【連載】すぐ実践できる! ぐっすり睡眠術

薬に頼らない睡眠をめざそう

執筆 菅原 洋平(すがわら ようへい)

ユークロニア株式会社 代表


目次


睡眠改善には睡眠記録が必須

 「どうしても眠れない」「飲まないと不安」「眠れないと明日の仕事に影響する」などの理由から、睡眠薬を服用している人もいるかもしれませんが、これまでの話で、「睡眠薬さえ飲めば眠れる」という考えは修正できたと思います。眠りは、あくまでも自分の力を鍛えていくことが前提で、それを一時的にサポートするのが睡眠薬の役割です。
 
 まず、睡眠薬を飲んだり飲まなかったりするという飲み方はやめましょう。「本当は飲みたくないから飲まないようにしているのだけど、不安になって飲んでしまう」という飲み方では、睡眠薬もしっかり効かず、睡眠も改善せず、だらだらと飲み続けることになってしまいます。まずは2週間、現在処方されている薬を毎日しっかり飲みます。そのうえで、睡眠の法則にしたがって睡眠を鍛えます。
 
 また、「睡眠薬はその日眠るために飲む」と考えがちです。しかし、この考えでは、「眠る直前に飲む」ということになり、服用する時間がバラバラになります。そこで、睡眠薬を使って、「脳に鎮静する時間帯を教えていく」と考えましょう。そして、服用時刻をほぼ同じになるように固定します。例えば、「22時30分~23時の間に飲む」という感じで、30分程度の幅があってもかまいません。服用する間は、睡眠の記録をつけることをおすすめします。睡眠の記録は、横軸に時間を書き、眠った時間を塗りつぶして、ベッドにいた時間に矢印を引く、というルールで記入します。
 
 睡眠の記録は、正確に記録をすることが目的ではありません。自分がどのくらい眠っていたという感覚を鍛えることが目的です。ですから、夜中に目覚めた時間を記入したり、回数を記録する必要はありません。もし目覚めたら、大体の時間を「適当に」記入してください。そのときに、意外とスッキリしていたら、就寝から3時間は経過しています。頭が重く、ぼーっとしていたら、3時間以内に目覚めています。これを参考に、自分の睡眠感を鍛えていきましょう。睡眠の記録用紙である「neru noteTM(ネルノート)」(図4)は、ウェブサイトhttp://nerunote.com/trialsheet/からダウンロードできます。
 
 この方法で、2週間~1カ月以上経過し、明らかに夜に睡眠薬を飲む前から眠くなったり、朝目覚めたとき頭がぼーっとして睡眠薬が抜けていない感じがしてきたら、睡眠薬を減薬するタイミングです。
 
neru noteTM(ネルノート)
neru note<sup>TM</sup>(ネルノート)

漸減法と隔日法

 睡眠薬は減薬をするときには、まず処方している医師に確認し、OKをもらったら実行しましょう。
 
 睡眠薬は、急にやめてしまうと、反跳性不眠という現象が生じ、一気に眠れなくなってしまいます。そこで、減薬していく場合には、漸減法と隔日法という2つの方法を用います。
 
 漸減法では、まず今飲んでいる錠剤を半分に割って、2週間同じ量で固定します。例えば、2錠飲んでいたら1錠と半錠を一緒に飲む、1錠飲んでいたら半錠飲むという具合です。そこから2週間、睡眠の記録をつけて、薬を減らす前と減らした後の睡眠の記録がそれほど変わらなければ、減らした分は効いていなかったということになります。自分の脳でつくられる物質に対して、薬で追加した分が多過ぎれば、その分は尿から排出されています。漸減法と睡眠記録で、どの量までが効いているのかを明らかにしていくのです。
 
 この方法を繰り返し、いよいよ半錠のみとなったところで、隔日法に切り替えます。これは、飲んでいない日を定期的につくる方法です。まずは、休前日に休薬をしてみましょう。「次の日は休みだから、もし眠れなかったとしても大丈夫」という日を狙って休薬をします。
 
 休前日に休薬をしても眠れたという状態が2週間継続できたら、休前日+1日を休薬日として、休日間の中頃にもう1日休薬日をつくり、その状態で2週間を経ても睡眠を変わらずにとることができれば、そのまま休薬してもよいでしょう。もし心配ならば、最後に目的的服薬として、休日の夜だけ、翌日に備えて飲みます。
 
 睡眠薬を減らすときには、自分と睡眠薬との信頼度合いを判断基準にしましょう。たとえ服用前に明らかに眠い状態になっていても、「飲まないと眠れない」「飲めば眠れる」と、睡眠薬に信頼をおいているうちは、まだ減薬のタイミングではありません。自分の脳が、自前の物質で眠れる状態になると、「飲まなくても眠れるかも」「飲んでいるけどあんまり意味がないかな」という気分になってきます。ここが減薬スタートの時期です。臨床的には、この感覚を基準にすると、成功することが多くなります。
 
 いかがでしたでしょうか。睡眠は誰もが共通してもっている生理学的なツールです。これをうまく活用できるかどうかが、毎日の仕事を充実させるカギになります。まずは、睡眠を変えることで頭や身体が変わることを実感してみてください。そして、周りの人や患者のケアにも役立てて、睡眠マネジメントを看護師の標準的な技術にしていきましょう。
 
 


Column 患者にも使える! 簡単睡眠ケア

 睡眠の仕組みがわかってくると、「これって患者さんにも使えるかも?」という考えがわいてきませんか?よく「医療従事者にとって睡眠薬は下剤のようなもの」と話すことがありますが、これまでは患者から「眠れない」と訴えられたら、睡眠の中身に目を向けずに、すぐに睡眠薬を処方するという程度の位置づけだったということでしょう。それがもし、病棟や外来で、薬に頼らない、ちょっとした睡眠指導を看護師ができたら、患者の満足度を上げられると思いませんか?
 
 睡眠不足が、認知症や生活習慣病の原因になり得ることは明らかになっており、2017年には、睡眠負債という言葉が話題になりました。ここで、根本的な疑問に立ちかえってみると、人はなぜ、眠るのでしょうか。この疑問には、これまで科学的な答えが出ていなかったのですが、1つの答えが明らかになっています。睡眠物質は、睡眠中に分解されるのですが、分解されずに残ると、異常たんぱくのアミロイドβになります。アミロイドβは、認知症の原因物質の1つであると考えられています。最近、脳にもリンパがあることが明らかにされ、動脈から静脈にアミロイドβを流して排泄していると考えられているのです。
 
 睡眠改善は、認知症ケアに使えるということに着目した病院では、さまざまな取り組みを行っています。例えば、朝の検温のときに患者を窓際に連れていく、デイルームの照明を2倍の明るさにする、入浴時間を午前中から15時に変える、夕方にレクリエーションなどをして身体を動かしてもらうなどです。
 
 これらの工夫によって起こる変化で最も多いのが、夜間の徘徊が減るということです。患者が心地よく眠れることも、もちろん大切ですが、同時に夜勤中のトラブルを防ぐことにもつながり、看護師自身の負担を減らすことができるのです。
 
 現在の職場ですぐに取り入れることは難しいかもしれませんが、今の業務の流れや病室の環境を、「睡眠」を中心にして振り返ってみてください。「これって結果的に、医療として非効率なのでは?」と疑問に思うことがあったら、医療ケアの見直しを図り、業務改善(QC活動)として解決策を検討してみると、組織として導入しやすいと思います。
 

参考文献

●永田奈々恵, 他:プロスタグランディンD2とアデノシンによる睡眠調整. BRAIN and NERVE 2012;64 (6):621-8.
●Nedergaard, M:Neuroscience. Garbage truck of the brain. Science 2013;340 (6140):1529-30.
●厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ:睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン, 2013.
●菅原洋平 著:あなたの人生を変える睡眠の法則,自由国民社,2012.

(ナース専科2018年9月号より転載)

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