お気に入りに登録

【書籍紹介】口腔外科医が書いた ナースのための がん患者の口腔マネジメント―周術期から終末期まで―

がん患者さんの口腔ケアに悩んでいませんか

 がん患者さんたちは、がん治療の副作用やがんの進行に伴い、口腔粘膜炎や口腔乾燥症など、さまざまな口腔合併症を発症し、食べたり、話したりすることに苦労している人も多くいます。

 口腔は消化器、運動器、感覚器、呼吸器であり、QOLに直結しています。そこに障害が起きると食べる喜びや話す楽しみが奪われることになり、患者さんの闘病意欲やQOLを低下させます。さらに食べられない、飲めないことによる低栄養で、治療が完遂できないこともあります。

 口腔合併症で苦しむ患者さんを前に、看護師としてできることは何でしょうか。あなたの施設に歯科口腔外科があれば、そこにコンサルテーションをすることも可能かもしれません。しかし残念なことに、歯科口腔外科がある施設は多くはありません。

 著者は金沢で歯科医院を開業するとともに、口腔外科医として後輩の指導にあたっています。また平成8年から、石川県済生会金沢病院の緩和ケア病棟で、ボランティアとして、終末期がん患者さんの口腔症状の診断や治療、ケアのアドバイスを行っています。本書はそこで看護師から、「がん患者さんの口腔ケアをしたいけれど、何から、どうやって手をつけたらよいのかわからない」、「口腔ケアをがんばってやったのに、どうもうまくいかない」などの相談を受けた経験を基に、がん患者さんの口腔合併症のケアにあたる看護師のために、その知識と解決策をまとめたものです。

口腔ケアと口腔マネジメントはどう違うのか

 本書では、「がん患者の口腔合併症とはなにか」という基本的なことから解説し、看護師が日常のケアとして行う「口腔ケア」と、「口腔マネジメント」との違いを説いています。つまり口腔ケアとは、本来ならセルフケアとして行う、生活における口腔清潔や食事の準備などを意味する生活面での口腔のケアです。

 これに対し、がん患者さんの口腔マネジメントを著者は、「がんによる合併症としての口腔疾患に対する治療とケアを包括する『口腔全体の管理』のことであり、口腔合併症を緩和してがん患者を支える、支持療法の一つ」と言います。
 著者は実際に緩和ケア病棟に出向き、看護師へ口腔マネジメントの指導にあたっているだけあり、看護師の日常看護業務の多忙さもよく知っています。できるだけ少ない時間で効率よく口腔マネジメントを行うために、ポイントをおさえたアセスメントができ、フローチャートをたどれば診断と対策に簡単にたどりつけるように、シンプルな対応術を提案しています。

 そして、がん患者さんの主な口腔合併症ごとに、病態生理からアセスメント、マネジメントまでわかりやすく解説されています。例えば口腔粘膜炎であれば、発生機序がイラストで示され、口腔粘膜炎を起こしやすい抗がん剤、症状が説明されています。

 さらに各項目をチェックするだけでアセスメントができる、口腔合併症ごとのアセスメントシートが掲載されており、これをコピーすればすぐにベッドサイドで使えるところが、本書の特徴であると言えるでしょう。

 この他にも唾液、口渇と口腔乾燥、摂食・嚥下、歯科との連携など、基礎知識として必要なものが、コラムとしてまとめられており、巻末付録の「入れ歯のはなし」は、義歯の構造から着脱方法、清掃方法、管理方法までイラストでわかりやすく解説されているなど、口腔マネジメントを行うには、まさにかゆいところに手が届く、かなり詳細でわかりやすい一冊です。


著:杉 政和
発行:インターアクション
定価:2,700円+税
ページ数:156ページ

ページトップへ