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日本精神神経学会ってどんな学会?|公益社団法人 日本精神神経学会2019年度プレスセミナー

2019年6月7日に東京・KDDIホール、「日本精神神経学会2019年度プレスセミナー」が開催されました。今年で創設116年を迎え、日本の精神医学・医療を牽引してきた日本精神神経学会は、毎年、日本各地で学術総会を開催しています。今年は第115回目を迎え、6月20日から22日の3日間、新潟で開催されました。この学術総会に先立ち、日本精神神経学会理事長で九州大学名誉教授である神庭重信先生による「日本精神神経学会の活動と将来展望」と題した講演と、第115回日本精神神経学会会長で新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野教授の染矢俊幸先生の「第115回日本精神神経学会学術総会概要、注目トピックス」と題した講演が行われました。この講演についてレポートします。

日本精神神経学会の活動と今後の方針

 神庭先生はまず、日本精神神経学会の理念を紹介した後、2019年6月現在の理事会の構成を説明。そして、2017-2018年度の大方針として、①専門医制度、②ICD-11の貢献、病名統一と診療ガイドライン翻訳、③治療ガイドライン作成、④精神医学研究の推進、⑤若手、女性会員の活躍、⑥海外への情報発信などの国際化、⑦公益法人の規律正しい運営、という7つの方針を説明しました。

 同学会の会員数は現在、18000人を超えます。学会には52の委員会があり、それぞれが活発に活動しています。特に卒後教育と専門医の教育には力を入れており、2018年度にスタートした新制度の研修よりも先に、学会独自の専門医制度を運営してきました。その結果、これまでに指導医約7400人を含む専門医約11000人を養成し、今後も「指導医数、専門医数の増加を図りたい」として、会員数と専門医数、指導医数の推移を、グラフで示しました。

 2018年6月から2019年6月にかけて、同学会では、例えば「性同一性障害に対するホルモン療法の保険適用に関する要望」など、5件の見解、提言、声明を発出しています。

 精神医学研究活動の例については、ガイドライン検討委員会では、日本糖尿病学会と日本肥満学会と協同で「向精神薬服用者の肥満、糖尿病などの予防を目的としたガイドライン」を作成することを決定し、近々「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」を発刊予定です。

 また、18の構成員からなる「精神科病名検討連絡会」では、「過去には偏見のこびりついた病名、例えば精神分裂病を統合失調症に改称するなど、ICD-11の疾病分類名の日本語名を検討してきた」と神庭先生は話しました。
 最後に「精神科関連への諸問題への対応」として、隔離拘束の調査と対応、旧優生保護法問題への対応、「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会第4次中間取りまとめ」への対応を挙げ、「学会としてこの3つの大きな問題に関して、現在検討中です」と結びました。

精神疾患における注目トピック

 次いで染矢先生の講演では、第115回学術総会の中でも注目された精神疾患におけるトピックをいくつか紹介しました。
 まず「精神疾患の病態解明に向けて」として、統合失調症の研究アプローチを取り上げました。「統合失調症は病態解明、診断、新たな治療法開発が待ち望まれており、研究アプローチが行われています。例えばゲノム医科学に基づいて、リスク遺伝子を同定し、病態解明のために『ブレインバンク』を成立して脳を調べる。さらに統合失調症の新たな診断開発として『バイオマーカー』があり、9年前に検査キットとして開発され、診断、鑑別に有用であることが確認されました」と染矢先生は説明します。

 また、現在、大きな注目を集めている神経発達症の代表である自閉症研究については、次のように説明しました。
「自閉症は乳幼児期にシナプスの形成、刈り込みに異常があると考えられてきましたが、そのシナプスの刈り込みの主要な役割を担い、シナプス形成・保護の機能を果たすミクログリアの働きが近年注目されています。それに加え、自閉症がもつ脳回路の異常についての、脳回路の統合の不成立といったものも解明されています。さらに、近年ではロボットを用いた社会性トレーニングといった新たな取り組みも、精神医学領域では始まっています」

 今年の5月にWHOの総会でICD-11が承認され、いよいよ本格導入が始まります。ICD-11の導入に向けて、「ICD-11では、例えばICD-10では気分障害とされていたものを気分症とするなど、disorderを『障害』ではなく『症』と訳すことが、今、まさに行われています」と紹介しました。

 さらに精神医学における「発達」という視点が重要であるとして、「例えば自閉症において強迫症状や社交不安がみられるのはよく知られていますが、これは神経発達症の随伴症状として捉えられる一方で、自閉症の症状が閾値下であっても、発達特性が強迫や社交不安、あるいは選択制緘黙
かんもく
の成り立ちに関与していることが多く、閾値下の発達特性をよく理解することが、さまざまな症状形成の理解に役立つと、近年では注目されています」と話します。

 そして統合失調症をはじめとした精神疾患患者さんの予後が一般の人よりも短いことが明らかになっているとして、染矢先生の研究室で行った全国的な調査のデータを示し、「外来患者さんではメタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病のリスクが高く、入院患者さんでは低体重、低栄養のリスクが高いということを発表してきました。このことから、精神症状のコントロールだけでなく、身体リスクの予防や介入にも注意が必要です」と話しました。

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