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【連載】知っておきたい!肝胆膵疾患

胆嚢炎とは?看護ケアのポイント

執筆 市川佳孝

群馬大学医学部附属病院 看護部

監修 犬飼道雄

岡山済生会総合病院 内科 主任医長

目次


胆嚢炎とは

 胆嚢は肝臓の右下面にあるナス形の袋状の臓器で、肝臓が分泌した胆汁を一時的に貯蔵し濃縮します(図)。
 
 胆汁は肝細胞で生成される黄褐色でアルカリ性の液体で、1日に約500mL分泌されます。食事をすると胆嚢が収縮し、貯蔵されていた胆汁が肝外胆管に送り込まれ、十二指腸に流出します。胆汁の出口である十二指腸乳頭部にはオッディ(Oddi)括約筋があり、乳頭を開いたり閉じたりして胆汁の十二指腸への放出を調節したり、十二指腸の中に食べ物や腸液が胆管内に入るのを防ぐ働きをしています。
 
 胆嚢は機能上、結石ができやすく、胆汁のうっ滞・停滞が起こりやすい器官です。この結石や胆汁のうっ滞・停滞などにより胆嚢に炎症が生じる状態を胆嚢炎といいます。

図 胆嚢の構造
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胆嚢炎の分類と原因

 胆嚢炎は、突然激しい症状を呈する急性胆嚢炎と、軽度の症状が持続して起こる慢性胆嚢炎に分類されます。それぞれについて以下に説明します。

急性胆嚢炎

 急性胆嚢炎の8~9割は、胆嚢内に結石が認められる有石胆嚢炎で1)、残りを無石胆嚢炎が占めています。日本人の胆石保有率は年々増加傾向にあります。その原因として、食生活の欧米化や高齢化などが挙げられます。
 
 有石胆嚢炎では、結石が胆嚢管に嵌頓することで、胆嚢虚血や胆嚢内胆汁のうっ滞が起こり胆嚢に炎症を来たします。炎症の進行に伴い胆嚢壁肥厚や胆嚢拡張、漿膜下浮腫などが生じます。
 
 無石胆嚢炎は、結石が認められない状態で起こる胆嚢炎です。主な原因として、術後、重症外傷や熱傷、胆管閉塞などがあります。

慢性胆嚢炎

 慢性胆嚢炎は、結石や過去に罹患した急性胆嚢炎が原因となり発症します。長期にわたり炎症が繰り返されることで胆嚢壁が厚くなり、胆嚢自体が収縮していきます。

胆嚢炎の症状

 急性胆嚢炎の主症状として、発熱・上腹部の持続的で激しい痛み(右季肋部痛・心窩部痛)・悪心・嘔吐などがあります。ほかに特徴的な所見として、右季肋部を圧迫し、深呼吸をさせると圧痛の増強のため吸気を途中で止めるMurphy's sign(マーフィー徴候)を認めます。重症例では激しい腹痛、発熱を示し、ショックなどの全身症状に移行する恐れがあります。
 
 慢性胆嚢炎では自覚的症状が軽度で、繰り返し起こる右季肋部痛が主な症状としてあります。しかし、はっきりとした痛みを自覚しないこともしばしばあります。
 

胆嚢炎の検査・診断

 胆嚢炎の診断は上記で触れた症状に加え、画像検査[超音波検査(US)・上腹部造影CT検査]、血液生化学検査の結果に基づいて下されます(表1)。
 
表1 TG18/TG13急性胆嚢炎診断基準

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会 編:‐TG18新基準掲載‐急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018,診断基準,医学図書出版,2018,p.86より引用

 また、急性胆管炎をはじめ、胃・十二指腸潰瘍、肝炎、急性膵炎といった、右季肋部痛を生じる他疾患との鑑別も重要です。主な検査について以下に説明します。

腹部超音波検査(US)

 急性胆嚢炎が疑われる場合にまず行われる検査として挙げられ、胆嚢の腫大、胆嚢壁の肥厚、結石の有無が確認できます。技師の技量により精度にばらつきがあるものの、簡便で非侵襲的な検査で、患者さんへの負担が少ないという利点があります。

腹部造影CT検査

 USでは難しい胆嚢壁の断裂の描出に優れているほか、胆嚢周囲への炎症の波及、穿孔や膿瘍などの合併症の診断に有用です。
 

磁気共鳴胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography :MRCP)

 MRI装置を用いた検査で、胆嚢頸部や胆嚢管、総胆管結石の描出が良好です。造影剤を用いずに行うことができるため、患者さんへの負担も少なく済みます。心臓ペースメーカーを取り付けている患者さんでは実施できません。

血液検査

 白血球、C反応性タンパク、血清ビリルビン、胆道系酵素(ALP、LAP、γ-GTPなど)、GOT(AST)・GPT(ALT)・LDHの上昇がみられる場合は、胆嚢炎が疑われます。血清ビリルビンやGOT・GPTの高度な上昇がみられる場合は、胆管閉塞の可能性があります。

胆嚢炎の治療

 治療は内科的治療と外科的治療があります。合併症を回避できれば予後は概ね良好です。基本的には、早期(発症から72時間以内、遅くとも1週間以内)に胆嚢摘出術を行うことが望ましいとされています。治療は症状の有無、胆石の有無・性状、合併症などを考慮して決定されます。

内科的治療

 基本的に急性期は絶飲食として、補液、抗菌薬の投与を行います。抗菌薬にはペニシリン系薬、セファロスポリン系薬、カルパペネム系、モノパクタム薬、ニューキロノン系があり、重症度や原因菌などにより使い分けられます。さらに、疼痛が強い場合は鎮痛薬の投与を行い、疼痛コントロールを行います。
 
 早期に手術が行えない場合や中等度以上の急性胆嚢炎では、胆嚢ドレナージを行います。ドレナージには経皮経肝胆嚢ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD)、胆嚢穿刺吸引術(percutaneous transhepatic gallbladder aspiration:PTGBA)、内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージ(endoscopic nasobiliary gall bladder drainage:ENGBD)があります。
 
 ドレナージを行っている場合は、排液量や性状に注意して観察をします。また、ドレナージチューブの固定や屈曲がないか確認をしましょう。

外科的治療

 手術法は腹腔鏡下胆嚢摘出術と開腹胆嚢摘出術があります。患者さんの状態により選択される術式は異なりますが、術創や創痛を最小限に抑えられるほか、在院日数の短縮が望めることなどから、ガイドラインでは腹腔鏡下胆嚢摘出術を推奨するとしています2)
 
 胆嚢穿孔や胆汁性腹膜炎などを合併していなければ緊急手術は行わず、数日間抗菌薬の投与を行い、炎症の軽減を図ってから手術を行います。穿孔や胆汁性腹膜炎を合併している場合は、開腹胆嚢摘出術および腹腔内ドレナージなどを行います。

胆嚢炎患者さんのケア

 胆嚢炎の患者さんは、重症化しやすくショック状態に陥る場合があるため、自覚症状、他覚症状の変化、バイタルサインの経時的変化に注意します。ここでは、胆嚢炎の患者さんのケアの注意点について解説します。
 

疼痛コントロール

 胆嚢炎は疼痛が強いため、鎮痛薬を使用し疼痛コントロールを行います。ほかに、患者さんが楽に感じる体位やベッドのギャッジアップの位置の調整などで疼痛緩和を試みることも大切です。

術後のケア

 術後は合併症を予防し重症化を防ぎ、早期退院をめざすことが重要です。術後は表2のポイントに注意して観察を行います。

表2 術後ケアのポイント
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馬場秀夫 監:手術の流れからケアのなぜ?が見える!わかる!消化器外科50の術式別術後ケアイラストブック,メディカ出版,2018,p.121より引用一部改変

退院時の指導と日常生活の管理

 内科的治療と外科的治療とで退院時の指導が異なります。

 内科的治療で根本的治療を行わなかった場合は、外来で定期的に経過観察をする必要があります。また、胆石発作を防止するため食事内容に注意します(表3)。

表3 内科的治療と外科的治療における食事指導の注意点

治療法 注意点
内科的治療 ・低脂肪・低刺激の食事
・アルコール、コーヒーなどは避ける
・脂質およびコレステロールを多く含む食品[揚げ物、
脂質の多い肉(ベーコン・バラ肉)、うなぎ、牛乳、
チーズ、卵黄、バター、マーガリン、マヨネーズ、
ケーキ、生クリーム]は避ける
外科的治療 ・食事制限は特になし
・消化不良による下痢が続く場合は
脂肪の多い食事を控えるように指導する

 外科的治療では内科的治療ほど食事制限はありませんが、脂肪の消化不良に伴う下痢や腹痛をきたす場合があります。下痢や腹痛が続くようであれば、脂質の多い食事を控えるように指導します。

【引用・参考文献】

1)急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会 編:‐TG18新基準掲載‐急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018,医学図書出版,2018,p.18.
2)急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会 編:‐TG18新基準掲載‐急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018,医学図書出版,2018,p.182-4.
●甲田英一,他:Super Select Nursing消化器疾患―疾患の理解と看護計画,学研メディカル秀潤社,2011,p.357-8.
●渡邊五郎,他:消化器看護ケアマニュアル,検査・診断,中山書店,2014,p.114-8.
●國分茂博,他:肝・胆・膵疾患の治療と看護,南江堂,2006,p.185-90.
●富松昌彦,他編:Nursing Mook2 消化器疾患ナーシング,2000,p.158-61.

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