【連載】あなたは大丈夫? バーンアウト対策術

バーンアウトの基礎知識

執筆 田中 智恵子

ベスリクリニック 看護師・保健師

執筆 蓮見 紋加

ベスリクリニック 臨床心理士


目次

※「過酷な勤務に責任ある役割・・・・・・ストレスを感じやすい中堅看護師」以下の閲覧はログイン(登録無料)が必要です。


1.看護師の仕事の特徴
(ベスリクリニック 看護師・保健師 田中智恵子)

なりたい職業上位の看護師理想と現実にギャップも

 なりたい職業ランキング調査をみると、ベネッセ調査5位(2018年)、13歳のハローワーク調査1位(2018年7月)など、看護師は、いつの時代も上位に入る憧れの職業となっています。皆さんのなかにも、幼い頃からの憧れがあって看護師になった人も多いのではないでしょうか。
 
 このように、看護師は憧れられる職業ではありますが、実際に働いてみると、理想と現実のギャップを感じたことがある人も少なくないかもしれません。
 
 看護師という職業は、患者の健康・よりよく生きるという目標に向かって、さまざまな専門職と連携を図り、チームの一員として活動する、専門性の高い職業といえます。その仕事の特徴を考えてみると表1のようなものがあります。

表1:看護師の仕事の特徴
表1:看護師の仕事の特徴

 このような重みのある看護師の業務は、3K、5K、7K(きつい、汚い、危険+給料が安い、休暇がとりにくい+勤務が不規則、結婚できない)などと揶揄されることもあります。しかし、看護師としてのやりがいや生きがいを感じて生き生きと仕事をしている人も多くいます。
 
 看護師を職業として選択したからには、それを全うできるようストレスをマネジメントすることも必要な能力といえるでしょう。
 

過酷な勤務に責任ある役割・・・・・・ストレスを感じやすい中堅看護師

 どのような看護師がストレスの高い環境にいるのか、調査結果を挙げました(図1)。
 
図1:ストレスの高い環境にいる看護師
図1:ストレスの高い環境にいる看護師
 
 もちろん、これは一部にすぎませんが、やはり、夜勤交代制などの過酷な勤務、組織のプレイングマネージャー(=業務もマネジメントも実施しなければならない立場)として、リーダーなどの役割を与えられる中堅看護師は、ストレスを感じやすいといえます。
 
 今回は看護師の離職とも関係の深いバーンアウトについての理解を深めながら、この機会にセルフケアストレスマネジメントについて考えてみましょう。
 

2.バーンアウトとは?
(ベスリクリニック 臨床心理士 蓮見紋加)

重度の場合は離職につながることも突然訪れるバーンアウト

 あなたの周りで、今まではバリバリ仕事をこなし、患者への対応も親切だった人が、突然元気がなく、やる気もなくなり、対応も冷たくなった・・・・・・、なんて様子を見たことはありませんか?もしくは、あなた自身にそういった経験はありませんか?そのような状態のことを「バーンアウト(燃え尽き症候群)」と呼びます。
 
 バーンアウトは、単なる疲労ではなく、意欲ややりがい感の低下を引き起こし、重度になると離職につながってしまうこともあります。日本では、看護師の実に6割がバーンアウトを経験しているといわれており、他国と比べても非常に高い発症率が報告されています。
 
 たしかに、看護師の仕事は、夜勤などの交替制勤務や医療の高度化によって過密しています。また、対人援助職特有のサービスへの過度の期待も重なって、精神的にも肉体的にも負担が大きく疲労が慢性化しやすいため、バーンアウトが起こりやすい環境といえます。
 
 バーンアウトを起こさず、やりがいをもって元気に働くためにはどうしたらいいのでしょうか?そのためにまず、バーンアウトがどういう状態のことを指すのか、詳しくみていきましょう。
 

バーンアウトに含まれる3つの要素

 バーンアウトという言葉を初めて使ったのは、精神科医のフロイデンバーガーです。彼は保健施設に勤務していたときに、心身の異常を訴えて仕事に対する意欲を失っていく同僚を数多く見てきました。同僚たちはまるでエネルギーを使い果たし、燃え尽きていくかのように見えたことから、彼はこの状態をバーンアウトと名づけたのです。
 
 バーンアウトには、大きく3つの要素が含まれています。それは、「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感」です。
 
要素1:情緒的消耗感(身も心も疲れ果ててしまう)
 「情緒的消耗感」とは、仕事のなかで情緒的なエネルギーを出し尽くし、消耗してしまった状態のことです。例えば、「こんな仕事辞めたい」と思ったり、「心のゆとりがない」といった状態です。情緒的消耗感があると、身体的にも精神的にも疲れが出て、それを回復させることが難しくなってしまいます。
 
 一般的なストレス反応と同じく、一時的にはストレスに強くなり、精神的にもタフになりますが、その後急激にエネルギーが枯渇し、精神的にも打たれ弱くなります(図2)。つまり、バーンアウトする人というのは、その直前にはむしろ元気になったり活気にあふれていたりするように見えるということです。
 
図2:ストレス反応
図2:ストレス反応
 
要素2:脱人格化(気遣いや心配りが面倒)
 「脱人格化」とは、患者や同僚などに対して無情で非人間的な対応をとることです。患者に対して症状名や番号などのラベルづけをしたり、患者と話すときに難しい専門用語を使ったり、人と接しない事務的な仕事ばかりをやりたがったりすることもあります。仕事に対して消極的に見えたり、冷たいロボットのような対応だと感じたりすることが多いかもしれません。
 
要素3:個人的達成感(仕事をしても喜びが感じられない)
 「個人的達成感」とは、仕事に関する有能感や達成感のことで、これが低下することがバーンアウトの特徴です。バーンアウトが起こる前と後で、急激に仕事の成果やサービスの質が低下し、周りからの評価も自己評価も低下してしまいます。「自分に今の仕事は合っていない」「うまく仕事ができたと思えることがない」という思いが出てくることもあるでしょう。
 
 みなさんもバーンアウトチェックリスト(図3)で、自身の心身状態を確認してみましょう。
 
図3:バーンアウトチェックリスト
図3:バーンアウトチェックリスト

注意してみるべきは“以前とどう変化したか”

 以上の3つの要素が合わさると、その人はバーンアウトの状態であるといえます。いくつかの項目について、思い当たることがある人もいるのではないでしょうか。特に「情緒的消耗感」については、「そんなこと、終業後に毎日感じているぞ!」という人もいるかもしれません。
 
 バーンアウトの主な症状はこの情緒的消耗感にあるのですが、ただの疲労状態とバーンアウトとの違いは、残りの2つの要素にあります。もともとやる気のない人がやる気がない状態だからといって、バーンアウトであるとはいいません。あくまで「以前は親切だった人」が親切でなくなる、「以前は意欲的だった人」が意欲のない状態になるなど、変化をすることが重要な要素となるのです。
 
 看護師が仕事の質を高めるためには、他人を気遣ったり積極的に人とかかわったりしようとする性格特性が必要です。しかし、バーンアウトによって起こる脱人格化や個人的達成感の低下は、こういったものとは真逆の性格や態度を引き起こしてしまいます。
 
 自分の性格傾向が仕事の質を高めるために生かされ、懸命に仕事に取り組んでも、それがむしろ情緒的資源の枯渇を促進し、バーンアウトを引き起こし、結果として離職につながってしまうということもあるでしょう。仕事をするうえで重要でうまく生かされていたはずの自分の性格が、バーンアウトのリスクを高める要因にもなりかねず、このことがバーンアウトを考えるうえで難しいところといえます。
 

バーンアウト回復までに通る6つの段階

 それでは、バーンアウトになってしまった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。
 
 バーンアウトから回復していくときには、6つの段階を通るといわれています。
 
第1段階:問題を認める
 まず第1段階は、「問題を認める」段階です。バーンアウトの主症状は、心身ともに疲れ切った「情緒的消耗感」にあります。慢性的な疲労感があり、不眠や身体症状がある場合もあります。しかし、バーンアウトを経験した人へのインタビューでは、周囲から「最近調子が悪そう」などと指摘を受けても、なかなかそれを認めなかったという人が多くみられたといいます。
 
 バーンアウトの回復のためには、自分の不調に自分で気づき、それが単なる疲労ではなく心理的なものが影響していると認めることが、回復の第一歩です。
 
第2段階:仕事から距離をとる
 第2段階は「仕事から距離をとる」段階です。仕事のことを忘れてリフレッシュしたり、趣味を楽しんだりする時間をつくったり、可能なら仕事とは関係のない友人と遊びに行くのもいいでしょう。
 
 実際には、勤務を続けながら仕事と距離をとるのは難しいこともあります。バーンアウトの経験者は休職をし、仕事と物理的に距離をとることが重要だったといいます。しかし、それと同時に、休職することで同僚などに対して申し訳なさを感じる場合も多いようです。
 
第3段階:健康を回復する
 第3段階は「健康を回復する」段階です。しっかりリラックスできる時間をつくるなど、まずは心身の調子を回復させることが必要です。不眠や身体症状がある場合、医療機関を受診する必要もあるでしょう。今まで自分がやっていたリラックス法や趣味などを、ゆっくり時間をかけてやることもよい方法です。
 
 この頃には、今まで張りつめていた感情が急激に表に出てくることも多いようです。家族や友人に当たってしまったり、人と会いたくなくなったり、自分を責めることもあります。焦らず、少しずつ落ち着きを取り戻していくことが大切です。
 
第4段階:価値観を問い直す
 第4段階は「価値観を問い直す」段階です。今までの生活を振り返り、自分自身を再発見するタイミングが訪れます。不安や後悔が強くなることもありますが、その後の人生のターニングポイントとなる人が多いようです。
 
 仕事に懸命に取り組んでいた今までの自分を振り返り、新しい仕事のスタイルを模索していきます。単に仕事でもっと手を抜けばいい、という話ではなく、仕事以外の部分でもQOLを向上させ、ワークライフバランスをうまくとること、以前ほどの仕事量でなくても効率的に成果を上げる方法などを考えたりもします。「仕事以外にも大切なことがある」と再発見することも多いです。
 
第5段階:働きの場を探す
 第5段階は「働きの場を探す」段階です。第4段階までは、どちらかというと自分の内側についての話でしたが、ここからは外側に向かって再び生活の場を広げていくことになります。元の職場に復帰する人もいますし、別の職場を探す人もいます。昔の知り合いに連絡をとって交友が再開されたり、新しい人々と出会い、交友を深めたりすることもあります。
 
第6段階:断ち切り、変化する
 第6段階は「断ち切り、変化する」段階です。転職という選択をする人も多いようですが、単に職場からいなくなるとか、今までの自分を否定するというわけではありません。今までの自分は自分としてしっかり認めて、これからの自分の働き方を変化させていきます。
 

参考文献

●坂野雄二監:学校、職場、地域におけるストレスマネジメント実践マニュアル. 北大路書房, 2004.
●河野友信, 編:医療従事者のストレス対策. ストレス診療ハンドブック 第2版. メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2003.
●堺章:目でみるからだのメカニズム 第2版. 医学書院, 2016, p101.
●伊豆上智子:病院ケアに関する看護師レポートの6か国比較. 看護研究 2007;40 (7):575-86.
●久保真人:バーンアウトの心理学―燃え尽き症候群とは. サイエンス社, 2004, p152

イラスト/鈴木智子
(ナース専科2018年11月号より転載)

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