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第6回国際行動嗜癖会議 依存症対策全国センター 「ギャンブル・ゲーム依存研修会」

2019年6月19日、パシフィコ横浜で開かれた「第6回国際行動嗜癖会議・横浜大会」で、「ギャンブル・ゲーム依存研修会」が開催されました。これはギャンブル・ゲーム依存を中心とした行動嗜癖を広く理解してもらうために、国際行動嗜癖会議(ICBA2019)参加者以外の一般の人も参加できる研修会です。

行動嗜癖分野で世界をリードする研究者が、以下の5つのテーマについて講演したものです。司会は独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの樋口進先生です。

① 行動嗜癖とは何か、診断はどのようにするのか(ジョン・サンダース教授、クイーズランド大学、オーストラリア)
② ギャンブル・ゲーム依存患者の頭の中で何が起きているのか(マーク・ポテンザ教授、エール大学、米国)
③ 治療はどのようにするのか(認知行動療法)(カイ・ミュラー教授、マインツ大学、ドイツ)
④ 治療はどのようにするのか(薬物療法)(ジョン・グラント教授、シカゴ大学、米国)
⑤ ゲーム依存の予防と教育はどのようにするのか(ダニエル・キング博士、アデレード大学、オーストラリア)

この中から、①と③の講演について、概要を紹介します。

オンライン・インターネットゲーム障害とは

 最初は、オーストラリアのクイーンズランド大学教授で、国内の複数の民間医療機関において、内科と嗜癖医学の顧問医師を務め、40年以上にわたり嗜癖性障害を専門とする臨床医、研究者として活動しているジョン・サンダース先生の、「行動嗜癖とは何か、診断はどのようにするのか」についての講演です。

 オンライン・インターネットゲーム障害の中心的な特徴は、「ICD-11」と「DSM-5」に組み込まれていますが、今年5月28日、WHOで新たな疾病分類に入り、認定されました。

 サンダース先生は、「嗜癖障害は、最初は付き合い程度などたまたま始まるが、多くの人の進行は知らないうちに進んでいく。できるだけ早い介入をしたほうが治療が複雑にならない。嗜癖障害は治療でき、我々医療者が介入することで、嗜癖障害をもっている人たちを助けることができる」と話します。

 嗜癖障害について、「人間は楽しいこと、エキサイティングなことが好きだが、だいたいが過剰な使用があっても一旦は留まる。しかし継続的になると『嗜癖』ということになる」と説明した上で、「過剰な使用を特定する、危害があるかを見る、嗜癖があるかを特定する必要があり、それについて政策を立てたり、予防、治療をするのが医師の役割である」
と考えを述べました。

 また、行動嗜癖の特徴だけでなく、最近は神経生物学的にも解明されてきたことがあるとして、「ゲーム障害のある人の脳の領域をみると、ゲームに暴露したしたときに活性化されるところは、側坐核である。これは物質使用でも活性化され、最も大きなインパクトのある部分である」と、脳の画像を示しました。

 「IDC-11」のギャンブル・ゲーム障害の定義は、①ゲームの開始、継続、終了に関するコントロールができない。②日常生活におけるゲームの優先度が高く、他の関心事よりもゲームを優先する。③悪影響があるにもかかわらず、ゲームをし続ける、さらに熱中する、とされています。この3つの特徴と本人、家族、社会、仕事などで、機能に明確な障害が起きていることが診断の基準となることを示しました。

 次にサンダース先生の患者さんの事例を通し、「持続性があるか、コントロールができないか、優先度が高くなりゲームが生活の中心になっていないか、悪影響があるのにさらに継続し熱中しているか」などを確認する、診断のプロセスを具体的に紹介しました。

 そして最後に「これまで何百人もの患者さんを、オンラインゲーム障害として診断してきた。非常に大切なことは、まず医療制度の中で、我々、個々の医療者が、きちんとギャンブル・ゲーム障害を認識する能力をもつことが重要である。他の行動障害、行動嗜癖についても、それが存在することを認識しなければならない。我々にとって治療方法があることがとても重要である」と話しました。

ギャンブル・ゲーム障害における認知行動療法について

 ドイツのマインツ大学のカイ・ミュラー教授の「治療はどのようにするのか(認知行動療法)」について紹介します。ミュラー先生はインターネットゲーム障害、インターネット関連障害及びギャンブル障害に対する診断および精神療法に特化した施設を、マインツ大学医学部附属病院に共同設立し、「我々はギャンブル・ゲーム障害について、さまざまな研究を行い、外来治療も行っている」と紹介しました。

 ギャンブル障害やゲーム障害は、患者さんの生活に悪影響を及ぼす新たな精神医学的現象で、「行動嗜癖」として近年認知されつつあります。

 ギャンブル・ゲーム障害の患者さんを治療する際に考えるべきこととして、ミュラー先生は次の4点を挙げます。

①まず、強い欲求があり、渇望を経験し、繰り返しゲームを行う。
②患者さんはいつも減らさないといけない、止めないといけないと考えているが、一方で強い欲求を感じ、さらにゲーム行動に走る。この動機づけの状態の変化に対応することが非常に重要である。
③患者さんの視点が変わる。特にギャンブル障害の患者さんを治療するときに、このような認知中心の偏りを変えることであり、そのことにより患者さんの嗜癖を乗り越えるようにする。
④患者さんは普通の生活でないことに苛立ち、無力感を感じ、どうしたら自分の生活の将来をうまく管理していくことができるのかわからない。それが強いストレスになっている。

 また、ミュラー先生は併存疾患の存在率が高いとして、「私のクリニックの患者さんの3分の2に併存疾患がみられ、なかでもうつ、不安型が最も多くみられた。これに対応できなければ効果が得られないため、患者さんから広範囲に聞き取り、きちんと診断し、患者さんの障害の原因が何かを明らかにすることが重要である」と話します。

 次にミュラー先生たちが外来で開発した、高い効果を上げているゲーム障害に対する治療用のプログラム「STICA」について、18歳の男性で過去3年間合計400日、オンラインゲームをしてきた症例を挙げて説明しました。

 「大切なのは動機付けを考えることです。昔の生活に立ち戻って、友達がいたことや、生活にどんな楽しみがあったかを思い出すことが必要。そのことに気づいて初めて『それを取り戻したい』と思うが、患者さんはそれがどうしたらできるかわからない。これが私たちの患者さんの典型的な様相である。希望していることはすべて、ゲームでは満たされないことに気づく、動機付けをすることが大切である」と話します。

 ミュラー先生の施設では「診断がスタートで、これが重要」として、どのようなタイプの行動嗜癖をもっているのかを明確に診断し、はっきりと個別化して、治療のゴールをその患者さん用に設定していきます。

 「さらに重要な点は、何が引き金になっているかを、質問して調べていくこと」と言い、具体的にはどういう状況においてオンラインゲームをやりたいと渇望するのか、渇望を惹起するのはどういう要素なのか、嗜癖を起こしているベースになるものを洗い出していきます。「たいていの嗜癖の根底には複数の要因がある。例えばストレスに対して脆弱である。社会的な不安感、羞恥心、社会的な障害、認知レベルが低い、感情の違いにうまく対処することができない、これらが全てゲーム障害、嗜癖の要素となりえる」とミュラー先生は言います。

 最後に「モチベーション・インタビュー」という技法や、「MET(モチベーションの園ハラスメント・セラピー)」という手法について、具体的な事例を挙げて紹介しました。

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