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【連載】あなたは大丈夫? バーンアウト対策術

場面別! 患者対応で消耗しないポイント

執筆 関本 文博

ベスリクリニック 臨床心理士


目次

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1.患者対応の傾向と対策

患者対応での負担軽減でバーンアウトを予防

 ここまで、バーンアウトの基礎知識について解説してきました。続いては、看護師に特徴的なシチュエーションや組織構造を踏まえながら、どのようにバーンアウトやそれに伴う離職を防げばいいかを確認していきましょう。
 
 看護師のバーンアウトを予防するためには、看護業務特有の過度な負担を軽減することが大切です。看護業務のなかには情緒的消耗感の大きなものもいくつかありますが、特に看護師に特有なものの1つが対人援助業務です。

 では、具体的な場面をみながら、その傾向と対策を確認していきましょう。
 


場面1 頭が痛いと絶えず訴える入院中の40歳代の女性患者との対話


対話1
対話2


場面1 絶えず苦痛や不安を訴える患者にどう対応する?
→『様子をみましょう』というメッセージを伝える


 看護師の対人援助業務として真っ先に思い浮かぶのは、患者とのやりとりでしょう。患者への声かけや看護ケアを行うことの多い看護師は、それだけコミュニケーションをとる機会も多くなります。患者とのコミュニケーションがいつもポジティブで和やかなものならいいのですが、時にはネガティブな話題になったり、それがこじれてしまうとその後まで険悪な雰囲気を引きずってしまったりすることもあります。それが、看護師の対人援助業務の特徴です。
 
 患者から苦痛や不安を訴えられる場面は、看護師が過度な負担感を感じやすい状況です。「あれをしてほしい」「これをしてちょうだい」と言われるのは、時間に余裕があるときには応えたくなる言葉です。しかし、時間がなかったり、いつも同じ要求だったりするとうんざりしてしまい、精神的にも消耗してしまいます。
 
 そんなとき、「こうしてみたら」や「いい加減こうしてください」のような言葉かけをしてしまうと、「でも、」「いや、」ともっともな理由をつけて拒否されてしまいます。場合によっては、余計に時間がかかってしまい、ほかの業務に支障が出てしまうことも考えられます。対応しなかったらしないで苦情になるかもしれませんし、素早く対応しても引き止められてしまうかもしれません。
 
 負担にならないよう上手に対応している人は、提案やアドバイスなどはせず、『様子をみましょう』というメッセージを伝えています。そのときに大切なのは、ただそのままにしておくように言うのではなく、笑顔で、機嫌よく、語尾を上げて伝えることです。
 
 今回のようなコミュニケーションには、患者の『無視しないでほしい』『存在していることを認識してほしい』という裏の目的が隠されています。そのため、専門職としてのメッセージは伝えつつ、相手の裏の目的も満たさないと食い下がられてしまうのです。
 
 もちろん、些細な訴えが病変の兆候である場合もあるため注意は必要です。ただ一方で、本当に症状がつらいようであれば、より専門知識のありそうな年長の看護師や医師に訴え、せわしなく動き回っている新人や中堅看護師をつかまえたりしないかもしれません。なにより、そういったことが脳裏をよぎる看護師であればあるほど、このやりとりにつかまってしまうことが多いのも事実です。
 


場面2 発熱で夜の救急外来を訪れた3歳の子どもの母親との対話


対話


場面2 治療が順調に進まない患者にどう対応する?
→資料やデータを用いるなど、冷静に話せる工夫をする


 患者やその家族から事情を聞く場面でも、看護師が過剰に負担を感じるコミュニケーションは生じます。治療が順調に進んでいる患者ばかりであれば負担感は少ないですが、現場ではそうもいきません。また、治療的介入がうまくいっていない患者の話を聞く場面にも、看護師はよく遭遇します。そういったときも、優しく穏やかに対応できればよいのですが、疲れが溜まっていたり、体調不良で気持ちに余裕がなかったりすると、つい患者の落ち度を強く指摘してしまうことがあるのではないでしょうか。
 
 もしくは、患者に反省の色がみえなかったり、「できなくて当然だ」と言わんばかりのふてぶてしい態度に、つい感情的になって口調がきつくなってしまうこともあるかもしれません。患者から不健康な生活や、治療に対して低い意欲を示されると、指導や注意をしたくなくなる感情は自然とわくものです。
 
 しかし、感情の赴くままに指導してしまうと、相手は萎縮したり怯えてしまい、こちらが間違ったことをしたような罪悪感に襲われます。また、相手がこちらの感情に反応し、「そんな言い方ってないんじゃないですか」「無理なことをやれと言われても、できないものはできないんです」といった反論をされてしまうと、今度はそれをなだめるのに労力を使ったり、こちらもさらに感情的になって収集がつかなくなったりしてしまうこともあります。事態がこじれることを避けるために、感情を押し殺し、無理に優しくにこやかに対応している人もいるかもしれません。
 
 こういった場面でうまく対処している人は、治療態度を改めるとどのようなメリットがあるか説明したり、このままの習慣を続けるとどういったデメリットが生じるかを伝えるところから始めています。
 
 可能ならば資料やデータを提示し、それに沿ってアドヒアランスを高めるのがよいでしょう。口頭でのやりとりだと、“空中戦”になって非難めいたことを言ってしまいがちですが、資料やデータなどのツールを用いると、それについての話を冷静にすることができ、批判的な態度になりにくくなります。
 
 また、患者や家族以外にも、医師や新人看護師を責めたくなる場面も現場にはありますが、同じように手順書や資料を使ったり、あらかじめメリットとデメリットを書き出したものを用いてコミュニケーションをとるようにすると、怒って疲れたり、嫌な気分を引きずったりせずに済みます。
 


場面3 外来を訪れた70歳代の呼吸器疾患の男性患者との対話


対話1
対話2


場面3 ネガティブな発言をする患者にどう対応する?
→普段からの声かけで少しずつ愛情をかけておく


 患者が自虐的なことしか話さなくなってしまう状況も、看護師としては気の滅入る場面の1つです。プライマリ・ケア領域でよく言われた、激励禁忌(患者に「がんばれ」と言ってはいけない)が頭に浮かぶと軽はずみに励ましてはいけないような気もしますし、返答次第では、よりネガティブなことが引き出されてしまうことも少なくありません。時間を割いて話し相手になっても好転しないまま時間切れとなるケースも多く、仕事に対して急に否定的になってしまいがちな場面です。
 
 情緒的に消耗してしまう人は、患者がつらつらと後ろ向きなことを言い出したそのときに最大限の愛情を注ぎ、「そんなことないですよ」と相手のネガティブな発言を打ち消そうとしてしまいます。全身全霊で話に応じることで患者が心を入れ替えたようにポジティブになってくれればいいのですが、多くの場合そうはならず、全力をもって応えたほうは徒労感を覚えることになります。
 
 途中から立場が逆転して励まされたり、「看護師さんはまだ若いから」と皮肉を言われてしまい、そのことを後から思い返して自分の無力を思い知らされたように感じて、最終的には仕事に対する情熱や自信までなくしていきます。
 
 こういったネガティブな場面に遭遇しても元気な人は、普段からそういったことを言いそうな患者に積極的に声かけをし、患者からの前向きな発言をあらかじめ聞き出しています。「孫といるときは笑顔になれる」「旅行に行くのを楽しみにしている」など、ポジティブな発言を記憶しておき、ネガティブな発言が出たときには「前はこう言ってたじゃないですか! 大丈夫大丈夫!」といったように、あまり力を注がず軽く反応しておくのです。すると、『全く話を受けとってもらえなかった』と患者に思われることもありませんし、相手の価値観から大きく外れた楽観的な発言をしてしまうことにもなりません。
 
 普段からの声かけで少しずつ愛情をかけておくことで、こういったネガティブな発言が急に噴出しないように予防することにもなります。忙しい病棟や救命救急センターなどでは難しいかもしれませんが、小さなことから始めておくことで長期的には大きな効果が表れてくるはずです。
 
 

参考文献

●白井幸子:対人関係がラクになる! ナースの感情整理術――交流分析で納得、今日からできるコミュニケーションのコツ. メディカ出版, 2017.
●白井幸子:看護の現場における心理的ゲーム――その実際と対応法について. 交流分析研究 2004;29 (1):54-9.

(ナース専科2018年11月号より転載)

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