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【連載】第50回 日本看護学会ー在宅看護ー

特定行為研修制度を活用した在宅看護への期待|第50回日本看護学会ー在宅看護ー学術集会

2019年9月13日~14日に、宇都宮市文化会館/宇都宮市総合コミュニティセンターにて、第50回日本看護学会―在宅看護―学術集会が開催されました。今回のテーマは「創造と実践力でささえる在宅看護~あらゆる世代・あらゆる場所で、あらゆる機会に~」。ここでは、『特定行為研修制度を活用した在宅看護への期待』(講師:厚生労働省医政局看護課看護サービス推進室長 習田由美子先生)の講演内容をレポートします。


人口構造の変化と特定行為研修制度の誕生

 団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、医療提供体制の改革が進められています。これは、高齢化率が28.1%という超高齢社会の日本において、人口構造が急速に変化していることを受けた動きです。
 
 今後も、慢性疾患や複数の疾患を抱えながら地域で生活する高齢者は増えるとされており、対象のニーズも多様化していきます。看護においては、「チーム医療の推進」を図るため、特定行為研修に力を入れることとなりました。チーム医療では、各専門職がそれぞれの役割を十分に発揮しながら連携を図ることが大切であり、看護師はこのチーム医療のキーパーソンとしての役割を期待されています。
 
 厚生労働省は検討会1)や現場への調査を通して、診療の補助の中でも高度な知識などを要する行為を特定行為とすること、そして特定行為の範囲を明確にし、医師の指示のもと看護師が実施できるように制度化するという結論に至りました2)

特定行為とは

 特定行為とは、「診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能がとくに必要とされるものとして厚生労働省令で定めるもの」2)であり、38行為21区分に分類されています。
 
 この38行為の選定基準は、侵襲性の高い処置や判断が非常に難しいけれども、トレーニングや知識を得ることによって適切に処置や判断が行える、という観点で検討してきました。区分は、これらの特定行為を行う際に必要な専門知識が共通しているものをまとめたもので、研修はこの区分単位で受講する仕組みになっています。
 
 特定行為研修の内容は2つに大別されます。一つは全ての特定行為区分に共通する「共通科目」、もう一つは特別行為区分ごとに異なる「区分別科目」です。共通科目では250時間かけて講義、演習、実習を行い、専門的な判断を行うために医師が学ぶような科目を履修します。研修は厚生労働省が指定した研修機関で受けることができます。
 
 修了生が最も多い特定行為区分は順に「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」「創傷管理関連」「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」となっていて、汎用性の高いものを受講する傾向があります3)
 

特定行為研修制度の普及状況と受講生を増やすための取り組み

 2019年8月現在、指定研修機関は40都道府県に134機関あり、そこで働く看護師が研修を受けているという体制が一般的となっています。17の指定研修機関が東京都に集中する一方で、7つの県(青森、山梨、三重、徳島、愛媛、長崎、宮崎)には指定研修機関がないなど地域格差が生じています4)

 特定行為研修修了者の総数は2018年3月現在で1,041名。2025年までに10万人以上を養成するという数値目標には程遠い結果となっています。また、就業先で最も多いのは病院の870名で、訪問看護ステーションは47名と全体の5%に留まっています。
 
 急性期だけでなく、在宅医療の現場でタイムリーな看護を提供できる看護師の養成を目的とした制度であるものの、地域への人材排出はなかなか進んでいないのが現状です。これには、指定研修機関の定員が3~5名程度という背景も関係しているため、今後は1施設あたりの受け入れ人数の拡大を目指しています。
 
 また、e-ラーニングの活用や指定研修機関以外の協力施設でも実習できる体制を整え、看護師が働きながら研修が受けられるように配慮しています。各自治体の取り組みとしては、例えば栃木県では、受講生の代替出勤費用の補助や受講生の所属施設に対する受講料の支援を行っています。
 
 ほかに、「在宅・慢性期領域」「外科術後病棟管理領域」「術中麻酔管理領域」の3領域で検討されているのは、特に実施頻度の高い特定行為の研修をパッケージ化するというものです5)。区分内全ての行為について履修する必要がなくなるため、研修時間が短縮され受講生の負担軽減につながります。

制度を活用して看護の質の向上を目指す

 特定行為研修を修了すると、手順書があれば看護師の判断で特定行為を行えるようになります。例えば、「脱水症状に対する輸液による補正」の特定行為研修を修了していれば、医師はその看護師に対して、患者が脱水症状を起こした際の対応をあらかじめ手順書で指示しておくことができます。患者に脱水の可能性が生じた場合、手順書に基づいて看護師がその場で判断を行い、必要に応じて点滴を実施するといった迅速な対応が可能となります。
 
 さらに、特定行為研修では医療知識を深く学ぶため、他職種との連携が図りやすくチーム医療が効率的に行えます。また、必要なタイミングで医療の提供が行えるため、患者の不安の軽減が図りやすく信頼関係を築きやすいのも事実です。また、研修を受講していない看護師が判断に迷った際の相談先としての役割を果たすことで、看護の質の向上にもつながると期待されています。

引用文献

1)厚生労働省:チーム医療の推進について (チーム医療の推進に関する検討会 報告書)(閲覧日2019年10月17日)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf
2)厚生労働省医政局看護課 看護サービス推進室:特定行為に係る看護師の研修制度について(閲覧日2019年10月17日) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197164.pdf
3)第18回看護師特定行為・研修部会:資料1 特定行為研修制度に係る現状等(閲覧日2019年10月17日)https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000361777.pdf
4)特定行為研修を行う指定研修機関の状況(閲覧日2019年10月17日)https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000540530.pdf
5)保健師助産師看護師法第37条の2第2項第1号に規定する特定行為及び同項第4号に規定する特定行為研修に関する省令の施行等について(平成27年3月17日付け医政発0331 第1号厚生労働省医政局長通知) 新旧対照表 (閲覧日2019年10月17日) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000506634.pdf

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