【連載】看護に関するQOL向上のWIN-WINの法則

12.看護に関するQOL向上のWIN-WINの法則が活かされる医療現場

執筆 鈴木由紀子

了德寺大学 健康科学部看護学科

看護に関するQOL向上のWIN-WINの法則のまとめ

 前回の「11.看護と看護師のQOL向上と看護師に今後求められる能力とは」では、AIにより発展する今後の医療においても、看護と看護師のQOL向上が必要な理由を述べ、その中で看護師に求められる能力は、より個別的で多様な状況のもとでの統合的な判断能力であることについてお伝えしました。

 また、それに加えて患者さんの満足度をどう引き出すかという「かかわり」の専門家として、分野を問わず勉強し実践できる能力が求められるのではないか、ということもお伝えしました。

 今回は、第7回から第11回までを振り返り、第2部のまとめとして、看護師のQOLを向上させるための人的技術方略として「看護を考え抜く力」をどのように活用すればよいのか、看護と看護師のQOL向上の人的技術方略が必要な理由と、今後の医療現場で活かされるQOL向上の人的技術方略について述べたいと思います。

看護に関するQOL向上の人的技術方略が必要な理由

 これまでの連載の中では、「看護を考え抜く力」を看護師がQOLを向上させるための人的技術方略として活用する方法を検討してきましたが、その中で多く紹介したのは、専門職を育成する教育における活用でした。

 これは、看護師として後輩の教育を任されたときの私の経験に基づいています。私は、教育される側の反応や成長を見守りながら、経験や看護技術を伝達すること以外の専門職としての教育に関して、教育する側に必要な学びがあると感じてきました。

 例えば、医療の専門職教育としてのプロフェッショナリズム1)についてや、横のつながりのコミュニケーションで情報が広がる日本人の集団特性を活かしたカリキュラムが有効であるという、隠れたカリキュラム論2)などについてです。

 つまり、専門職育成において教育する側に必要な学びを、教育する側とされる側との「かかわり」において、看護や看護師のQOLを向上させる技法として活かすことを模索してきたため、専門職育成の教育での活用を多く提案したのだと思います。   

 しかし、これを読んでいる皆様の中には、そもそも医療現場で起こる看護教育に関する課題は、そのまま受け止めるだけでよく、専門職育成の特別な方略などは模索しなくてもよいのではないか、という考えもあると思います。

 それに対して、私が今後の医療現場で専門職育成の人的技術方略が必要であると考える根拠は、医療の現場の変化にあります。人の誕生から死までに携わり、それを見守る中で、繰り返される虚しさを何とかしたい、医療現場をよりよくしたいと願う看護師たちの熱意で、さまざまな創造性を活かした試行錯誤により、医療現場も変化しています。この変化に対して、その指針となる方略が必要だと私は考えます。

 私は、「看護を考え抜く力」を活用して「かかわり」方を研鑽すること自体を目標として掲げているのではありません。専門職を育成する教育において必要なことを本格的に学ぶ機会がなく、専門的なかかわりを模索し試行錯誤している方々の一助になることを願い、看護と看護師のQOL向上に関する人的技術方略について検討しているのです。

今後の医療現場で活かされるQOL向上の人的技術方略

 専門職教育の現在の傾向としては、海外のシミュレーション教育の方略を取り入れシミュレーターを使った演習3)や、ICT端末の動画による自己トレーニングなど、イメージ化を促進する体験型教育が盛んになっています。しかし、欧米の看護教育をそのまま取り入れても、成果や効果で同じような結果をあげるのは難しいのではないかと思います。

 それは、日本人の集団特性や教育文化的な背景から、個で判断する「自立」や「自律」が欧米と比較して成熟しておらず、先ほど述べた横でのつながりによる情報拡大の影響を多分に受けやすいため、そこを加味した教育方略でないと成果や効果が出にくいと感じるからです。

 現在、医療現場で行われている、横のつながりの情報拡大する力を活かした医療従事者の業務の1つに、病棟カンファレンス・多(他)職者カンファレンス・デスカンファレンスなどの数々のカンファレンスがあります。これは、まさに看護や看護師のQOLを高める成果や効果が現れ、定着した業務だと思います。そして、カンファレンスでは、さまざまな事例に対してよりよい健康状態や問題点などを検討するため、「看護を考え抜く力」が最も重要であり、それを研鑽する必要があります。

 今までの連載では、「看護を考え抜く力」の研鑽の具体的な方法や、集団の相互作用効果で看護実践能力が自然とアップができるような状況づくりについて述べました。また、日々のオン-ザ-ジョブ-トレーニングで「看護を考え抜く力」を活用することが重要だということ、時間の概念と個々の価値観の見直しを支援されるような教育風土で、業務のコツ以外に何が重要であるのかを自分で見出すような能力を身につけることが、専門職として重要であるということも伝えてきました。

 今後については、AIにより発展する医療現場において、看護と看護師のQOL向上に求められるものや、個別的で多様な状況のもとでの統合的な判断能力、患者さんの満足度をどう引き出すかという「かかわり」の専門家として、分野を問わず勉強し実践できる能力が求められることを述べました。

 これらの内容が、今後の医療現場で必要とされたときに、看護と看護師のQOL向上の人的技術方略として、皆様の参考になれば嬉しいです。

 また、最後にお伝えしたいことは、看護師が「かかわり」の専門家として、互いに感じる気持ちや想像する力を刺激し、相手の熱意に働きかけるには、双方の立場に立ちながらも相互作用を起こすような「対話」が重要ではないか、ということです。

 そして、継続自己教育ができキャリアビジョンを明確にできる志向性の育成が、専門職育成の教育の課題であるともいえますが、日本人の集団特性や教育文化的な背景から、この課題に関しても相談する基盤づくりとして「対話」の効果が見込まれると私は考えます。

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【引用文献】

1) 大生定義:医学教育とプロフェッショナリズム.日本医科大学医学会雑誌 2011;7(3):124-8.
2)氏原陽子:隠れたカリキュラム概念の再考 ジェンダー研究の視点から. カリキュラム研究 2009; 18(0):17-30.
3)Podlinski LA:The Effect of Simulation Training on Nursing Students' Content Exam Scores.Walden University,2016,p.1-112.

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