるから、今のうちに睡眠を稼いでおこうという考えからきていると思いますが、この方法でうまく疲れがとれていますか?もしかしたら、途中で目覚めてはまた眠るということを繰り返し、頭が痛くなったり、身体がだるくなっていませんか?
 
 人間の睡眠は、起きる時刻の3時間前から血圧や血糖値が高まり、起床準備をするコルチゾールが分泌されます。このコルチゾールは、分泌時間が決まっているホルモンです。いつも日勤の日に6時に起きている人は、夜中の3時から分泌が始まり、6時にピークになり、その後急激に低下するというリズムがつくられています。
 
 ところが、夜勤入りの日に昼過ぎまで眠っていると、6時に来るピークは低くなり、その後も緩やかに分泌が続き、最終的に起床した時刻に急激に分泌されます。コルチゾールが急激に分泌されると、イライラしたり、やる気がなくなってしまいます。これは実験データではありませんが、シフトワークの現場での睡眠の記録をみると、日勤と夜勤入りや休日の起床時刻の差が3時間以内の人は、メンタルの不調はなく元気です。逆に、欠勤が多かったり疲れている人は、起床時刻の差が3時間以上あるという傾向がみられます。
 
 コルチゾールは、時間によって分泌が決まるため、いつも同じ時間に目覚めていれば、常にその3時間前から規則的に分泌されます。
 
 交替勤務でも元気な人は、夜勤入りの日でも9時頃には一旦起きて、昼頃に仮眠をしています。こうすることで、脳に光を届けてリズムを保ちつつ、足りない睡眠量を補うことができます。夜勤入りや休日でも、日勤の起床時刻から3時間までには一度起きてみてください。
 
ポイント3:アンカースリープをつくる
 起床時刻をそろえたり、計画仮眠を実行するなど、普段から意図的に睡眠をコントロールしていると、仮眠をとったときに眠りすぎることなく、スッキリと起きられるようになります。
 
 交替勤務で調子を崩してしまう人の特徴は、仮眠休憩で眠れないことです。そうした人に話を聞くと、「起きられなかったら困るので眠らずにいる」という意見が多く聞かれます。不用意な時間にウトウトしたり、休日の朝に寝だめをすると、仮眠をしたときに眠りすぎてしまい、無理に目覚めようとすると、頭が痛くなったり身体がだるくなってしまいます。仮眠休憩をとることで、かえって調子を崩してしまうため、それなら眠らないほうがましと、眠らずにいようと考えてしまうのです。
 
 一方、元気な人は、仮眠休憩でしっかり眠っています。これには1つポイントがあります。仮眠休憩は、夜の早い時間帯の場合と明け方近い時間帯の場合があると思いますが、どちらの時間帯でもよいので、1週間を通して「その時間帯は必ず眠っている」というリズムをつくってみましょう。
 
 例えば、夜勤の日に0時から2時に眠るのならば、休日や日勤の日も0時から2時は、極力眠る時間にあてます。この必ず眠っている時間帯のことをアンカースリープといいます。生体リズムに錨を下ろして固定するように、アンカースリープがつくられれば体調不良を最小限に抑えられます。
 
ポイント4:メジャースリープで強化する
 4つ目のポイントは、夜勤明けの休みの過ごし方です。脳は、眠らずに翌日を迎えると、徐々に覚醒が高まります。夜勤明けの午前中には妙にハイテンションで眠くないのに、昼過ぎから夕方の時間にかけて猛烈に眠くなります。
 
 ここで、睡眠圧の仕組みを思い出してみましょう。これは、連続覚醒時間が長いほど、その後の睡眠が充実する仕組みですから、夜勤明けには睡眠圧がものすごく高まっていることになります。そのような状態で昼過ぎに眠ってしまうと、この睡眠圧を使い切ってしまうので、今度は夜になっても眠くならず、夜中の3時頃まで起きていることになってしまいます。
 
 本来眠る時間の睡眠をメジャースリープ、仮眠をマイナースリープといいます。昼過ぎに質のよい睡眠を使ってしまうと、「この時間帯がメジャースリープか?」と脳は勘違いしてしまい、次の日の夕方に眠くなったり、夜の睡眠が浅くなってしまいます。
 
 元気な人は、夜勤明けにあえて出かけたり、人に会うなどして眠らずにいて、夜の早い時間から翌朝まで一気に眠ります。このように、睡眠圧を最大限まで高めてメジャースリープを強化すると、翌朝にはかなり回復するはずです。夜勤明けに起きているのは大変だと思いますが、比較的、調子がよいときに試してみてください。
 

快眠のコツをマスターしよう

 ここからは、今日からでもすぐに試すことができる快眠のコツをみていきましょう。

耳から上の頭を冷やす

 眠れないときは、大脳の温度が高い状態になっています。大脳も器官なので、温度が高いということは深部体温が高いということです。そのまま就寝しようとすれば、寝つきが悪くなり、深い睡眠が得られなくなります。そこで、耳から上の頭を冷やして眠ってみましょう。大脳は、周りに筋肉や脂肪が少なく、外部の温度の影響を直接受けやすい部位です。本来ならば、眠る時間帯には温度が下がるはずですが、高い温度が保たれていた場合、物理的に冷やして温度を下げます。
 
 保冷材や冷凍したタオル(乾いたものを冷凍する)などを、耳から上の頭に敷いて眠ります。実際にやってみると、耳から上はかなり上に感じられると思います。一見、首のあたりを冷やしたほうが頭の位置が落ち着く感じがするかもしれませんが、耳から下の首の位置が冷えると、生命維持の働きを担う脳幹の活動が低下するのを防ごうと、大脳は逆に覚醒してしまいます。そのため、耳から下の首のあたりは冷やさないように注意しましょう。
 
 特に、寝る前にパソコンやスマートフォン、テレビなどの画面を見る習慣がある人は、この方法を試してみてください。画面を見ると大脳の温度は上がります。そのまま眠ると深く眠れないため、大脳の温度を下げる対策が必要となります。
 

足首を温める

 足首が温まると、足の裏から汗をかきます。この汗が空気に触れて蒸発することで、その気化熱で血液の温度が下がります。そして、温度が下がった血液が内臓をめぐると、内臓の温度である深部体温が下がって眠ることができます。これが、人間が眠る仕組みです。この生理現象を促せば寝つきがよくなり、深く眠りやすくなります。しかし、眠るときに靴下を履いてしまうと、気化熱が生じにくくなり、眠りは浅くなってしまいます。眠る前に足首を温めるには、レッグウォーマーが最適です。
 
 また、入浴せずにシャワー浴だけですませる場合は、シャワーの最後に両足首のくるぶしに10秒ずつシャワーをあててからあがるようにしましょう。
 

入浴と就寝は1時間あける

 「温かくして眠るとよく寝つける」と言われていますが、入浴直後に就寝しようとすると、むしろ寝つきが悪くなってしまいます。入浴すると深部体温が上がり、その反動で、頭や足の裏から放熱し、1時間後に急激に体温が下がります。このタイミングで就寝すると、最初の睡眠を深くすることができます。体温が上がるほど下がるのに時間がかかってしまうため、熱めのお湯(42℃以上)に浸かる場合や、夜に運動する場合は、就寝のタイミングを遅らせるようにしましょう。
 
 また、遅い帰宅などのせいで、遅い時間に入浴して、すぐに就寝しなければならないときは、あえて30分程度就寝を遅らせてみましょう。睡眠は、最初しか深くならないので、深い睡眠を阻害しないようにするためです。睡眠時間が減る感じはしますが、このほうが深く眠ることができ、身体は回復します。
 
 夏は、就寝1時間前に、枕やタオルケットを裏返してベッドを露出させ、エアコンをかけましょう。寝具と寝室にこもった熱をとったところで、入浴後の熱い身体で寝室に入るようにすると、汗が蒸発して体温が奪われ、最初の睡眠が深くなります。
 

首と仙骨を温める

 自律神経である交感神経と副交感神経は、朝は活動が高まり、夜は低下します。ただし、交感神経のほうが高低差が大きいため、朝には交感神経が優位になり、夜には副交感神経が優位になります。この起床後と就寝前の、交感神経と副交感神経が入れ替わるタイミングでスムーズにスイッチすると、寝起きも寝つきもよくなります。
 
 副交感神経節は首と仙骨にあります。神経活動は、温度が上がると活発になるので、睡眠の質を向上させるには、就寝前に首と仙骨を温めることが大切です。就寝30分前を、温め始める目安としましょう。
 
 ただし、電気毛布、電気あんか、貼るカイロなど、一定の温度を人工的に保つ方法は適しません。深部体温が低下しないと深い睡眠は得られないため、首と仙骨を温めるときには、ホットパックや湯たんぽなど、自然に冷めていくグッズを使いましょう。
 

夜の照明を暗くする

 起床後に意図的に光を浴びて「朝をつくる」のと同様に、「夜をつくる」という発想が必要です。脳は、真っ暗な環境に置かれるとメラトニンを分泌します。そこで、前述したように、目を使わなくてもよい活動をしている時間があれば、その時間は思い切って真っ暗にしてみましょう。
 
 例えば、入浴中、ヨガやストレッチ、音楽鑑賞などをするときは照明を消してみましょう。用事が終わったら照明をつけても大丈夫です。脳に「夜」がきたことを明確に知らせることが大切です。
 

ひざ下に冷温水をかける

 入浴後に、洗面器でひざから下に水をかけ、次にお湯をかける、これを3回繰り返します。交代浴は自律神経の反応を促進するのに役立ち、手軽に行うにはひざ下が有効です。
 
 身体の水分は、重力によって足に溜まります。これを循環させるために、ひざから下の血流により、重力に対抗して水分を吸い上げる必要があります。冷たい水をかけると血管が閉まって血圧は上がり、お湯をかけると血管が緩んで血圧は下がります。刺激に対する反応を鍛えることで、朝にスムーズに血圧が上昇するよう促します。
 

参考文献

●菅原洋平 著:あなたの人生を変える睡眠の法則,自由国民社,2012.

 
(ナース専科2018年9月号より転載)

ページトップへ