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【連載】事例で考える! がんの緩和ケア

骨転移のある患者さんの動作工夫|症状別がんの緩和ケア

執筆 霜中 貴美

たかみのはなし 緩和ケア認定看護師

目次

Ⅰ.はじめに

 骨転移はがん患者さんによくみられ、痛み、病的骨折、脊髄圧迫を引き起こします。骨転移がみられる患者さんへの対応は、痛みをできるだけ取り除くこと、骨折を避けることが大切です。今回の事例では、放射線治療や薬物療法だけでなく看護の工夫でどう対応するかも解説します。

Ⅱ.患者さんの概要

A氏:77歳、男性、肺がん、多発骨転移、脊椎転移

 放射線治療は行われており、投与薬剤はオキシコンチン、セレコックス、アセトアミノフェンです。立位の際に大腿骨の痺れがあります。予防的レスキューは効果を認めず、立位と歩行は困難な状態でした。痺れが生じた時点で鎮痛補助薬のリリカの内服を開始しましたが、劇的な効果は認められませんでした。また、画像上脊椎の転移巣が広く、少しの刺激でも骨折するリスクが高いため、歩けなくなる可能性が非常に高いとされていました。しかし、A氏は非常に自律された方で、洗面やトイレなどの日常生活行動を自分で行いたいという意思を強くもっていました。

 患者さんの意思を尊重する一方で脊椎骨折のリスクは回避しなければなりません。そこで、患者さんのADLやQOLをできるだけ低下させないためにはどうすればよいか、最大限できることを多職種で話し合い、ケアの内容を決定していきました。

Ⅲ.アセスメントとケアの計画・実施

Point①リハビリテーションの介入によるコルセット作成と環境調整

 医師との相談により、まずはリハビリテーション科へコンサルテーションを行いました。その結果、迅速にコルセットが作成されました。そして、患者さんの負担ができるだけ少なくなるように環境調整を行いました。まず、歩行時の注意点として、必ずコルセットを装着すること、手すりを両手で持ち「蟹さん歩き」をすること、面倒でも足は必ずそっと着地させることを伝えました。

 また極端な前屈運動を避けるため、ベッドから立ち上がる際は、必ず膝よりもベッドの位置が高くなるように調節しました。こうすることで、捕まる場所の確保を行いながら楽に立位が取れるようになります。そのこのような介入の甲斐あって、A氏は少しずつ歩行が可能になりました。

 トイレに関してはかがみこむ動作が脊椎に負担をかけてしまうため、話し合いの結果、排便の際のふき取りに関しては看護師が介助をすることになりました。当初は羞恥心からか、妻に依存する部分も大いにありました。しかし、徐々に看護師に慣れ、介助を委ねてくれることも増えてきていました。

Point②体幹のねじれ発生による骨折リスクを回避するためのケアを実施

 脊椎転移のある患者さんに対するケアで非常に重要なのは、体幹のねじれができるだけ起きないようにすることです。A氏への具体的なケアとしては、夜間の体位変換は必ず二名で行うようにしました。また、巡視以外の時間に寝返りを打つなどして長時間体幹をねじった状態が続かないよう、ポジショニングを行う使い心地の良いクッション(スネーククッション)を使用しました。そして、マットを褥瘡予防対応のものに切り替えました。また食事の際はオーバーテーブルを使用し、移乗の回数を少なく済むように配慮を行いました。

Ⅳ.ケア実施後の評価・アセスメント

 A氏には自宅へ帰りたいという願望があったため、ケアマネジャーとも話し合い、自宅に手すりを付けました。またA氏は自分の身体が骨折しやすいという病識をきちんともっていたため、念のため一週間の外泊から開始し、一時退院に至りました。

 再入院する際は骨折ではなく、疼痛の増強を理由としたものでした。私たち医療職は、A氏が自宅でしっかり日常生活の中に、骨折予防のノウハウを取り入れていたことに大変感動しました。

Ⅴ.おわりに

 がんの骨転移のある患者さんへの治療には、放射線治療、整形外科手術、薬物療法があります。それぞれの治療がどのようなものなのかを知っておきましょう。その上で、患者さんの状態をアセスメントし、適切なケアを実施することが大切です。

放射線治療

 骨転移、神経圧迫あるいは軟部組織への浸潤による痛みの場合は、放射線治療を配慮します。
乳がん、前立腺がん、肺がんなどは骨転移痛を生じやすいとされています。放射線治療の有効率は60~90%といわれており、鎮痛効果は照射開始後2週間程度から出現し、4~8週程度で最大になると考えられています。その為、2週間~1カ月を超える生命予後が期待できない症例は適応とならないことがあります1)

整形外科手術

 骨転移による痛み、病的骨折、脊髄圧迫への対応や機能の維持には整形外科的介入(手術)が有用です。患者さんの生存期間が長いと骨の合併症が起こる可能性が高まるため、整形外科的介入の機会が多くなります。整形外科的介入ががもたらす負荷、全身状態、予後の長さ、がんの種類などを考慮に入れて、適切に選択することが大切です。

薬物療法

 薬物療法においては治療のバリエーションを多く持つ必要があります。そのために、まずはアセスメントをしっかり行います。

 持続痛なのか突出痛なのかを知ることは、オピオイドを増量するか否かの指針となります。突出痛だと判断した場合、体動時痛でも体幹の捻れで起きたものなのか、安静時に起きたものなのか、移乗時に起きたものなのかでケアが変わるため、レスキューを使った場合のアセスメントか必要であす。

 また痛みの性状を正確に知ることで骨転移の進行がある程度把握できます。足の痺れが出現し、それが増強している場合は下肢の知覚障害が徐々に出現してきていると考えられ、CTなどの画像診断で脊柱への転移や病的骨折がないかを確認する必要があります。

 オピオイドの使用は当然ながら、除痛ラダーに沿って非オピオイドも同時に調整していく必要があります。

引用・参考文献

1)宮下光令,他:ナーシング・グラフィカ 成人看護学6:緩和ケア 第2版.メディカ出版,2016,p.66.
●武田文和,監訳:トワイクロス先生のがん患者症状マネジメント 第2版.医学書院,2012.
●余宮きのみ:ここが知りたかった緩和ケア 第2版.南江堂,2019.

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