【連載】あなたは大丈夫? バーンアウト対策術

すぐ実践したい! バーンアウト防止策

執筆 長田 梨那

ベスリクリニック 保健師・看護師・助産師

執筆 田中 智恵子

ベスリクリニック 看護師・保健師


目次

※「患者から言われたことや、うれしかったことを共有する」以下の閲覧はログイン(登録無料)が必要です。


1.バーンアウトにならない&させないために
(ベスリクリニック 保健師・看護師・助産師 長田梨那)

 バーンアウトを早期発見・防止するには、個人での取り組みはもちろん、周囲の協力も重要な役割を果たします。ここでは、バーンアウトを防止するためのポイントをご紹介します。
 

ソーシャルサポートを利用する

 人間関係は強いストレッサーになると同時に、ストレスを低減する機能もあります。周囲からの支持的なかかわりは「ソーシャルサポート」と呼ばれ、物理的(金銭面などの)な援助だけではなく、あらゆる支援行動を指します。例えば、有益な情報を教えてくれる、仕事の成果を評価してくれる、失敗したら慰めてくれるなどです。ソーシャルサポートを受ける機会の少なかった人は、バーンアウトを発症したあとに回復せず、より深刻な事態に陥ったという結果もあります1)
 
 ヒューマン・サービス従事者のなかには、人の悩みを聞き、解決しようとする業務の性質上、自分自身が悩みを抱えているということを上司や同僚に伝えることに心理的抵抗を感じる人が少なくないといわれています。患者から言われた言葉を繰り返し考えてしまったり、家に帰っても1人で考え込んでしまったりしたことはありませんか?中堅看護師になればなるほど、後輩たちを教育する立場になり、自らの悩みを相談することが減ってはいないでしょうか?
 
 患者や後輩から頼られたり、相談されたりする立場だからといって、それを1人で解決しなければならないわけではありません。同僚や上司と食事に行く機会を設けたり、心の内を誰かに話したりすることも大切です。最近では、看護師がオンラインで相談やアドバイスを受けられるサイトや、SNSでコミュニケーションをとる方法もあります。
 
 また、職場以外では、家族や友人のサポートも重要です。自分だけではなく、自分の周りにいる人や環境をうまく使ってソーシャルサポートを受けられるようにしましょう2)
 
 組織としてとれる対策としては、中堅看護師が異動で病棟が変わった後、一時的にでもいいので、相談役として同じ年代もしくは少し上の指導者をつけることも大切です。中堅看護師としての立場が確立されていくにつれて、自分から頼ることはしづらくなります。そこをあえて相談役をつけることで、聞きづらいことでも聞きやすい雰囲気をつくることができます。頼りやすい相手を組織の側から用意しておくことも有効です。
 

患者から言われたことや、うれしかったことを共有する

 同僚や友人からのサポートだけではなく、援助した相手からの声かけもバーンアウト対策に有効なことがわかっています。ベッドサイドで患者から「いつもありがとう」「○○さんと話すと痛みも忘れるよ」と言葉をかけてもらったり、退院するときに「おかげで元気になりました」「退院するのがさびしいよ」感謝される機会があると思います。
 
 そのような声をかけられたときには、その言葉を素直に受けとめましょう。さらに、それらをほかのスタッフと共有しましょう。共有することで、自分だけではなく、ほかのスタッフも達成感と満足感を共有することにもなります。
 
 また言われたことはいつの間にか忘れてしまいます。メモに書き留めておけば見返したとき、精神的消耗感よりも自己肯定感が高まり、精神的にも安定するようになります。
 
 ヒューマン・サービスは人が相手の仕事なだけに成果が見えにくく、達成感をなかなか得られない職種です。だからこそ、見える成果として、患者からの言葉は特に重要です。患者からもらった手紙はナースステーションや休憩室などに掲示しておき、スタッフ全員の目に入るようにしてみましょう。あるいは、病棟会などで、スタッフ1人ひとりが患者に言われてうれしかった言葉を発表する場を設け、共有する機会を増やすのもよいでしょう。
 

中堅看護師に向けた勉強会を行う

 看護師のバーンアウトは卒後1~3年目に起こりやすいといわれています。そのため、新人基礎教育が推奨されるようになり、新人教育に力を入れている病院が増えてきました。
 
 一方、中堅看護師は経験年数を重ねるにつれ、チームリーダーや後輩育成などの仕事を任されることも増えてきます。さらには結婚、出産、育児などのライフイベントによる葛藤も多くなる時期にさしかかり、新人のときとはまた違ったバーンアウトが起こりやすい状況にあります。
 
 もともと対人援助をしたいと思い看護師になった人は多いと思いますが、中堅看護師として経験を積むほど、リーダーシップを求められたり、看護の質向上のための組織構築を任されたりと、対患者より、それ以外の業務が増えていきます。そこでやりがいを感じられなくなったり、看護師としての存在意義を見出せなくなったりして、目標を見失ったような感覚に陥ることもあります。
 
 こういった場合、やりがいや存在意義を見つけることよりも、同じような立場の人が集まる研修会のような場を設け、困っていることや不安なことをみんなで共有し合うことが大切です。いつもの病棟のなかにいると、患者のケアがうまくいって喜んだり、時には失敗したと落ち込んでいる新人を見たりして、うらやましく思えるかもしれません。ですが、そこで立場の違う人と比べるのではなく、あえて同じ中堅看護師同士で接する機会をつくることが大切なのです。
 
 中堅看護師といっても決まった定義はなく、経験年数には幅があります。そのため、同じような役職(チームリーダー、主任、師長など)の人で集まるような仕組みを定期的につくり、組織で中堅看護師の支援体制を整えてみましょう。そこでソーシャルサポートを受けることができ、また新たな目標設定ができるかもしれません。
 

2.組織として取り組みたい4つの対策
(ベスリクリニック 看護師・保健師 田中智恵子)

 バーンアウトを防止しようとしても、個人で取り組むには限界があります。そこで、病院組織、看護部組織内ですぐに活用できる事例をご紹介します(図1)。
 
図1:バーンアウト防止に向けた組織対応(例)
図1:バーンアウト防止に向けた組織対応(例)

対策1:個人への対策(不定期対応)プリセプターシップを利用した対策

 看護部では、新人看護師がスムーズに職場や業務に馴染めるように、技術的な指導とメンタル面のサポートを行う教育システムが導入されているところが多くあります。若手の先輩がプリセプターを担当し、リアリティショックを防止し看護が実践できるように支える制度です。
 
 また、プリセプターの相談役として、ベテラン看護職員によるエルダー制度を導入しているところもあります。このように階層的に支援する体制が整いつつありますが、具体的にどのように支援するかは、個人の力量に依存する傾向があります。今後の課題として、メンタルケアの方法を学ぶ仕組みを取り入れることも重要になります。
 

対策2:個人への対策(定期的対応)評価制度を利用した対策

 ラダー制度や目標管理制度の導入に伴い、成長を支援する仕組みとして評価制度を導入していることも多くなってきました。この評価制度は、あくまでも成長を支援する仕組みが主目的になります。
 
 しかし、評価には時間もかかり、その人をよく見て援助する必要があり、評価する側もされる側も負担に感じているケースが多くあります。大切なことは、評価する側もされる側も、結果に固執するのではなく、自己成長の道具として、上手に活用していくことです。
 

対策3:集団への対策(不定期対応)集団分析・組織分析による対策

 私たちは日々、他者や集団などからさまざまな影響を受けており、他者や集団に属する人と接していくなかで、態度や行動に変化が生じることがあります。集団としての特徴を分析することで、組織行動の変化の糸口を探ることも重要になります。
 
 例えば、組織を知るものとして、残業、離職率、ストレスチェックの結果などがあります。他部署と比較することで、なぜ自部署は残業が多いのだろう、離職率が高いのだろう、高ストレス者が多いのだろうと、自部署の課題を考えることができます。これも、よいとか悪いといった結果を見るのではなく、なぜそうなっているのかを考える1つのデータとして捉えることが重要になります。
 

対策4:集団下の対策(定期的対応)研修制度活用による対策

 看護師は、勤勉な人が多い傾向にあるといわれています。院内院外の研修などに積極的に参加する人も多いでしょう。現在の研修は知識・技術系のものが主流ですが、今後注目されるのは「看護業務を物語る」という研修です。
 
 医療・看護業務は失敗の許されないところが1つの特徴ですが、患者中心に考えるとケアの方法は1つではなく、個々人の価値観によってさまざまなケアの可能性があるところも特徴といえます。価値観の相違を認めながら、自己の価値観をさらに創造・進化させていく、いわゆる「語りの場」が重要になります。
 
 自分の看護経験を語り(ナラティブ)、それを他者の価値観と融合させることによって自分の価値観を進化させていく(リフレクション)ことが、今後の看護には必要になってきています。
 
       ***

 正しい方法が1つであれば、それを機械的に実施していけばよいことになります。しかし、ケアに正しい答えがないからこそ、苦悩するのです。この苦悩を成長のチャンスと捉え、個人と組織が成長する仕組みをつくりながら、全体として取り組んでいくことが、バーンアウト対策であるといえるでしょう。
 
 

引用文献

1)、2)久保真人:バーンアウトの心理学――燃え尽き症候群とは. サイエンス社, 2004, p121-122.

(ナース専科2018年11月号より転載)

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