【連載】コーチング・ティーチングを活かしたCKD看護指導の極意

CKD看護にあたってコーチングを学んでみたいあなたへ

執筆 喜瀬はるみ

東葛クリニック病院 透析統括師長 / 透析看護認定看護師


目次

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看護師がコーチングのスキルを身につけるには

資格認定制度とスキルの獲得

 CKD患者の生活を支えるための指導には、専門的な知識・技術・コミニュケーションスキルの獲得が求められます。そこで、透析看護分野におけるスペシャリスト育成のための2つの資格認定制度とコーチングスキル獲得に関する情報を紹介しましょう。
 
6学会合同認定資格
 1つ目の資格認定制度は、日本腎不全看護学会をはじめとする6学会合同認定による「慢性腎臓病療養指導看護師(Dialysis Care and Management of Chronic Kidney Disease Leading Nurse:DLN)」です。DLNの受験資格は、表1のような内容となります。
 
表1:DLNの受験資格
表1:DLNの受験資格
 
 項目を満たし、さらに実践報告を提出、学術集会やセミナーに参加し、指定されたポイントを取得後、試験に合格することで資格が取得できます。また看護の質の維持向上のため5年ごとの更新制となっています。DLNの役割は、専門的な知識と技術を用い、安全で安楽な療養環境を提供すること。また、Leading Nurseと名づけられているとおり、医療チームのなかでリーダーシップを発揮し、看護の質向上に主体的に取り組むこととされています。
 
透析看護認定看護師
 もう1つは、日本看護協会が認定する透析看護認定看護師です。
 
 透析看護分野において、質の高い看護を実践し、ほかの看護職者に対し指導を行いながら相談を受けるといった実践・指導・相談の3つの役割を担います。
 
 透析看護認定看護師になるには、表2の要件が必要です。この要件を満たし、認定審査に合格することで、認定資格が得られます。
 
表2:透析看護認定看護師の要件
表2:透析看護認定看護師の要件
 
 2017年現在、国内で240名の透析看護認定看護師が活躍しています。また看護の質の維持向上のため、DLN、透析看護認定看護師ともに、5年ごとの更新制となっており、日々自己研鑽が必要です。
 

研修を受けたら即、使えるわけではない

 コーチングスキル獲得に関しては、最近はたくさんの研修やセミナーが開かれており、資格制度も存在します。しかし、コーチング資格の多くは、民間団体が独自に認定しており“コーチング資格”とひと言でいっても、団体によって、その基準や認定までの条件が大きく異なります。そのため資格をもっているからといって、一定のコーチングスキルをもつ証明になるわけではありません。
 
 実際、筆者もある団体の研修を受け、認定を取得しましたが、研修を受けたからといってコーチングスキルが身につく、使えるようになるわけではありませんでした。研修で得た知識・技法を、実践で使いながらスキルを磨いていくしかないのです。
 
 しかし、「急にコーチングなんてできない、実際にはどうしたらいいの?」と戸惑う人もいることでしょう。そんなときは、まず「傾聴・承認」という2つのスキルを高めていくことをお勧めします。
 
 「傾聴・承認」のスキルは看護師であれば、必ず実践したことがあるはずです。この2つのスキルを無意識にやるのではなく、意識して患者の声・心に耳を傾け、何をどのように承認しようかと考えながら聴いていきます。
 
 また、承認するときは必ず言葉で伝えます。ときどき「こんな悪い結果、どこを承認すればいいのですか?」という質問を受けますが、そのようなときは、「(悪い結果であっても)頑張っていましたよね」と、頑張ってきたプロセスを認めることがコツです。「全く頑張っていない人をどうやって承認すれば?」と思ったときは、筆者はいつも「そうやって、ここまでやって来られたんですね。勉強になります」と、今ここに存在していること自体を承認することにしています。まずはこの「傾聴・承認」だけでも、前向きな答えを出すためには充分効果がありますので、試してみてください。
 

気球をもう1度、空へ上げる2つの方法

 よく「やる気」を上げる例えとして、気球の話があります。
 
 飛んでいた気球が下降してきたとき、もう1度、空高く上げるにはどのような方法があるでしょうか。
 
 1つ目は、熱源であるガスバーナーをボーボーと燃やして上げる方法です。そしてもう1つ気球を上げる方法があります。それは気球に乗っている荷物を下ろし、捨てることです。すると気球は軽くなり、ガスバーナーで焚きつけられなくても、自然と空高く上がっていきます。
 
 人は「頑張れ!頑張れ!」と、焚きつけられることでやる気が高まるときもありますが、不安・劣等感・プレッシャーなど、心の重りを下ろすだけでもやる気は上がっていきます。その具体的な方法が「傾聴・承認」なのです。
 
 CKD患者の生活習慣の管理は最期を迎えるまで続きます。たまには愚痴や弱音を吐いてもらい、心の重りを外してもらいましょう。今ここに存在する自分を肯定できて初めて、人はこれからのことが考えられるようになるものです。
 
 「傾聴・承認」のスキルを身につけたら、次は「質問」です。こちらも日々訓練です。私はコーチングで質問するとき、「なぜ?」という言葉を「どう?」に変えるように意識しています。
 
 「なぜできないんですか?」を「どうしたらできると思いますか?」に、「何でこんなに体重が増えたんですか?」を「どうしたら同じことが起こらないでしょうか?」と言い換えます。
 
 このように、CKD患者の指導には、透析看護分野の専門的知識・技術の習得とともに、コミニュケーションスキルの獲得も重要になります。
 
 これらの情報が、少しでも、患者指導に日々苦慮されている皆さまのお役に立てば幸いです。
 

(ナース専科2018年10月号より転載)

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